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勃発! 第58次黒軍最強選手権!

企画、【色小説】にエントリーしています。

エントリー作品群は、


色小説


とサーチをかけてくださると全てヒットします。



様々な先生方の作品をお楽しみ頂けます。



また、当作品には、若干下ネタが含まれております。


お食事中の方、ご注意下さい。

2007年、3月24日。


今年もまた、プロ野球の季節がやって来た。

ディフェンディングチャンピオン【沖縄シュバルツ】の開幕ゲームは、ホームグラウンドである沖縄野球園で宇都宮ノワールを迎えてのナイターだ。


試合の前のミーティングが、ミーティングルームで行われている。

このチームの監督は、島本光明28歳。

選手兼任監督だ。


ある日突然オーナーが自宅を訪れ、兼任監督を要請してきた。


チーム一の問題児&問題大人、門倉慶輔、剣持和俊組に球界全体が手を焼いており、もはやチーム内からしか監督のなりてを選べないような状況なのである。


ミーティングの段階から、この二人の問題ぶりは発揮される。


「はい、ミーティングを始めます。

まず、スターティングオーダーですが……、くぉらそこっ!!

勝手にぐっちゃべってんじゃねえ!!」


ミーティングが始まっているにも関わらず、何かが〔とんがっている〕ことについて、マシンガントークを戦わせている。


「あれ、絶対骨格がとんがってんだって。

ガキん時からとんがってたし、水没してもとんがってたし」

「えーっ。

でも寝てる時、寝返りで下敷になったら、ちゃんと【くにゃ】ってひん曲がってますよ?」

「あのな、人の髪型が【くにゃ】ってひん曲がる事自体がおかしいだろ!

しかも、起きたら速攻で元通りにとんがってるし!」


光明も、やっと二人の話の筋が見えてきた。

どうやら【名〇〇コ〇〇】の、〇利〇嬢のことらしい。

実際にそれは、光明自身もかなり気になっていることであるし、一読者として、突っ込みたくなる気持ちも解るのだが、いまは、



ミーティングの時間だ。



「黙って話を聞けーっっ!!」


手近にあった己のファーストミットを渾身の力を込めて投げ付ける。


そのターゲットとなったのは門倉、剣持組だ。


ぶつけるつもりなど毛頭無い。

ストレートしか投げることが出来ない素材であるため、あの二人なら、いとも容易くかわしてしまうだろう。

正直な話、喰らわす気は満々なのだが、ほぼ絶対的にそれが叶わないというのが現状だ。


「でぼっ!!」


……、当たった……。


慶輔はファーストミット直撃により歪んだ目に、涙を湛えて打ち震えている。


一方、光明も初めて喰らわすことが出来た爽快感にやはり打ち震えている。


この二人の特徴である、酸素内で急激に燃焼するマグネシウムのような金髪と、激しく噴き上がる溶岩のような鮮やかな赤髪が、全く正反対の表情を浮かべる顔の上で全く同じ動きをしている。


「あれは多分、うちのゴキ頭オーナーみたいに整髪料でガチガチに固めてあるんだよ!


ミーティング続けます……」


勝ち誇ったような笑みを浮かべた光明は、強引に話を締め括り、ミーティングを再開した。

しかし、この時光明は忘れていたのだ。

慶輔が高校時代己の父親といざこざを起こしたとき、余りの肝の座り方に逆に杯を勧められたことを。

当然、この程度では済まないのだ。


おそらく大惨事に発展するだろう、本震前の余震は、尚も揺れ続けている。

そして、門倉慶輔という火山の噴火と共に、それは、本震へと変わった。


パイプ椅子。


光明が気付いたとき、既にそれは、直前数十センチメートルの位置まで接近していた。

まして慶輔は、150キロ投手だ。避け切れる筈もなかった。


寸分の狂いもなく、己の顔面めがけて飛んでくるそれを、

《一球ごとにこの制球力を発揮すればお前のポカ病は無くなるんだよ!》

と苦々しく思いながら、やっとの思いで鼻先をかすめる程度の被害に止める。


燃えるような赤髪と同じ鮮やかな緋色の体液を鼻孔から噴出させながら、燃焼系アミノ式のCMに、一番最初に出てきた少女のような見事なバク宙を決めて、体勢を立て直した。


そして、

「なんのつもりだ貴様……。

起用の権限持ってんの、俺だって解ってんだろうな……。

お!?」

との威しをかけてみる。

どう考えても、この程度の威しに屈する男では無いのだが……。


「ほう、俺を延々と使わねえ気か……。

そんなら、こんな世界からはとっとと任意引退して、おめえの親父と杯交すよ!

