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魔女が詠う絶対終末  作者: 此渓和
第六部:蛇足なゼンザ
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第四章 トドかないサケビ4

――すべてを使って否定しよう。

全てをないがしろにしてでも取り戻そう。

もう一度。もう一度。

君に会いたいから――――


人間には一体いくつの感情があるのだろう。

喜怒哀楽と大きく分けられるけど、それだけでは拾えない細かな感情がたくさんある。

小さなものが積み重なって俺ができている。

でも一つ欠けて、失って、でも俺は俺を続けている。

だから、きっと大丈夫だ。

全てを失っても、俺は俺を貫くことができる。


はぁ――と、小さく、エンドはため息をついた。

周りに転がるのは無力化した《整理機構》の者たち。一人一人は弱い《人》だが、数だけは膨大だった。これでも整理機構のほんの一握りの人員であることは脅威だ。

自分の戦果を見回し、動くものがいない現状を確認して、エンドは歩み出す。

倒れた彼らのもと。


一人は哀れにも未熟な理を歪に歪められた子ども。

一人は自分の弟子も同様な――愚かな否理師。

もう《一人》は、すでに起き上っていた。


「ねぇ、どうしてまたこういうことになっちゃったんだろうね」

「あなたが眠っていたからでしょう」


神は、ゆっくりと自分の愛しい人の髪を梳く。

目を閉じた彼の中にはもう欠片の想い残っていない。

すべて彼女に注いでしまったからだ。


「わたしのせいじゃないよ」


神は微笑んで、魔女を詰る。


「こんな無駄なことしちゃだめって、深漸くんを諫めてくれなった。あなたのせいだよ」


魔女は理不尽な物言いに反駁しない。彼女は言われる前から自分を責めていた。


彼女は人間のふりをして、傷をおったふりをしているだけで、神を生き返らせようなどしなくてもいいと。


伝えられなかったことを悔やんでいる。


「どうして、また私の愛しい人を殺すのかな。あなたは」

「私は……」

「まぁ、もういいよ。もう終わりにしちゃおうか。邪魔が入る前に」


神の手のひらにはかんざしがあった。

綺麗なガラス細工が付いた、かんざし。


「それは……!」


魔女は走り出そうとした。止めようとした。

まだ。待って、それだけは。

もう――二度と。


だが、神は許さない。


「ねぇ、深漸くん。

――起きて」


神は目を閉じた彼にかんざしをささげる。


――すべてを使って否定しよう。

全てをないがしろにしてでも取り戻そう。

もう一度。もう一度。

君に会いたいから――――


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