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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
飛竜討伐の章
9/84

誰か、俺のテンションを救済してくれ…。

決意をした(?)ヘタレと共に飛竜の討伐へ向かうことになったレイ。

はてさて、これからどうなるのか。



それでは、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 答えは肯定。つまり、飛竜討伐には行くということだ。一応、ヤツを利用した秘策もあるし、なかなかに()がある戦闘に持ち込めるハズだ。


 だ が !


 あいつはどれだけ人の話を聞かなければ気が済むのだろうか? 準備を始めるとか、ホントどうでもいい。俺の話聞けよ。やる気ないわけ? それとも、俺の作戦を全く聞かずに死にたいと? 下見とはいえ、出くわす可能性を十二分に孕んでいると言うのに?

 ……………ホント、非常識。使えない。何故、俺はカーストウッドを助けようとしているのか、甚だ疑問だ。というか、笑えない冗談としか思えない。


それでも、俺は一度助けると決めてしまった。やはり気が進むわけもなく……むしろやる気やテンションは下がる一方だが、決めてしまった以上はその意見を翻す気にはなれねぇ。…………そんなトコロが、カーストウッドに『優しい』なんて言われる要因だろうが、全く嬉しくない(・・・・・・・)…! そもそも、“優しい”の定義はなんだ? 俺は、ただ面倒事から逃げるために仕方なく手伝っているだけだ。つまり、そこには親切心の欠片もない。………それが“優しい”なんて言えるのか?


 あ? なんか鬱陶しいって? ひねくれ過ぎ? うっせぇ。ひねくれてんのは元々だ。鬱陶しい性格だと思うんなら、今後一切俺と関わろうとすんじゃねぇよ。


 おっと、話が逸れたな。とりあえず、あの後の経過をざっと説明しておこうか。


準備をする!……と慌てて出て行ったカーストウッドに深い深い溜め息を一つ()き、作戦を無理矢理にでも話しておこうか…と考えたりもしたが、めんどくさいので道中でいいか、と多少の妥協。俺は、必要な武器を調達し、さっさと寝ることにした。


 集めた武器は、いつものダガーに装備する起爆札だ。コイツは魔力を込めれば時限式で爆発するらしく、それなりの威力を誇るらしい。飛竜種に効くとは思えないが、この武器はただのお遊びだ。…………本命はもっと他にあるんだが、それはその時のお楽しみ、ということでいいだろう。


 では、寝よう。…………いや、今度こそ夜だからな? まだ寝るのに早い時間とか、そういうわけじゃねぇから、別にボケたわけでもねぇぞ?!

 というよく分からない弁明をしている内に、俺の思考は意識の底へ埋没していった――。


……………

………


次の日の朝。もっと言えば早朝。俺は目を覚ました。今は亡き師匠に、最初に言いつけられた朝の鍛錬。それは今でも欠かさずに続けている。ひたすらに型通りの動きをすると見せかけ、即興でフェイントを入れたりするなどの斬撃を、イメージの産物である敵に放つのだ。

より具体的に、より鮮明にイメージすることで、ダガー捌きのレベルを高める。そしてイメージによる想像力の向上は、魔力操作において大いに役に立つのだ。


 一時間程の鍛錬を終え、宿一階にあるカウンターで、適当な受付の無駄話にうんざりしながら朝食をとり、もう一度部屋に戻る。

 既にシャワーは浴びた。服も着替えた。朝メシは食ったし、武器の類も全てコートに詰め込んだ。………完璧だ。いつでも行ける。問題は…。


―――――まだ起きる気配がないヘタレは、一体どういう了見か。


 先程から、待ち続けること数十分。既に時計は朝というよりは昼と言うに相応しい時間を指している。起こすのは悪いと、放置していたものの、もう限界。鍵のかかった扉を蹴破ってでも、叩き起こす。

 …………噂では、今日明日にでも討伐騎士隊の招集は始まるらしい。もう下見なんて言ってられねぇ。さっさとクエストを受けるべきだ。


 そ の た め に !!


「起きやがれぇぇぇぇ!!!」


 扉? ああ、鍵かかってたさ。どうやって入ったって? ああ、ホントに蹴破ってやったのさ。なにか問題でも?


