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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
エレドニアでのあれこれの章
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殺す覚悟

Side Ray. ~レイ・サイド~


 えぇ……王様て…。しかも、兄貴もおまけについてくるって? おかしいだろーよ、おい。なんでんなトコに王家の方々(笑)がいんだよ。しかもたっぷり騎士までつれてよ。マジめんどくせぇ流れだよ、まったく。


 しかも! ジュリーの『ち、父上、兄上!?』というへたれた叫び声のせいで、軽く警戒されてやがる。ハルも剣を首筋に突きつけられたまま動けねぇし……結構まずい流れだったりする。

 さらにさらに。マズイと思われることはまだまだある。ジュリアスの偽者は、未だ稼動中なのだ。本物がこっちにいるとはいえ、偽者と断定され、『王子を騙った逆賊め!』的な扱いでゲームオーバーを迎えそうな予感もする。あとで本物だと気付いても、どちらにしろジュリアスのことを殺そうとしていた輩もいたことだし…。最悪の場合、王サマと兄貴王子すらもジュリアスの暗殺を公認している場合だってある。そうだとしたら俺たちは……逃げるしかないな。


 ここまで考えるのに、およそ二秒。双方膠着状態だったが、とうとう動きがあった。


「はっはっー☆ 王子サマは誘拐したぞ(はぁと♪)」


 ………………こちら側に。

 変態情報屋ジェラーロ・ギリアムは、ジュリーにかけていたフードを下ろし、素顔をさらさせながらその首筋にナイフを突き立てていた。


 つかジェラーロ! 随分強行手段に出たな!! まあ、こいつに任せとけば切り抜けられるとは思うが。俺だって、追い詰められれば同じ手段に出ていただろうし。


「ふん! ジュリアス様はエントランスにいらっしゃる! 偽者を殺したとて、こちらとしてはなんの意味もないわっ!」

「ふっふっーん♪ そー思う~? でも~、あっちのエントランスにいるのはニセモノだったりするのですわぁ、おーほっほっ☆ その証拠にぃ……」


 言葉を切り、耳に手をあてて後ろを向く。それに釣られて耳を澄ますと、微かだが慌てたような足音が聞こえてきた。まさかあっちのジェリアスくん一号(くどいようだが、『ュ』ではなく『ェ』であるところにこだわりがある)が偽者のゴーレムだと気付いたのか? まだ稼働時間は過ぎていないはずだが。

 まあ、ジェラーロのことだ。強制停止機能でもつけていたのだろう。


 段々と近づいてくる足音一つ。その伝令係っぽい人物は王の姿を認めると、大声を張り上げた。


「伝令っ! ジュリアス第二王子が目の前で突然崩れ去り………って、えぇっ、ジュリアス様?!」


 こちらのジュリアスを見て、全力で驚いている姿は中々に笑えた。


「これで分かっただろ? こいつは本物のジュリーだ。とりあえず、ハルを離しな」


 これでハルを離さなければこちらとしてもかなり危ういことになる……つまり、王も兄貴も共犯説の可能性が高くなるが、そうでもなかったらしい。王と兄貴につく騎士たちは苦渋の表情で王を伺い、見られた王も苦い表情で頷く。


「それなら、ジュリアス様も離せ」


 騎士はそう言い、ジェラーロが言う通りに離したところでハルを離した。

 まー、ジュリアスはこっちの味方だから、離したところで保護できるわけないのだが。あいつは、あいつの意志で俺の方に近寄ってきた。ついでに、逃げるようにハルも俺の方に近寄ってきた。……情けない。こいつよりも、セラフィが寄ってこいよな、まったく。


 って、何考えてんだよ俺は。………あ、でもちょっとこっち寄ってきた。嬉しいかも。しかも、口を耳に寄せて話しかけてきた。正直に言うと、かなり嬉しい。


「レイ、これからどうするの?」

「まぁ、ジュリアスに王との対談を要求させるしかないよな。……ジュリー、どうだ?」

「頼んでみるよ。一度、腹を割って話してみたいんだ」


 ジュリアスはそう言い、騎士側に保護されないように俺から離れ過ぎずに前へ出た。


「ジュリアス様っ! 早くこちらに!」

「いや………僕から、父上と兄上に。少し話したいことがあるんだ。その時に、この人たちも連れて行きたい。さっき僕が拘束されたのは、そこのへたれ……ハルを助けるためだったからってだけで、基本は仲間なんだ。信じて欲しい」