そうすりゃ俺も、島本会系幹部だからなぁ!」


光明に対して、実家が指定暴力団であることは当然のごとく禁句だ。

その禁を破ったものに対して光明は、情け容赦を知らない武の神毘沙門の化身と化す。


こうして黄色い指定暴力団幹部候補VS赤い毘沙門とのデスマッチのゴングが……、鳴らされた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




場を修羅場に変えたもう一つの元凶である和俊は、どうにか、その場を収めようと考えを廻らせていた。

今年FA宣言による、メジャーヘの移籍を目論でいる和俊にとって、この様なくだらないことで評判を落とすなどということは、有ってはならないことなのだ。

自分も一枚噛んでいるだけに、なんとしても、自分が収めなくてはならない。


「なぁ、ちょっと落ち着こうや、な。


コーメイさんもさ、キレるのは解るし俺も悪かったと思うけど、どうせまたいつもの変わり映えの無いオーダーなんだろ?」


シュバルツのオーダーは、8月14日に1番と4番が入れ替わるだけで、誰かが怪我でリタイアしない限りは不動のオーダーだ。

光明も監督のくせに、ちゃっかり9番DHに名を連ねている。

どうやら、競争を激しくして、チームの活性化を図るという思想はこの男の脳味噌には無いらしい。


自分がメジャーに行った穴は、この男が埋めてしまいそうな気さえしてくる。


取り敢えず二人の間に割って入り、繰り出された拳を平手で受け止める。


「邪魔すんなこの、うん〇頭がぁ!!」


名短距離馬タイキシャトルを彷彿とさせる、鮮やかなライトブラウンの髪に、燃える赤髪が罵声を投げ付ける。


「そうっすよ!

マジウゼえ!

便所にぶち込んで流しちまいますよ!?」


更にそれに、輝く金髪が続く。


しかも。


しかもである。

この二人、和俊に罵声を浴びせると同時に、その顔をめがけて拳を繰り出していた。

いくらプロ野球選手といえども、鍛え抜かれた肉体から、ハイスピードなクイックモーションで繰り出される二つの拳をかわせる筈もない。


【目には目を】


和俊は、二人の顎をめがけ、アッパーカットを繰り出す。

思い思いの方向に放たれた4つの拳は、光明と慶輔の顎と、和俊の両側の頬へとクリーンヒットした。


急所攻撃を受け、よろめく光明に対して、

「コーメイ!

ワシがうん〇頭ならワレは血〇頭じゃ!」

更に慶輔に対して、

「ワレも便所にぶち込んで流してしまうど!

