表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女が詠う絶対終末  作者: 此渓和
第一部:ウソで創られた《今》 
12/134

四章 チガウ夢のスガタ3

「唄華さん、だよね。ここに彼と来たってことは、もう全部知っちゃってるのかな」


 家を出る前と、少しエンドの服装が変わっていた。

 淡い水色のワンピースはそのままだが、その上に真っ黒なコートを羽織っていた。それは背丈に全くあってなく、袖を幾度か捲っていてもまだ余りあっていた。しかしそのコートこそが、少女を魔女へと――違う存在へと、貶めていた。


「……」


 俺は黙ったまま、後ろに庇うようにした唄華に目線で示唆する。唄華は頷いて、緊張した面持ちで後ろ手に扉を閉めた。

 俺はエンドを睨んで、なるべく声を押さえやっと静かに答えた。


「お前に、黙っとくように言われた覚えはないからな」


「言えるはずがないと思ってたんだ。まさか、信じるような奇特な人が居るなんて。唄華さんは、君の彼女なの?」


 茶化すように言うエンドの言葉を無視し、俺は問う。


「あの金髪野郎は、どこだ?」


「いない」


「何?」


「どうやら、少し遅かったようだ」


 エンドは窓枠からヒョイと降りると、病室に並ぶ四つのうち、窓際のベットで寝ている患者に目をやる。

 あの女性は、テレビで写真を見たことがある。

 間違いなかった。あの事件の、最初の被害者。


「君は、彼女を見て何を感じる?」


 患者を見つめたまま、エンドは俺に問う。

 俺はその言葉に、ハッとする。


「……弱いけど、まだ、ある」


 微かにしかないけれど、何も『思い』は欠けることなく、女性の中に存在しているのが不思議とわかった。

 生きている。

 空っぽになった鈴璃と、それは大きな違いだった。

 でも、それだけじゃない。


「……何だ? 気配というか、お前が言うエネルギーというか、そういうものがどこかへ流れているような……」


「ほう。君には、そこまでわかるのか」


 エンドは俺の言葉に感心して頷く。


「そうだね。この体じゃ、君ほど感知はできないけど、経験で私にもわかる。これはね、あの男、《魔女狩り》が仕掛けた細工だよ。彼は被害者から《想い》をぎりぎりまで奪い取るだけではなく、病院に搬送された彼女らの元を訪れ、業を使って回復した分の《想い》が自分に自動的に《想片》として転送されるように仕組んでたんだ。非常に合理的な、賢いやり方ただよ」 


 エンドが顔を歪めて、皮肉るように笑う。


「それじゃあ、あいつのその業をなんとかしなければ、被害者はずっと目覚めないということか?」


「まぁ、ね。でも、これをいじくってやるのは簡単だ。複雑そうに見せているが、構成は非常にシンプルだ。合理性を追求しすぎて、ほころびも多い。……なるほどね。《水は海に還る》の(ルール)を、ずらして、こっちに無理矢理繋げているのか。だったら、《重力のまやかし》の理を利用して、《道という名の川》のものと合わせれば……」


 エンドがぶつぶつと、わけのわからないことを呟いて、すっと手を前に伸ばそうとした。


「お前、一体何を……」


 状況について行けず、焦って俺は思わず一歩足を前に踏み出した。

 瞬間。

 瞬く間に床を銀色の光が走り、俺と唄華を中心に図形を組み合わした奇怪な陣を築いた。


(バク)


 エンドがポツリと呟いた。途端、


「えっ? うわっ、何で? 動けないよ!」


 後ろでギャーギャー唄華が騒いで、俺も遅れながら状況を把握した。

 体が金縛りにあったかのように動かない。声は出せるが、それ以外は指一本動かすことができなかった。


「これは……」


「備えあれば憂いなし。用心して、束縛の陣を敷いといてよかったよ」


 目線を動かすと、銀色の光の元になっているビー玉が扉の端に一つ置かれていた。

 って、否理師っていうのは、こんなこともできるのかよ。

 理解していたつもりだったが、改めてその常識やぶりの加減を思い知った。

 エンドは俺たちをちらりと見ただけで、すぐに視線を外した。

 再び女性に目をやると、おもむろに右腕を軽く振るう。するとどういう仕組みなのか、わずかに袖口から出ている細い指に一つのビー玉が収まっていた。

 その灰色のビー玉を、エンドは静かに死んだように眠っている女性の胸の上に置く。

 目を閉じ、ビー玉に手をかざすとぶつぶつと何かを呟き始めた。


「心ココニ無ク……今ハ無キ音…………サザメキ流レル………………」


 長い長い詠唱みたいなそれがふっと終わると、ビー玉は突然、クォン、クォンと不思議な音を発し、眩い光を放ち始めた。

 最初、女性を包んでいたそれは、そこだけにとどまらず病室全体――いや、病院全体を包み込むほどの光を放ち始めた。

 こらえきれず、目を閉じる。それでもわかるほどの強さの光。 

 

 パキッ。


 不意に小さい何かが割れる音がした。途端、光が急に収束し消えてしまった。

 おそるおそる目を開けると、月明かりのみに照らされる病室があった。エンドが、粉々に砕けてしまったビー玉を手で払いのける。


「……今のは、何だったんだ?」


「《魔女狩り》の業にちょっかいを出してやったのさ」


 にやりと、エンドは笑った。そして両手を、器のようにして掲げた。

 すると――大量のビー玉がエンドの手のひらから湧きだすように現れた。


「うわお! すっごい! 手品!?」


 唄華が場の空気を無視した、すっとんきょうな声を上げる。……見なくても、瞳がキラキラ輝いているんだろうな。


 ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ。


 床に零れ、散らばっても、ビー玉は絶えずエンドの手から溢れ続けている。


「これは……?」


「《魔女狩り》と被害者らのリンクを切るときに、その業を応用させてもらって力の流れを逆流させているのさ。被害者に返すべきなのだろうけど、一度エネルギーにした《想い》は、もう戻せないからね。だったらいっそのこと、この《魔女》が使ってやろうと思ったのだよ。今ごろ彼は、突然自分の《想片》が急激に奪われていることに驚いているだろうさ」


 エンドは不遜な態度で言った。


「でも、派手にそんなことしたら……」


 あいつに、ばれてしまうじゃないか。と、言おうとして、はっとした。

 違う。気付かれなきゃいけないんだ。

 居場所がわからないあいつを、釣りあげるために。

 だったら、今すぐあいつがここに――。

 そこまで連想が進んだ時、


「その可愛らしい姿に免じて、処刑日を延ばしてやろうと思ったのによ。自殺志願か?」


 苛立った声が、窓の向こうから聞こえた。その姿を、視認しようとする前に――、


「燃えろ」


 残忍な声が響き、外から窓ガラスを突き破った爆炎が病室を包み込んだ。


主人公活躍しませんね―……

このまま終わっちゃうのかって感じですが!!

大丈夫です(たぶん) 最後に彼は輝きます(たぶん)


彼を輝かせられるようもっていけるのか、己の技量が試されています(不安)


いろいろ用語出てきて、意味わからん。っていうか、ストーリー自体 何だこれというご意見があればぜひ感想お願いします。


成長できるよう努力します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