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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
名も無き集落の章
63/84

心労は溜まる一方。

Side Ray. ~レイ・サイド~


 いや「パス☆」って…。結局俺がやるわけ? めんどくせぇよ、マジで。しかも山賊とか、このメンバーで討伐すんの嫌なんだけど。だって絶対殺せねぇし。コイツらは殺しに激しく抵抗を覚えてもおかしくない。かくいう俺も、気分が悪い事は確かだ。絶対殺せねぇよ。

 んで、山賊の捕縛って、かなり難しいぞ? ………まぁ、虐殺なら楽でも、精神衛生上は非常によろしくないけど。

 いくら他人で、悪人でも、そんなに大勢を一気に虐殺すれば、かなり心は荒む。一人を殺すのだって、表面上は平気そうでも相当キツイ。背負うモノは増える。

 だ か ら ! 結局は山賊を全員捕縛し、役人に突き出さなければいけないわけだ。そうじゃないと、このメンバーでは刺激が強いし、俺だって正直やりたくねぇ。………捕縛も非常にめんどくさいし、難しいけど。


 そうだ、難しいんだ。相手の山賊がどれくらいの規模かは知らんし、傭兵ギルドに依頼するだけの金がないことも察することが出来る。だからこそ、難しいし、利益がない。相手の規模が分からないほどの情報しかなければ、作戦を立てるのだって楽じゃない。利益がなければ、当然士気は落ちる。

お人好しにだって限度はある。見ず知らずの他人を救うために、命をかけることはさすがに出来ない。俺は勇者というワケでもなく、英雄というワケでもないのだから当然だ。いくらお人好し&おせっかいでも、そんな自分を省みない行動など出来るハズもない。というか絶対に無理だ。

………やはりここは、村人たちを王都に移り住むように説得した方がいいのだろう。そうしよう。それしかない。


 そう思い、俺が口を開こうとした瞬間、村人の方から声が聞こえてきた。その声が発せられているのは、どうやら小さな影四つからのようだ。


「だれだー、しんらくしゃ!! あれ、しんりゃきゅしゃだっけ?」

「侵略者!! なんかい言ったら分かるのー?」

「そうよ、これだからバカな男の子はこまるわ!!」

「なにぃ、ぼくたちはバカじゃない!! 言っとくけど、しんらくしゃを退治するのはぼくたちだからな!!」

「「“侵略者”!! “しんらくしゃ”じゃないの!!」」


 小さな影の正体は子供。男の子が二人、女の子が二人の四人グループだ。そんな彼らは、どうやら未だに俺たちを侵略者と勘違いし、退治しようとしているらしかった。


「………この子たちは? いや、言わなくていい。あんたらの子たちだろう? あんたらおっさんの中にも家族持ちのヤツはいるだろうしな」

「どこか言い方が皮肉っぽいが、そうだ。………おい、この人たちは別に侵略者じゃないから、お家で大人しくしてなさい」


 最後は、子供たち四人に向けて。子供たちはこのおっさんの言葉に応じ、軽く不満そうに「はーい」と返事をして戻っていった。

 ………うん、まぁ子供とかがいるとなると、なんだかんだ言って頑張らなきゃいけない気がしてくるから不思議だ。


「ねぇ、レイ。あの子たち、可愛かったですねぇ」


 突然のリエナの声。………そうだろうか? 俺にはただのクソ生意気なガキにしか見えなかった。まぁ、ココで否定すんのもめんどくせぇコトになりそうだし、一応の肯定。


「ん? ああ、まぁそうだな」

「むぅ~、あんまり思ってないですね? あ~んなに可愛いのにぃ」


 はいはい、そうですか。


「……レイ、当然ですけど、あの子たちの居場所、護ってあげますよね?」


 ………………は? なんか、すごく嫌な予感。


「ちょ、リエナさん! いきなりなに言い出すのよ!! なんかレイは説得で済ませようとする流れだったじゃない!!」


 ナイス、セラフィ!! よく分かってる!! そのままリエナを説得してくれ!! ついでにハルたちも畳み掛けろっ!! ……という願望を込めてハルとルナール、ジュリアスを見る。


