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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
エレドニアでのあれこれの章
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あぁ、ジュリエット!

Side Hal. ~ハル・サイド~


 大きな帽子に顔半分を隠すマスク。隠れていない目の部分だけがきょろきょろと視線を彷徨わせる。服装は、長い黒コート。変装の定番的メニューの、ジュリアス。


「これ、逆に怪しくないか?」


 不審顔を向けてきたが、僕とルナールは同時に親指を立てて応える。


「「だいじょーぶ!」」

「いやその自信が不安なんだからなっ!」


 キレのいいツッコミいただきましたー。え? だって変装って帽子にマスクにコートじゃない? あとサングラスとか。その格好をした模範的変装のジュリアスは納得いってないみたいだけど。


 王都に入った翌日、僕たちは城下町でフラフラ遊び回る支度をしていた。ジュリアスと一緒にのんびりできるのも、今日が最後だろう。明日は、王宮に身柄引き渡しで忙しいだろうし。だから、今日はその分おもいっきり遊ぶつもり。なにより、笑顔でジュリアスを送り届けたいし。そういうわけで、ジュリアスに変装を施して街へ繰り出そうって企画中。


「バレんだろ」

「いや、センスじゃない?」


 この王子様を如何にして目立たせないようにするか……なんだけど、外野のセラフィーナとレイはこのジュリアスを見て好き勝手言ってる。他にいい変装なんかあるの? 帽子にマスクにコートって、いいんじゃないのかなー?


「あっ」


  当のジュリアスそっちのけで思案していたルナールがぽん、と手を打つ。典型的な、ひらめいたのポーズ。頭の上に電球マークとか浮かんじゃったり。


「ん、なに?」

「いーこと思いついた」


 そしてびしっとジュリアスを指差す。


「ジュリー、じょそうしなよ」


 じょそう? 助走、除草、序奏、女装? あ、女装か。えっ女装?


「はぁああああっ!?」


 当然の如く、絶叫するジュリアス。ずさささっとルナールから飛び退く。首と頭を同時に振りまくってる。


「なっなんで女装って単語が出てくるんだよっ! なんで僕がっ! 無理無理無理だぁーっ! てか嫌だっ!」

「だって、変装いやだっていうからー」

「あールナールちゃん拗ねちゃったー。ジュリアスのせいだー」


 囃したてる僕達には取り付く島が無いとみたか、ジュリアスはレイに助けを求める。ずるずると、セラフィーナ達の座るソファーへ這いよっていく。


「それとこれとはちがうだろ……。なんとか言ってくれよそこの……イチャイチャ二人!」

「「イチャついてなんかないっ!!」」


 とりあえず(いつものように)ハモるレイとセラフィーナの二人。うん、今日も仲良いなぁ。急なフリにも対応力抜群だね。


「へー、女装?」

「あの王子様が女装ねぇ。国民にばれたらさぞ羞恥だろうなー」


 セラフィーナとレイがジュリアスを上から下まで眺め見る。ついでに、レイの言い方に、今までの恨み辛みが込められているような気がするのは気のせい? うん、気にしたら負けだな。

 ジュリアスはここぞとばかりに意気込んで女装回避をねらっている。


「わかるだろ! 僕王子なんだからっ!」

「あ、無駄な王族意識は捨てろって言っただろー。女装決定」

「ええ!」


 一言の失言によって容赦ないレイの決断が下された。愕然とするジュリアス。


「わーい」


 自分の意見が通って嬉しげなルナール。僕は……別にジュリアスの女装とか見たくないよ。面白そうだけどさ。


「わーいじゃない! 断固拒否だからな! ていうかレイはやっぱりそっちの趣みぎゃ!」


 ばしぃい!

 ジュリアスの頭に真白いハリセン振り下ろされました。あ、セラフィーナに借りたようです。


「ま、王子様が女装とか普通考えないしね。ばれないんじゃない?」


 お、セラフィーナのってきた。次々とジュリアスの味方がいなくなっていくなぁ。僕? 僕はいつでもルナール賛同だよ! というわけでジュリアス女装決定だね。ルナールは早速…。


「ジュリーであそびたかったの。セラ、てつだって?」

「はいはーい♪」

「待てぇ! 遊びたかったってなんだよ!」

「わたしジュリーとおんなじくらいだからワンピース着れるね」

「聞けぇえ!」


 反論も虚しく、女子二人に剥かれる(笑)ジュリアス。その様はまさに着せ替え人形の如し。あぁ、標的が僕じゃなくてよかったなぁ。


「うわ何、ジュリー髪さらっさらじゃない」

「うわージュリーやだー」

「ちょっやめーっ!」


 僕とレイの男二人は、やや離れて事の成り行きを見守っていた。温かい視線を送りながら。


 梳かされた黒い髪に、素朴な白いワンピース。なんだか、描写するのも憐れなジュリアスのやつれた表情。

 でも、い、意外と?


「わー! にあうー」


 それ思ってても言うのはさすがに可哀相ですよルナールさん! 僕も、ちらっとは思ったけどね!


「う、うるさいっ!」


 なんかもう、顔真っ赤で真っ青なジュリアスは格好も顧みず打ち拉がれている。それをまったく意に介せずはしゃぐ女子組。


「可愛いー!」

「にあうにあうー」

「なんで、こんなはめに……。父上や兄上に見られたら死ぬ、死ねる……」


 そういうわけで、ジュリアスならぬジュリエット(愛称ジュリ子)、ここに生誕。本当にこれで城下の石畳を踏むのかな……?




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