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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
移動の最中、面倒事の章
57/84

嫉妬のマモノ

なんか文がうまく書けてないし、細かいところを省きすぎた感が否めませんが、ご了承ください。


柚雨の力では、これが限界です…。



それでは、本文をどうぞ。

Side Ray. ~レイ・サイド~


「なぁセラフィ? ………“もう少し”って、あとどれくらいだ?」

「………もうちょっとだけ…」


 ぐっ………離せない。そりゃ、俺だって離したくないけども……そろそろ戻らないと、ここで一夜を過ごしてしまうことになりそうで、いい加減離れないと困る。

 でも…。


「……分かった。もうちょっとな」

「…うん!」


 結局離せない。………もう、このままでもいいかな…。

 そんな邪(?)な考えが俺の思考の十分の九くらいを支配したところで(ほとんどじゃねーか! という文句は受け付けない)、俺はおかしな気配を察知した。


「……セラフィ。悪い。邪魔が入ったみたいだ」

「え? ………どういうコト?」

「刺客かどうかは知らんが、今、軽く殺気を感じた。残してきたハルたちも心配だし、一旦戻るぞ」

「う、うん。分かった」


 ホント、誰だよ。邪魔しやがったのは。せっかく俺らが素直になれる珍しい時だったというのに…!

 心の中で存分に文句を言いながら丘を下っていると、向こうから三人分の人影が見えた。なにやら、かなり急いでるらしい雰囲気だ。つか、ハルたちじゃね?


「おいハル! そんなに急いでどうした!?」

「おっ! レイ!! こっちにリエナちゃん来なかったか?」

「なんだ裏ハルか。見てねぇけど……リエナがどうしたって?」


 俺のこの疑問には、ルナールが答えた。


「はるじゃないひとが言いすぎて、お姉さんはレイたちのほうにはしってったから、さがしにきたの」

「あ、でも、その前から様子はおかしかった。……ずっと、なんでって連呼してたから」

「どういうことだ、ジュリー?」

「なんか、惚れ薬がどうとか…」


 惚れ薬………俺の様子がおかしかったのって、それが原因なワケね。つか、リエナは俺に惚れ薬なんて飲ませて、何をさせたかったんだ?


「おいクロガキー。てめーは、ちったぁ女心ってのを勉強した方がいいぜ?」

「あー、もしかして、だが………それで、俺に惚れさせようとしてた感じか? 惚れられるようなコト、した覚えねぇんだけどな」

「……あのね、レイ。あんな風に魔獣に襲われてるところを、あそこまで颯爽と助けてもらったら……結構な確立で女の子は惚れてもおかしくないと思う。…………顔だって、悪くないんだから」


 …………俺、さり気なくセラフィも魔獣から助けてます。惚れられたりしてんのかな? もしそうだったら、もう告白しちまうか? ……って、今はそれどこじゃねぇんだった。


「……そうだ。今、軽く殺気を感じたんだ。もしかしたら、刺客かもしれない。リエナを一人にしておくのも危ないし、探すぞ」

「刺客? そりゃまずいな。さっきのリエナちゃんの様子じゃ、なんにも抵抗せずにお陀仏だ」


 そりゃマジでまずい…! 惚れ薬を盛ってきたとはいえ、俺の見た限りリエナは善人だった。それなのに、無抵抗で殺させるわけにはいかない。




「ギィィイイイイ!!」


 そんな焦燥感を抱くと同時に、耳をつんざいた奇声。………なんだこの声は? 刺客は、魔物の類なのか…?


