王さまちょっとツラ貸せや話あんねん
Side Hal. ~ハル・サイド~
と、いうわけでジェラーロの計画は第二段階に移行。
第一段階がジュリアスの奪還で、それは成功したんだけど、問題はそのあとなんだよね。
「さて、ここでミーはキミらにいくつかこのあとの展開をご用意するワケなのですがぁ?!」
ジェラーロはさっきより一層楽しそうだ。なんかもう、オーラが……輝いてる気がする。対して僕たち、特に僕なんかずいぶん疲れちゃったよぉ。それに恥ずかしかったし……。楽しかったのは、い、否めないけど。
レイがハリセンを用いてジェラーロを促す。
「で、どんなメニューがあるって?」
「メニューもメニュー、フルコースですぞっ!」
と、ジェラーロが提案したのが、次の二つ。
まず一つ目は、このままジュリアスを連れてこっそり逃亡。誘拐しちゃうってわけ。でももし追われたら僕達は犯罪者になっちゃうし……。
次の案は、この国の偉い人に直談判しに行く。まぁ、一番平和的解決に近そうだけど、こんな僕達が普通に謁見して話が出来るかは分からない。
そして、なんにせよ下手したら首が飛ぶかもしれない、ということ。ははは……。
「まぁ、当事者のジュリーくんに聞いてみようじゃあないか☆」
ジェラーロが話を振る。僕達全員がジュリアスを見る。
「……僕は」
ジュリアスは迷っているようだった。逃げるか、砕けるか。静かに彼の返事を待つ。
「僕は、このままみんなと逃げたい。でも、それじゃ駄目だって思うんだ。ちゃんと父と兄と話をしなくちゃ。僕が考えてること言わなきゃって思う。みんなが、その手伝いをしてくれたら、嬉しい。あと、こんな後継者争いに巻き込んでしまって……ごめん」
ジュリアスは小さく頭を下げた。僕はなんと言ったらよいのか、言葉が見つからなかった。
ジュリアスがそういうなら、僕は手伝ってあげたいと思う。けど、みんなはどう思ってるんだろう。
降りた沈黙を破ったのは、やっぱりレイだった。
「今更、何言ってんだよ。俺たちは……その、仲間だろうが」
そうそう、とセラフィーナとルナールが続く。
「こんなとこで放っておいたら寝覚め悪いし、ね」
「ジュリーおもしろいからすき。はるも、でしょ?」
面白いイコール好きイコール仲間、という等式でも出来ているのでしょうかルナールさんは。
ルナールに促されて僕も頷いた。出来るだけ、力強く。
最後に、ジェラーロが僕達の顔を見回した。
「よぅっし決ッ定、でよろしいですな?? 『王さまちょっとツラ貸せや話あんねん』作戦で行きますぞぅ!」
……なにその作戦。意味は、わかるけど。
「ま、戦闘態勢もとっといてねん! ヘタレくん剣持った? 不思議ちゃん杖持った?」
「えー、うんー、あっ」
ルナールが杖を落とした。落とした、というか飛ばした。廊下のつきあたりの壁に当たってからんと落下。
「何してるのルナールちゃん……」
「出すときふくにひっかかって手がすべった。はる、とってきて」
「ぅええー何で僕なのぉ?」
と、言いながらも拾いに行く。なんか、
杖を取ろうと屈んだとき、僕の首筋に冷たいものが走った。
「へ?」
見上げると、ぎらぎらした鎧の集団が。その中の一人らしい男が……僕に剣先を向けていた――――って、ええええええーっ!!?
「貴様! 不躾に飛び出すなどと、何方の現前と心得るっ!!」
「ひぃ!?」
ど、どなたって……誰ですかっ? えっ、えっ?
剣を突き付けたままの護衛兵みたいな人と、杖を拾う態勢のまま固まる僕。と、何事かと見守る仲間たち。って、助けにきてよぅ!
「王の面前を遮るとはなんと無礼な」
男は続けた。
え、王って? 王って言った? あの、僕達が今からちょっとツラ貸せや話あんねんって挑みにいく王様?
「ち、父上、兄上!?」
ジュリアスの叫びがやけに遠く聞こえた。
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