 頭を下げる。それは父親や兄貴に向けての礼だったのだろうが、騎士たちの眼前で頭を下げているのだ。仕えているはずの人に頭を下げられたら、結構困るだろうなぁ。事実、かなり慌てた顔してるし。おもしれぇ。


 ジュリアスの行動に驚きを覚えているのは王や兄貴も同じであったようだが、こちらを一瞥してなぜか軽く微笑み、頷いた。


「ジュリアス。こちらへ来なさい。……そちらの方々も連れてきてもらって構わない。騎士たちは下がれ。ジュリアスが信用しているのだ、我々も信用しよう」

「し、しかしっ!」

「信用しろと言うのが聞こえないのかっ! 近衛の者は残ってよい。が、他の騎士は見回りにもどれっ!」


 王は渋る騎士を押さえ込み、こちらに向かって手招きした。何気、賢王ってヤツなのかもしれない。意外に話が出来そうじゃないか。


 近衛とか言うヤツらは三人しかいないみたいだし、最悪の場合はジュリーを誘拐して逃げることも出来るだろう。逃げる系のスキルはまぁまぁあるしな。

 こうして、俺たちは王の案内というかなりリッチな体験をしながら、おそらく謁見の間であろう所につれていかれるのだった。







「それでジュリアス。話というのは、どういうものだい?」


 第一王子サマ・ブルーリオは、どこかキザっぽい雰囲気を漂わせながら玉座の隣のこれまた豪勢な椅子に座り、謁見の間で立ち尽くす俺たちのと共に立つジュリアスに話しかけた。どうやら、王子、としてではなく、客人的な扱いで話し合いを進めるらしい。王妃もいるが、何故かにこにこ微笑んだまま何も答えない。一番厄介そうだが、一番頼れそうでもある。


 ちなみに、俺たちは別に臣下でもないし、ジュリアスは王子なので、誰一人として跪いていない。…………まぁ、ルナールはなぜか誇らしげな表情で敬礼しているが、それはとりあえず置いておこう。……あぁ! ハルも真似すんなよ! なんでそんな嬉しそうなんだよっ!! ジェラーロも真似すんなぁぁあ!!!


 それとセラフィ。その光景を見てくすくす笑ってる姿が可愛いぞ。それを一生懸命隠そうとしてる姿が、かなりツボだぞ! よし、それに免じてハルとルナールを許してやる。ははは、我ながら寛大な処置だなぁ。まぁ、ジェラーロは絶対に許さないけどなっ!


 と、そんなバカみたいなことを考えている間にも話は進み、いつのまにやらジュリアスが決意の篭った表情で王たちに向けて言葉を投げかけていた。


「父上、母上、兄上。僕は、この人たちと一緒に旅立ちたい。……この王宮は、王位継承問題でどろどろだ。僕は王様になんてなる気はないのに、勝手に僕が王になる可能性を考えて騒ぎ立てて、僕を殺そうという連中までいる。もしかしたら、その逆もあるのかもしれない。つまり、兄上が狙われていることも……あるかもしれないんだ。僕は、嫌だよ…。王様の座を肉親同士で奪い合わなきゃいけないなんて……。だから! 僕は身をひく。ここにいるみんなと……アカシアのみんなと一緒に旅立つっ! その許可をくださいっ!!」


 って、おい!? 土下座?!! いやいや、それはハルの専売特許…じゃなくて、家族にそこまでしなくても!!