このション〇〇頭がぁ!」

と罵声を返してしまったため、場の緊張感は一気に高まってしまう。









「いいぞー。

やれー」


との無責任極まる歓声が、ミーティングルームのあらゆる位置から飛び交い始めた。

遂には、このバトルを誰が制するのかという賭けにまで発展してしまう。

昔はバトルに発展する度に、唖鼻狂喚の地獄絵図となったものだが、もはや今では、余りにも頻発するため、シュバルツの日常に組み込まれてしまっているのだ。

三人以外の一軍登録選手22人全員に、投票用紙であるコンビニの、百円メモ帳がちぎって配られる。

投票方法は、それぞれのヘアカラーの頭文字(光明はR、慶輔はY、和俊はB、決着付かずはD)を記入し、キャプテンの玉木知昭捕手へと提出するというルールだ。


投票用紙が知昭の元に集まる。

やはり、いつもの劣勢が祟ってか、Rの文字は、一つも無い。

パイプ椅子や灰皿、テーブル等の飛び交う騒音と、三人の怒声をBGMに、なおも開票が進められる。


開票終了。


Rは最後まで一つも無かった。

やはり、若さが有利と見られたか、Y11票対B10票と、僅差で島本会系幹部候補が有利との下馬評となった。


そんな中、Dに一票入っていた。

投票者は、この賭けの胴元である、シュバルツ1の頭脳派、知昭だ。

このバトルの決着がつかなければ、胴元の賭け金全額回収という、胴元冥利に尽きる結果を見ることが出来るのだが、彼には秘策があった。


澄みきった青空のようなライトブルーの髪の下に、勝ち誇ったようなニヒルな笑みを浮かべてポケットから、おもむろに携帯電話を取り出す。


そして、


とある電話番号を入力し通話ボタンを押した後、株式会社沖縄シュバルツという会社組織に於いて、最大最強であろう召喚魔法の呪文を詠唱する。


「こくろーち様、こくろーち様、今直ぐミーティングルームまでお来しください」


と……。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




さすがにトップアスリートである。

三人共に、喰らったのは、まだ最初の一撃しか無い。

ゴングから20分経過して、それぞれの攻撃を全てかわしているのだ。

言葉で場を収められないのであれば、実力行使しかない。

物を投げ付ける間接攻撃はかわされるとはっきりした今、和俊は拳を打ち込むべく、光明を牽制しつつ、慶輔との間合いを計っていた。

光明よりは、慶輔を先に潰しておくべきなのだ。


《……、今だ!》


必殺の間合いを掴んだ和俊が、身を踊らせようと、モーションを起こした瞬間、その闖入者は現れた。


「やめなさい!!」


あまりのイレギュラーに、そのまま前のめりに転倒し、豪快なヘッドスライディングを試合前に華麗に決めてしまう。


突然の大音響と共に打ち開かれた扉の前に立っている男。

その男の名は、黒路内幸。

黒々とした黒髪を、グリースでテカテカになるほどガチガチに固めたオールバックの髪型が、球団関係者や財政界の友人達に親しみを込めて【ゴキブリ頭】と称され、あまつさえ二弦垂らした長い前髪と、その名前の字面があいまって、ニックネームまで【こくろーち様】と称される……、球団オーナーだ。


「まったく、あなた達便所頭ブラザーズは本当に、トコトン、つくづく、世話のやけるオコチャマですね」


いつの間にこんなあだ名を付けられていたのだろう。

個人的には、このようなオコチャマ共と一緒くたにしないで欲しいのだが。


「まず門倉くん。

貴方はいつも、

『こんな世界からは引退して、島本会の幹部になるぞこらぁ!』

と、ことあるごとに監督を威しているそうですが、その威しはもう、使えません」


和俊は、聞耳を立てる。

この威しに対して、有効な対策など無いような気がするのだ。

果たしてどのような手を打ったのだろうか。


「監督の父上であり、島本会系の長である島本典弘氏にお会いして参りました。

その際、氏から【門倉慶輔が沖縄シュバルツを自由契約になるか、門倉が45歳になるまで、門倉には手を出さない】との旨、約束して頂きました。

これは、氏の直筆による念書の写しです。

法的に充分な証拠能力を持つ契約書であり、何人たりとも、これに抵触することは出来ません。

たとえ、貴方ご自身であってもです」


成程。

さすがに球団オーナーともなると、いっぱしの財界人だったということか。

要するに、ヤクザにも顔が利くという訳だ。

顔が利くなら、直に乗り込んで、

「うちの選手にちょっかい出すんじゃねえ!」

と怒鳴り付けてしまえばいいのだ。

とても単純なことだったらしい。


「さっすがこくろーち様!

ヤクザ相手に見事な飛び込み!