「東の方角から聞こえた。向かうぞ」


 東の方角。それは、俺たちが来た方向だ。そして、ルナールが言うには、リエナが向かった方角でもある。………かなりピンチだ。最悪の事態に、ならなければいいんだが…。






目に映る光景に、俺は愕然としていた。

 あの丘をもう一度登りきり、先ほど俺とセラフィがいた場所。そこに、その魔物はいた。………いや、“魔物”と呼ぶべきではないかもしれない。


「ア゛ァァァ!! なんで、なんで私を…! アタシをぉぉおお!!」


 肌は真っ黒に染まっている。瞳には、危険な光を灯している。深緑の髪を、逆立てている。そんな魔物。

…………それは、俺にはどうしてもリエナにしか見えなかった。


「アタシを選べぇぇえええ!!」


 俺は動けなかった。あれがリエナなら、俺には無理だ。……殺せるわけ、ないじゃないか。


「バカレイっ! てめっ、死にたいのか?!」


 目の前で火花が散る。どうやら、リエナらしき魔物は、俺を狙って攻撃してきていたらしい。それを、シノラインが長剣で止めたようだ。


「つっ…硬ぇ! んだよ、この強度は!!」


 鋭い金属でも、弾くほどの強度の肌。……これは、シノラインだけじゃかなり危ういかもしれない。


「……さっきは悪い…! 加勢する。………セラフィ、白狼(リア)召喚! ルナールは後ろで俺たちのサポート!」

「了解! 《リア。お願い!》」

「わかった。………シールドでいい?」

「おう、頼む」


 言葉に反応し、白狼であるリアが現れ、半透明の巨大なシールドも、五枚ほど展開された。


「ジュリーはセラフィと一緒に最後方まで下がれ! なんかあったらちゃんとセラフィを護れよ?」

「わ、分かった!」


 ジュリーにセラフィを任せ、俺もダガーを抜く。

 だが、先ほどのシノラインの様子からして、ダガーの投擲程度じゃダメージを与えることは不可能だろう。ならば、どうする? ……とにかく、俺は持っている手を出し惜しみすることは出来ないようだ。

 ちょうど、魔物の大振りな攻撃をシノラインが避けたところで、俺は声を発する。


「シノライン! 下がれ!!」


 何も答えずにシノラインがバック転を繰り返すのを尻目に、俺は大量の起爆札を装着したダガーを魔物に投げつける。


「ルナール! シールドでヤツを囲め! 爆風をヤツだけに集中させるんだ!」

「わかった」


 ルナールの返事通りに、五つのシールドはヤツを包みこむように動き、爆風完全に閉じこめ、威力を増大させてくれた。

 ………まだだ。これくらいで終わるとは到底思えない。しかし、ヤツの後ろにはすでにリアが待機している。爆風が晴れ、シールドが外された瞬間に、リアはヤツに噛み付きにかかるだろう。


「……ルナール。そろそろ、外していいぞ。……リア、今だ!」


 言葉を解するのか知らんが、俺の言葉どおりにリアは動く。ヤツの腹を大きく抉るように大きく口を開け、噛み付いたのだ。

 しかし……。


「アアアァア゛ァァ!! 効くと思ったか、白狼!! その程度の牙、アタシにとおるワケないじゃないのさ!!!」


 !? ……無傷、だと? あの爆風も……リアほどランクの高い魔獣の攻撃も、全て、全て……効かない、のか…?


「愚かなり人間。ホント、人間は愚かだねェ、ひひっ! そうだ、ちょっと前にアタシを……リエナ・ローウェンである“私”を裏切った男も、愚かだった! 恋人だったのに! 他の女と手なんか繫いで! 裏切るから! リエナの代わりにアタシが出て、殺してやったのさァ!! ま、それだけじゃ収まらないから、そこの坊やの護衛たちも、一人ずつ嬲り殺しにしてやったけどねェ!! ひ ゃ は あ は あ゛あ゛ァ ァ !!」


 ………やはり、リエナなのか。リエナの、裏人格…。ジュリーの護衛を殺したのも、裏のリエナ。警戒すべき刺客というのは、刺客ではなく、魔物だったというワケか…。


「てめぇ! リエナちゃんを乗っ取って何がしたいんだ!!」

「あ゛ぁ? ちげーよ、アタシはリエナを乗っ取ってんじゃない。魔物としてのリエナの本質は、アタシなのさ! 気付かなかった? リエナは魔物!! アタシはリエナの嫉妬に呼び起こされて現れる、本性みたいなものさァ!! リエナはアタシの存在すら知らないけどね!! 今回は、そこの黒いガキのおかげで出てこれたみたいだねェ!! 感謝するよォ!!!」


 ぐっ……ふざけるな。………だけど、だけど…!