「ジュリー。とりあえず頭上げな。俺からも交渉してみる」

「へ? あ、あぁ、うん」


 土下座しているジュリアスに声をかけ、セラフィとハルとルナールを引きつれて軽く前へ出る。ジェラーロは……まぁ傍観者を貫くようだ。


「とりあえず、自己紹介から始めようか。俺の名前はレイ。傭兵パーティ・アカシアのリーダーだ。そして…」

「僕はハル・カーストウッドです。よろしくお願いしますね、王様」

「セラフィーナ・アーヴィン。ジュリーとは、仲良くさせてもらってるわ」

「わたしはルナール・ラグシェンカです、教官っ(ビシっ!)」


 …………ルナール、敬礼はもういいから。ハルも『あ、忘れてた』みたいな感じで敬礼しなくてもいいから。そもそも教官じゃねぇし。

 つーか、王族相手につくづく無礼なヤツらだよな、俺ら。ま、気にした様子でもないから別にいいけどさ。


「アカシア、と申すか。あまり有名ではないようだな」

「父上。私は噂を聞いたことがありますよ。王都付近に存在していた集落を救ったとか。どうやら、その集落は、名を彼らのパーティ名からそのままとって“アカシア”とするようですね」

「ほう………確かあの付近には山賊が巣くっておったが……。そうか、山賊を捕縛したのはそなたらであったか」


 ナイス兄貴。中々に覚えはいいんじゃないか? 信用のおけるパーティとして認められれば、話は進めやすい。


「まー、断るに断れない状況だったからなぁ。んで、本題だ。ジュリーの言う通り、俺たちはこいつを連れていきたいと思う。何故なら……」

「「「「仲間だから」」」」


 全員でハモる。そう、ジュリーは仲間だ。そいつは譲れない。


「そう、か。仲間………良い者らに出会えたな、ジュリアス」

「はいっ!」


 嬉しそうに答える。確かに、この流れだったらすんなり許されそうな気がしないでもない。だが、そんなにうまくいくだろうか? 簡単過ぎないか?


「だが……」


 ほら。やはりいくら好意的で話のわかる王とはいえ、そう簡単にこちらの都合のいい方向に話が進むわけがない。


「王位をジュリアスに譲らないにせよ、ブルーリオの補佐を勤め、心の支えになる肉親は確かに必要なのだ。おいそれと、そなたらに託すわけにはいかんな」

「確かに、私としてもジュリアスがいると心強いな」


 ちっ、兄貴まで肯定しやがって。これじゃ、誘拐の強硬手段に出るしかねぇか?


「ここにいたら、ジュリーは殺されるかもしれねぇんだぞ? 俺らとの旅で死なんとも限らんが、いつ裏切られて暗殺されるか分からない生活よりは、絶対にマシなはずだ。だから、許して欲しい」


 なーんで俺まで頭下げなきゃならん。こりゃ、あとでジュリーにはなにか奢らせよう。絶対だ。

 と、そこまで考えたところで、王がどこか遠くを見つめるように、いかにもついでに、という感じで話しかけてきた。


「ところで、話は変わるが……」


 いやいや、勝手に変えんなよ。……とは思いつつも、反論はしない。どこか、優しげな表情だったからだ。いや、寂しげでもあったが。


「そなたらは、ジュリアスのことを“ジュリー”と呼ぶのだな。愛称か?」

「ああ。センスないのは分かってる悪かったな俺がつけた愛称だコノヤロー」


 そんなとこで咎められるとは思わなかったよちくしょー。そんなこと言うから、つい王族に暴言吐いちまったじゃねぇか。

 だが、そんな内心の危惧など関係なく、むしろ慌てたように否定する。


「いや、そういうわけではない。良い呼び名だ。……ただ、随分距離が近いのだな。ジュリアスは我々ともどこか距離があったというのに、そなたらには随分打ち解けているようだ。………そなたらとの旅は、さぞかし幸せであったのだろうな」

「幸せかどうかは知らんが………まー、仲は悪い方ではないと思ってる」

「だろう? 羨ましいな、そなたらは…」


 ……………で、結局何が言いたいんだよ?

 しかも、『羨ましいな』と嘆息した後は、ジュリアスを除く家族三人で話しあってるし。居心地が悪いったらない。しかも、王妃の声がやたらでかい。言葉は聞き取れないが、なにかを諭すように続けているようだ。

 やがて、そんな居心地の悪い状況も終わりを告げ、こちらに向き直った王が厳かに話し始める。


「さ、て……。話を本題に戻そうか。そなたらはジュリアスを仲間と呼んだ。ジュリアスも、そなたらについていきたがっている。しかし、それは無理なのだ。ジュリアスは、この王都に必要な人材だ。……………そこで、一つ。そなたらに試練を言い渡そうと思う。これは、妻の提案でな。ここから先は妻に説明させるとしよう」