「ねぇルナールちゃん。なんか僕、眠くなってきちゃった」

「つかれたんだね。レイのしゅぎょう、ようしゃ無かった」

「………確かに、あの修行はない。僕は逃げる。もう修行つけて欲しいなんて言わない」


 全く関係ない上に、修行にケチつけられとる……。ざけんなよ、マジで。言っとくが、あんな筋トレなんてただの体力づけだ。ハルの身体があまりにも弱すぎたから仕方なく取った方法であって、筋トレだけではまだ、俺の修行は始まってないようなもんだから。俺の修行はあんなもんじゃねぇぞ!!

 っと、また壊れるトコだった。まぁ、コイツらの力なんてなくとも、セラフィがリエナの説得に成功しているだろう。


「ふーん。ならしょうがないわね。……レイ、助けましょ」

「そうですよねぇ。うんうん、助けるのが一番ですよぉ」


 ………………なにがどうなった。俺がハルたちを見ている間に、どんな会話がなされた…! 気になるし、なんでセラフィまで丸め込まれてんだよ、ふざけんな。おそらく山賊捕縛の作戦考えるのは俺だぞ? 面倒事は結局俺に回ってくる運命なのか?!



 もう……諦めよう。



「………分かった。助けよう。作戦も考える。任せてくれ。村人たちも、山賊を捕縛して自由を取り戻したいのなら、極力俺の指示に従ってくれ。いいな?」

「い、いいのか?! 俺たちを助けてくれると??!」

「ああ。その代わり、この宿は自由に使わせてもらうからな」


 割りに合わない報酬。そんな報酬で、俺は引き受けてしまった。………なんか、セラフィまで助けるとか言い出したら、やるしかねぇじゃん。しょうがない。


 そんな諦めを溜め息と共に吐き出している俺に、先ほどの長老らしき人物が話しかけてきた。


「本当によろしいのですかな? 確かに我々は先ほど、助けて欲しいと申したが……山賊との交戦ということは、命の危険もある」

「…………なんのための作戦だと思ってんだ? 命の危険が最小限の作戦を、俺が考えんだよ。だから、しばらくはここで滞在して、情報を集めて、作戦を練る。その間の宿の利用許可、食料の提供をしてくれれば、それでいい」


 もう、利益は求めない。さっさと助けて、さっさと王都に行く。これで決まりだ。


「ふむ、なんとお優しいお方じゃ。わしの孫娘の婿に欲しいくらいじゃのぅ」

「興味ねぇ。どうせ、あんたの孫だったらさっきの子供くらいの年齢だろうが」

「………ふむふむ、ほほーう。そうかそうか。女は間に合っとるか。して、本命はどちらじゃ?」


 何かを察したように、そして耳打ちをするような雰囲気をかもし出しつつ………結局はセラフィにもリエナにも、他のメンバーにも聞こえるように訊ねてきた。


「なにが本命だ。俺はフリーだよ」

「………いやいや、わしの予想では、そっちの藍色の髪の子じゃろう。そうじゃろう、その子しかありえん!」


 やめてくれ! マジでやめて!! なにこの長老、ふざけてんの? 人の恋愛状況を聞いて楽しいか? 詮索すんなよマジで!!!


「……勝手に言ってろ」


 あーもう顔赤いって絶対。セラフィの顔見れねぇよ。まぁ、あいつも顔赤いんだろうけどさ。そりゃあ、いくら俺の事が嫌いでも、あんな風に言われたら顔赤くもなるよなぁ…。


「あ、あたしとレイは、そんな関係じゃないんだからね…!」


 ほら、否定。やっぱ、俺の事は好きじゃないか。まぁ、俺もそのスタンスでいくけども。


「ああ。関係ない。興味ねぇよ」

「…………では、その首にかかったアクセサリー。お揃いのようじゃが、それは一体なにかね?」


 痛いトコついてくんなぁ!!