黒光するゴキブリ頭は伊達じゃないっすねぇ!!」


光明が、手を叩いて喜んでいる。

そんな光明を無視するかのように、ゴキ頭オーナーは続ける。


「門倉くん。

貴方は、人気、実力共にトップクラスの、日本球界のスター選手です。

我が球団の象徴とも言える方ですので、もう少し自覚を持ってくださいね。

これからもよろしくお願いします」


さすがは財界人。

喰らわした後のフォローも忘れない。


「次に、島本監督。

試合における起用の権限は、確かに貴方にあります。


……、ですが、人事における権限は、その一切が私にあるのだということをお忘れなく。

今後もこのようなことが続くようなら、貴方の管理能力を問わなければなりませんよ?」


元々彼が頭を下げて頼み込んだらしいため、おそらくこれは只の威しであろうと思われるが、このレベルのお灸を据えておけば、暫くはおとなしくしているだろう。


「さて最後に、」


どうやら最後の締めに入るらしい。

和俊は、なんとかこの事態に収拾が付いたことに、心の底から安堵した。

メジャーに行けるのは、年齢的にももう今年をおいて他に無いのだ。


「剣持くん」


「エッ!?」


和俊は、ほうけたような顔で、間抜けな返事をした。

まさか自分にも、彼等と同等の否があるとは思っていなかったのだ。


「貴方は、今オフに獲得するFA権を行使して、メジャーヘの移籍を考えていると監督に打ち明けたそうですが、今後も騒ぎを巻き起こすようなことがあれば、

『剣持和俊外野手はこれほどの問題児ですよ』

と、貴方が起こしてきた騒ぎを逐一、メジャーの各球団の人事担当宛てに、ファクシミリで報告して、注意を促しますよ?」


「……、それだけは……、ご勘弁を……」


黒光するゴキ頭オーナーが繰り出す言葉のパンチを前に、言葉を返すことが出来たのは、唯一和俊のみであった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「さあ皆さん、試合開始まであと2時間30分です。

練習に出なければならないことを考慮に入れると、もう殆んど時間が有りません。

張り切って片付けましょう」


キラキラと輝く黒々としたオールバックは、仕合の締めに入っている。


「門倉くん、剣持くん、島本監督。

あなた達三人は罰金25万円と、一週間のベンチスタート処分とします。

次は、罰金100万円で、一ヶ月間二軍に落とすことにしますからね」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




【株式会社】沖縄シュバルツ。

そういう正式名称を冠した組織に於いて、【オーナー】という特別な名を冠した【会長】が最強なのは当然なのかも知れない。


今回突然に勃発した黒軍最強選手権は、黒光するゴキブリ頭の黒路内幸オーナーの言葉のパンチ三発による一撃必殺のKO勝ちで幕を閉じた。


従ってシュバルツ(黒軍)最強は【黒】……ということで良いのだろうか……?


否!


否なのである。


黒路オーナーは本来ミーティングに参加すべき人物では無いのだ。


思い出して頂きたい。

本来ここに居る筈のないこの男をここへ召喚したのは誰であるのかを。

そして、召喚魔法を詠唱した動機はなんであったのかを。



捕手、玉木知昭。



この男もまた、陰ながら、シュバルツ最強選手権に頭脳戦をもって参加していたのである。


今回勃発した黒軍最強決定戦。

それを制したのは、主力である赤でも黄でも茶でもなく、ましてや、絶対的支配者である黒でもなく、【ID野球の申し子】ライトブルーの玉木知昭だった。


だがやはり、シュバルツ(黒)である。

いずれはあのツヤツヤと輝くオールバックに完全支配される日が来るだろう。


その日が来るまで、シュバルツ最強決定戦は続く。







ちなみに、捕手、玉木知昭。

彼もまた【ブルーレット置くだけ(しかも詰め替え直前)頭】として、便所頭ブラザーズに加えられてしまったことは、いうまでもない……。




END

微妙ですねー、すいませんm(_ _)m



ボーダーラインを探る意味での実験も兼ねております(^_^;)


お目汚し失礼いたしました

m(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m



ではではm(_ _)m

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[一言] こんにちは、拝読させていただきました。 あっちこっちでくすくすと笑いながら、一気に最後まで読んでしまいました。コメディーはいつもはまったく読まないのですが、この作品は単純におもしろかったで…
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