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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
エレドニアでのあれこれの章
72/84

エレドニアへ!

Side Hal. ~ハル・サイド~


 そうして僕達はこの村を出ることになった。


 村人達はこれまた盛大に送別をしてくれた。そしてリエナも。


「絶対に幸せになってやんだからなァア……です!」


 リエナはどこか吹っ切れた笑顔で見送ってくれた。でも、怖いです、リエナさん……。


 ここから徒歩で王都まで向かう。馬車でここまできたのだが、歩いて二時間で王都に着くというレイの言葉で、どうせなら歩いて行こう、となった。それを提案したのはジュリアスだった。しかも強く主張していた。ま、一応依頼人だし、言うことは一応聞いておこうか、みたいな感じだけどね。そういうわけで、歩きとなりました。


「いつか寄っていってくださいね!」

「ジュリ兄たちばいばーい!」

「皆さんもお元気でー!」






「はぁあ……」


 アカシア(村)の皆さんに盛大に送られて村を出ると僕達一行はだらだらと進み始める。レイとセラフィーナが先頭を歩き、その後ろに僕とルナール、最後にくっついて歩いてるのはジュリアス。三歩に一回はため息ついてるよ、彼……。

 対してレイとセラフィーナの二人は今日も喋りの調子がよさそうだ。喧嘩しているだけなんだけどさ。もうこれ舌好調(ぜっこうちょう)でしょ。お後がよろしいようで。


「それどーゆーことよ! もう、馬鹿っ!」

「なんだよ、この馬鹿馬鹿馬鹿!」

「はぁー……」


 馬鹿ひとつのセラフィーナと、馬鹿三つのレイと、ため息のジュリアス。その三人に挟まれてると、どれくらいのテンションが正しいのかわからなくなってくるよ。


 不意に、ルナールが、ついついっと僕の袖を引っ張った。


「ん、なに?」

「ねぇ、ジュリーなんでそんなにため息ばっかりなの?」


 僕はそんな疑問のルナールに懇切丁寧に教えてあげる。一応ジュリアスに届かないように、小声で。


「もうすぐ王都につくでしょ?」

「うん」

「そしたらさ……ジュリアスとはお別れなんだよ。ジュリアスは依頼人だし、王子さまだし」

「へー。…………えー」


 ワンテンポ遅れてルナールが非難の目を僕に向ける。えっ、なんで僕を見るのぉー……。ていうか気付くの遅くないですかルナールさん。


「ジュリーはおうじさまじゃないよぉー」

「え、じゃあなに?」

「ちびっこ二号」

「うわぁ! その一号って僕なの!? っていうかルナールちゃんもそんなに身長かわらないからね?」


 あっ、今の発言で傷ついたの僕だ。ルナールとあんまり身長かわらないなんて……。やっぱりこのブーツに少し細工を(以下省略)


「……わかってるよ」


 ジュリアスがぽつりとつぶやく。僕とルナールは同時にジュリアスを見る。あっ、もしかして聞こえてたかな? ルナールは検討違いの質問をする。


「背がちいさいってこと?」

「違うッ!」


 びしっとルナールに突っ込みを入れ、また息をつくジュリアス。


「きっと、僕がいなくなって清々するんだろ?」


 うん? ジュリアスの思考が曲折してるよ? 彼も検討違いの考えだなぁ。


「そんなことないよ。だって一緒に旅したの楽しかったし。あれ、楽しくなかった?」

「いや! そんなことはない……けど」


 ジュリアスは視線を落とす。けど、なんだろう。ジュリアスの言葉の続きを待たずに、ルナールが口を開く。


「ジュリーは、さいしょは、ちびっこでいばりんぼでヤな人かと思った」

「ちょっ、ルナールちゃん……?」


 でも、と彼女は続けた。


「ジュリーいいひとだった」


 ジュリアスは顔をあげた。複雑な表情を浮かべている。


「でも僕は、さっき言ってたみたいに、すごい上から目線だったし、嫌な奴だって思われてたし……レイとかに。今思い出すと、セラにも酷いこと言ったし」


 いまだに、気にしていたんだな、ジュリアスは。


「でも、それに気付いたってことは、今までの嫌なジュリアスじゃなくなったってことだよ」


 ジュリアスは自分の態度に気付いた。だったら、自分の悪いところは直せばいいんだと思うよ。


「うんうんー」


 ルナールも同意した。ジュリアスはまだ歯切れの悪そうな言い方をする。


「僕は、みんなと一緒にいたときが今までで一番楽しかったんだ。けど、みんなは僕のこと悪く思ってるかもしれない……って」

「なぁんだ。そんなこと全然ないよ! 僕達がそう考えてると思ったの?」


 少なくとも僕はね。でも、きっとルナールもセラフィーナも、レイも僕と同じ答えだと思う。


「すごく、楽しかった。本当はまだ一緒に旅を続けたいくらいだ。お城なんてすごく退屈なんだ」

「まぁまぁ、そんなこと言わずに。王子様(笑)」

「そ、そんな呼び方するなっ」


 ジュリアスは笑った。


「僕達と旅したことを、忘れないでほしいし、いろんな人に話してくれると嬉しかったりするよ」

「はっ、誰がカップルとヘタレと不思議ちゃんの話なんか聞くんだよ」


 あ、それもそうだよなぁ……。レイとセラフィーナはカップルで、僕はやっぱ

りヘタレ扱いですか。やっぱり。




 僕達は、大きな関所の門の前で歩みを止める。王都へ、到着した。




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