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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
移動の最中、面倒事の章
60/84

僕の旅のワケ

今回は、ハルくんの過去のようです。


それでは、本文をどうぞ!

Side Hal. ~ハル・サイド~


 今日はもう、一日ゆっくり休むことにした。昨日の今日だし、もともとのクエスト依頼人のジュリアスも了承したので、本日は休息日。各々、のーんびりと過ごしている……僕を除いて。


「ぐっ! ぬぬぅー!」

「腰が落ちてる! 腕立て伏せやってるんだよな?」

「わっ、わかってるよっ……うぅー!」


 剣技よりまず体を鍛えろ、ということで、腕立て伏せ三百回。そのあとには腹筋運動と剣の素振りが待ち構えているという。傍では、暇していたルナールが腕立て伏せの回数をカウントしている。

 無理だよ……これ無理だよ。ハードすぎるでしょ、いきなり三百回とか。鍛えてくれって頼んだのは、僕なんだけどさ……でもっ。


「何か文句でもあるか?」

「ないですぅう!」


 見透かしたように、レイの叱咤が飛ぶ。文句なんて言ったら相手にされなくなるだろうし、それに、レイの期待に応えなきゃだし!


「よんじゅはーち、よんじゅきゅーう、ごじゅーう」

「じゃあ、一旦休憩。言っとくが、こんなんでへばってたら、これからの特訓なんてついていけねえからな?」

「う、うん……はぁー」


 仰向けに大の字になる。腕とか肩とか他にも関節が軋んでいる気がする。

 腕立て伏せ五十回でくたくただなんて馬鹿にしないでよね。結構キツいんだからこれ。特に、今まで全く運動したことのない僕にとっては。


「はい、はる」


 ルナールがタオルを渡してくれる。レイは傍でダガーの手入れを始めた。

 遠くでは、女の子の笑い声が聞こえる。セラフィーナとリエナだろう。(レイをめぐる)ふたりが一緒に居るのは少し怖いけど、ジュリアスもそこに居るはずだから、なんとかなるかな。


「ねぇ、ルナールちゃん、体力つける魔法とかないの?」

「ないよ、そんなの」

「やっぱり……」

「はる、なんで旅してるの。いままでからだ鍛えたことないんでしょ? それに、旅しなければそんなのひつようないし」

「うん……そうなんだけどさ」


 僕はルナールに話すことにした、旅にでた理由を。って言っても、たいしたことじゃないんだけどね。レイのダガーを研ぐ規則的な音を聞きながら、僕は話しはじめる。




 僕は、カーストウッド家に生まれた。そんなに有名な貴族じゃ無かったけど、まあ、領主の分家みたいな、そんな感じ。でも、その領主さまが悪いお人でさ。

自己中心的っていうのかな、とりあえず暴君だったんだ。税金が高かったりとか、高かったりとか。

 それで、僕はその領主さまのところに奉公しに行ったんだ。数日間だけ領主さまのもとで働く、奉役の義務ってやつ。それはまぁ、本家に従じるしたっぱ貴族なら普通のことだし、僕も、ちょっとめんどくさいなあーって思いながら領主さまの屋敷に向かったんだよ。

 ここからは、あんまり信じなくてもいいよ。なにせ僕自身も信じられてないしね。

 馬車で領主さまの元へ向かったんだ。そしたら、屋敷に村人が攻め入ってたんだよ。無茶な行政に反乱起こしてたんだ。タイミングが悪かったよ、僕もそのデモ隊に巻き込まれて、あわてて屋敷に逃げ込んだ。でも、屋敷の中も大荒れで、ばたばたしているうちに領主さまは反乱分子の一人に殺害されてしまった。

 逃げ惑う群れのなか、僕は領主一家のひとりだと間違えられて屋敷の中を追われてた。

 逃げ込んだ部屋の、壁に飾ってあった剣を抜くと、急に意識が飛んで、気が付くと追っ手だったはずの男が倒れていた。うん、その剣はシノラインだったんだ。それでシノラインが、「こいつらを殺していいなら、お前の命を守ってやれる」って契約を持ち出してきたから、それはそれはお願いします、って僕は了承した。

 今はこうやって普通に語ってるけど、あの時は相当パニックになったからね? 目の前の人は血みどろだし、頭に誰かの声響いてたし。

 それで、僕はシノライン片手に向かってきた人たちを凪いでいって、戦場と化した屋敷を出てきた。

 とんだ戦いに巻き込まれたけど、偶然シノラインに出会って、生き延びることができた。でも、僕の家は無事じゃなかったんだ。

 本家から滴る甘い蜜を吸って生き長らえてた僕の家は、行き場を失って没落。もとより、自分の力で立っていなかったからね、もう共倒れ状態。路頭に迷いまくり。

 そんなとき、連れてきていたシノラインが傭兵のことを教えてくれたんだ。戦いはシノラインに任せるとして、短期間で高報酬。僕はすぐさま飛び出して、ギルドに駆け込んだんだ。

 とまぁ、それが、僕の旅立ちのきっかけであり、シノラインとの出会いだったんだ。そのあと、レイに出会うんだけどね。




 ルナールは静かに耳を傾けてくれ、レイの砥石の音は小気味よく響いていた。


「お昼ご飯、出来ましたよぉー!」

「僕も手伝った!」


 突然、リエナとジュリアスが茂みの向こうから顔を出した。ジュリアスは自慢げな表情。


「へぇ、王子様(笑)に包丁が握れたとは」

「わっ、笑うな! 指は、切らなかったぞ! だから、笑うなっ!」


 指を切ることが前提の言い方に、僕とルナールは笑ってしまった。立ち上がったレイが、僕を見下ろして言う。


「体力づくりの続きは、やるからな。サボんなよ」

「えぇーっ!」


 王都までは、もうすぐだ。



あぁ、レイに鍛えられるハルがなんか可哀想だ…ww

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