「うわぁぁ!? な、何事ぉ??!」


 間抜けな声。先程まで確実に熟睡していたであろうこの茶髪のヘタレは、ガバッとベッドから跳ね上がるように上体を起こし、霞みがかった金色の寝ぼけ眼で、こちらを捉える。


「ん?! ………あれ、レイくん? おはよー」


 呑気なことで…。コイツ、本当に金を取り戻す気、あるのか? 疑問しか感じない。………訂正、呆れも激しく感じる。


「おはよー……じゃねぇよ! 今何時だと思ってる?! さっさとしねぇと、討伐クエ自体が受けられなくなるだろうが! もう下見は無し、さっさとギルドで依頼受けて、現場まで向かうぞ」

「え? えぇ?!」


 体の全てを使い、動揺を激しく表現。………つまり、飛び上がりながらも後ろに飛び退き、驚きの声をあげたわけだ。お約束、とばかりに壁に後頭部をぶつけ、痛みに呻くというおまけ付きで。

オーバーリアクション。………いや、これが妥当なのかもしれない。なんせ、俺も驚いた。まさか、こんなに早く討伐騎士隊を編成するとは。俺たちは、どれだけタイミングが悪いのか。


「既に、国が討伐騎士隊の編成を始めようとしているらしい。下手すると、今日の夜には依頼が取り下げられる。だから、さっさと行くぞ。ほら、メシ食え」


 矢継ぎ早に説明し、反論など全く受け付けずにヤツの口へパンを押し込む。


「ふがっ! むぅぅっ!!」

「早く噛め。そして飲み込め。ほら、水だ」


 親切にも、俺は水を口に流しこんでやった。


「んがっ!」


 おぉ、少しも吐き出さないとは。関心関心。確実に水もパンもこぼすと思ったんだが。

 しばらく、カーストウッドは必死に咀嚼し、なんとか食べ終えた。そしてすぐに口を開く。なんだ? まだ足りないのか?


「ちょっとレイくん! いきなり何!!」


 なんだ、文句かよ。せっかくメシを配膳してやったと言うのに。


「聞いてなかったのか? 早くしねぇと、依頼が受けれねぇんだよ。討伐騎士隊の編成が、もうすぐ始まんだ。だから、朝のうちにクエストを受注するつもりだったというのに…」


―――――お前は、起きる時間が遅すぎだぁぁぁぁ!!!


「もう昼前だ! 金を取り戻す気はねぇのか! いい加減見限るぞ!!」


 俺の言葉に目をパチクリさせ、ヤツは状況を理解した上で驚きの言葉を口にする。


「起こしてくれてありがとー。まだ、間に合いそうで良かったよ~」


 ブチッ…!


 俺の中で、何かがブチ切れる音がした。


「おい……。お前、マジで暗い所では後ろに注意しとけよ。いや、今から背後には充分に注意しとけ。いつ殺されるか分からんぞ」


 俺に、な。もう限界なんだ。面倒事を持ち込み、あれほど悲観していたというのに、次の朝には既に能天気状態へ。ふざけてる。いつかホントに切れちゃいけないトコが切れて、首を掻っ斬ってしまってもおかしくはないだろう。だからこその注意………なんだが。


「ん? よく分からないけど、心配してくれてありがとう」


 満面の笑みで。ライトブラウンの髪を揺らし、金色の瞳を細めて。ヤツは笑った。常識知らずも、ここまで来るといっそ清々しい。俺の怒りは、全て呆れに変わってしまった。大きな溜め息を吐かずにはいられないのは、きっと俺のせいじゃないハズだ。


 俺の溜め息を不審に思い、首を傾げているカーストウッドに、俺は部屋から出ながら声をかける。


「………着替えろ、武器を用意しろ、そしてすぐに部屋を出ろ。集合場所は西側にある町の出入り口」


 …………テンションが下がってしまったのは、しょうがないことだろう。

 俺は、さっさとギルドまで足を運び、ギルドマスターに飛竜討伐依頼を受注する旨を話し、集合場所を目指す。

 ホント、なにやってんだか、って感じだ。何故、眠り続けるカーストウッドを放って、この町を出なかったのか、とだいぶ後悔。


 ……………………俺のテンションは、下がる一方だ。


 誰か、なんとかしてくれよ? 助けてくれるヤツなど誰一人としていないというのに、俺は強く……強く、そう願った。




レイはレイで不幸ですけど、ハルもハルで結構大変ですよねぇ。


それなりにレイに助けてもらいながら、結局はレイにも振り回されているわけですから。(食事の配膳wの時は、結構可哀そうだったww)


まあ、柚雨がそうさせたわけなんですが(笑)


…………ちなみに、壊した扉は後にスタッフが大急ぎで修理しました(嘘)



それでは、また次回っ(^^)ノシ

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