 試練、ねぇ。ジュリーを連れてくことの出来る可能性でも、作ってくれるんだろうか。

 そんなことを考えていると、常に微笑みを崩さなかった王妃がついに口を開いた。


「ふふ、では告げましょう。…………貴方たちに、ジュリアス・ミアルカンド・シャンパイクを殺す覚悟はおありですか?」

「それが、試練か?」

「あら、驚きませんの?」


 少しばかり驚いた表情だ。まー、“殺す”だもんな。俺は一応理解したが、他のメンバーはそうでもなかったらしい。呆然としているジュリアスを除いた三人が、反論の声をあげる。


「ちょ、レイ! それはまずいでしょ! 王妃様も、息子を殺すなんておかしいわっ!!」

「そうだよ! そんな覚悟なら、僕は要らないっ!!」

「わたしも! レイがそんな人だとはおもわなかったよ」

「だぁぁ! もう、うるさいっ! ニュアンスがうぜぇだけだ。ちょっと黙って話聞いてろ。ジュリーを殺すわけじゃねぇから」


 ホント、うるさいヤツら。せっかく勝手に、俺にリーダーという重荷を背負わせやがったんだから、交渉の場くらい俺に任せやがれ。


「で、王妃。その覚悟だが…………あるぞ。当然だ」

「ふふっ……そうですか。少し、寂しい気もしますが…………あなたに託します。これより、ジュリアス・ミアルカンド・シャンパイクはこの世に存在しません。…………ジュリアス、あなたはアカシアの皆さんと共に在る、ただのジュリアスです。精一杯生きなさい」


 そう。ジュリアス・ミアルカンド・シャンパイクが死ねば、王位継承問題は関係ない。家族側はジュリアスを手放すことになるが……まぁ、そこは我慢してもらう方向で。


「母上…………みんなと、行ってもよろしいのですか?」

「ふふ、誰が許しましたか? ジュリアス・ミアルカンド・シャンパイクはそこの逆賊(・・)に殺されてしまったのです。だから、許しを請う必要はないのですよ」


 はぁ、そしてこれが、俺らに試された覚悟。ジュリアス・ミアルカンド・シャンパイクを殺し、逆賊として追い立てられる覚悟だ。まぁ、本気で追ってくるわけではないだろうが、逃げてるフリはすべきだろうなぁ。


「だから………ただのジュリアス。一度……もう一度でいい。この愚かな女の元へ、来てくださいませんか?」

「は、はうえ…」


 歩み寄り、抱き合う。うん、見事な家族愛ってとこか。王も兄貴も、涙ぐんで抱き合う親子の肩を抱く。辛い別れになりそうだな、ジュリアス。

 それを、俺たちは黙ってみつめていた。感想としては、俺の服の裾をギュッと掴んで涙を堪えているセラフィが可愛かった。以上。





 どれくらいの間、抱き合ったのだろうか。少々名残り惜しそうに、親子は離れた。


 と、ここで。ずっと黙っていた、最も鬱陶しい頼れる情報屋が声を張り上げる。はぁ、どうやら出発パーティーは派手に始めるらしい。


「はっはっー☆ じゃー、ずーっと黙ってた我輩がとっておきのパレードを開いてやろう! ほーれ♪ イッツ パーリー ターイム!!」


 懐に手を突っ込み、たくさんの鞠のようなものを取り出し、ニヤリと笑うジェラーロ。ついでに、俺はセラフィとジュリアスを抱え、いつの間にかシノラインが憑依したっぽい様子のハルがルナールを抱える。

 それを見たジェラーロは、手に持つ鞠を一気に投げた。



 瞬間。広がる煙。大量の真っ白い煙。ついでに辺りを刺すような光が。随分派手だな。目つぶってなきゃ結構やばかったじゃねぇか。

 っと、あとは俺の仕事か?


「ジュリアス・ミアルカンド・シャンパイクは討ち取ったぁ! あばよっ!!」


 そして走り出す。後ろから聞こえてくる演技であろう罵声やら怒声やらを背に受け、俺たちはどこか清々しい笑い声をあげながら王宮を駆け抜ける。


 じゃあな、ミアルカンド宮。ジュリーはもらってくぜ。



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