「こ、これはアレだ、ケンカ仲間の象徴だから、うん。なぁ、セラフィ?」

「そ、そうよ。あたしたち、言い争い多いから、その象徴よ!」


 うん、これでいい。


「はる、でもあれはすきなひと同士で買うやつ。それに、レイとセラはおたがいがおたがいをすきでしょ? なんで、ケンカ仲間っていうの?」

「へ?! そ、そりゃあ、レイたちにもいろいろ素直になれない部分があって………や、違うよ、レイ? 別に、二人が好き合ってるとか思ってるわけじゃない、うん。だからそんなに怒らないで? ね!?」


 確かに俺は素直になれねぇが、直で言われるとムカつくんだよ。雰囲気の威圧だけで済んでありがたいと思えヘタレ。


「ちぃっ、やっぱりアタシじゃ無理なのかよ!! しょうがねェ、さっさと山賊潰してレイと既成事実を作ってやるっ」


 裏リエナさん。あんた怖い。あんたいつの間に代わったよ? 嫉妬するような場面なんてあったか?

 まぁとりあえずストッパーかけとくか。


「リエナ。止めろ、ホントに。それと、山賊は殺らないぞ? 捕縛して役人に突き出す。おーらい?」

「はい、分かりましたぁ。私じゃなにも出来ませんし、頼りにしてますからね、レイぃ♪」


 ホント、扱いにくいヤツだ。めんどくさいったらない。


「知らん。勝手に逃げろ。……それと、じーさん。そろそろおっさんたち連れて出てってくれ。しっかり作戦は考えてみるから。とりあえず俺たちを休ませてくれ」

「ふむ、分かった。………皆! この方々は快く協力を申し出てくださった! 今日は存分に休んでいただこうと思う。帰るぞ」


 この言葉に応え、長老(?)とおっさんたちはやっとのことで出て行ってくれた。




「………さて、セラフィ。メシ、頼んでもいいか? 今、すごくセラフィのメシが食いたい気分だ」

「……うん! 頑張って作るからねっ」

「おう、頼むな。ありがとう。…………それとリエナ、豹変する前に頼むが、セラフィの補助をよろしく」

「……なんでアタシが…ッ!! いえ、分かりましたぁ。任せてくださいねっ」


 混ざってるし。ホント、リエナの扱いが正直分からんよ。


 とりあえずめんどくせぇハナシになっちまったが、頑張るしかねぇ。台所に走っていったセラフィを護るためにも、しっかり作戦立てて、頑張らねぇとな。


「しかしハル。この状況を作ったお前には罰として、筋トレの回数及び素振りの回数を倍とする。しっかり励めよ」

「うぇえ?!! そ、そんなぁ!!! それだけは…! それだけは勘弁してぇ」


 俺の足元にすがりつくように泣き叫ぶ(?)ハル。…………なんか逆に可哀想になってくる。こっちもただの冗談だし、余計に。


「……冗談だって、真に受けんな。お前はよくやってくれたよ」

「ほ、ホント?!」

「ああ。助かった、相棒」

「相棒………そっかぁ、ふふふ。うん、これからも相棒として頑張るよ!!」


 ………あいかわらず単純ー! いつか絶対詐欺に遭うよ、コイツは。


「あいかわらずレイは優しいのに性格わるいね。はるであそんでる」

「趣味悪いよな、レイは。ホント、嗜虐趣味とかやばい」


 ルナール! ジュリー!! …………ホント、この子供コンビは性質(たち)が悪いな。俺にそんな趣味ねぇよ。だって俺はセラフィには笑っていてもらいたいと思って………ってホントに俺は何考えてんだ!! ふざけたおしてんじゃねぇよ!!



 ふぅ、とにかく、今日は疲れた。セラフィのメシ食って、さっさと寝よう。


 あ? 作戦? 明日考えるって、今日は休ませろよ、いろいろ心労が溜まってんだよ。というわけで、メシが出来るまで仮眠。おやすみ。


「うわ、都合悪くなったから寝てるフリしてる」

「レイ、にげちゃだめなんだよ」

「ふ、二人とも?! あの、レイが怒る前に、そういう話はやめといた方がいいと思うなぁ…」


 …………ハルのヘタレさに、怒る気が失せたよ。まぁなんでもいい。とりあえずメシが出来るまで、俺は寝るっ! おやすみっ!!



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