「殺せないって? そうだねェ、その判断は賢明だ!! なんせ、アタシを殺せばリエナも死ぬんだから!! まっ、どのみちアンタらにアタシは殺せないけど!! あはっ☆」


 そうだ。こいつを殺した場合には、リエナも死ぬ。………少し歪んでいたとはいえ、俺を好いてくれていた人物を、殺さなければならない。

 どうすれば……どうすれば、死なないんだ…。


「レイっ、前!!」


 セラフィの声で、目が覚める。またもや、俺は動けなかったようだ。……マズイっ!!

 瞬間的に俺は多大な危険を察知し、リエナの腕が俺の心臓を抉りだそうと迫っていることに気付く。


「死んでたまるかっ!!」


 そう、死ねない。そして、リエナを殺すわけにもいかない。

 俺はとりあえずこの場を回避するため、大きな魔力球を俺とリエナの間に生成した。どちらかといえば、俺の近くに。


「あはぁあ゛!! なにがしたい? そんなんじゃアタシの攻撃は…!??」


 そうか、こいつは俺の魔法反射(マジックカウンター)を知らない。だから、俺の創造した魔力球がリエナの方に弾かれ、さらに、俺はその反動で後方へ逃げおおせたことに気付かないわけだな。


「レイ! ……大丈夫?」


 後方まで吹っ飛ぶように逃げてきた俺に、セラフィが話しかけてきた。


「ああ。大丈夫だ、セラフィ。………とりあえず、考える時間が欲しいのは確かだけどな」

「そう、だよね…。だって、リエナさんは悪くない…」


 そうだ。リエナは悪くない。………この状態は、俺の“闇”による狂気が暴走したのと同じようなモノなのだ。しかも、会った時のリエナの様子を考えると、“嫉妬”が暴走している間の記憶はないようだ。

 やはり、殺せない…。



「おい、クロガキぃ! 俺とそこの白狼、あとルナちゃんのサポートでなんとか時間を稼いでやる。………その間に、なんとか対策を考えろ!!」


 シノラインの声。………ありがたい。


「悪い! 頼む!!」

「おう! 任せなっ」


 その声を完全に信じ、俺は目を瞑る。金属が硬いモノにブチ当たる鈍いようで鋭い音が段々と遠ざかっていき、俺は思考の中に独り、存在した――。






 思いついたのは、一か八かの賭けだった。成功する可能性なんて、あってないようなモノだ。だけど、俺にはそれが最善の手だった。


 決断し、俺はグローブから大量の鋼糸を生成し、操ってリエナを中心に円状を造る。そしてさらに操っていくと出来るのは、幾何学模様の魔方陣だ。


「シノライン、リア! 退けぇ!!」


 言葉に反応した一人と一匹が逃げ去り、リエナが戸惑っているところで、俺は鋼糸で出来た魔方陣に魔力を流した。

 光り輝く魔方陣。俺の描いた魔方陣は、与えられた魔力によって発光し、それに伴って効果を発揮するのだ。


「あがぁああ!! ガキぃ!! なにしたっ!! アタシの身体が動かないぃぃい!!」

「………とりあえず、呪縛魔方陣だ。外せない魔法を使うからな」


 俺の使える魔法は、《死刑執行キル・エクスキュージョン》のみ。名前の通り、大抵は死を免れない。破壊の限りを尽くす魔法。………ただ、それだけの威力でなければ、ケガを負わすことも難しいハズだし、もしかしたら助かる可能性もあるかもしれないのだ。

 なんせ、俺の魔力属性は闇。闇は闇を喰う。強すぎる光には、消される。つまり、リエナの心の光が強ければ……闇である大きな“嫉妬”部分だけが消え、光である人間に近いリエナが残るのだ。

 ただ、リエナは元々が魔物だ。本質が、アレなのかもしれない。実際、アレはそう言った。………それでも、俺はリエナを信じることしか出来ない。助かったとしても、魔物である彼女がどうなるのか、全く分からないさ。だけど、やるしかない。

 だって俺は、リエナの嫉妬に応えて、彼女を好きになることは出来ないから。せめて、殺すなんてマネはしたくないんだ。


 俺は決心した。足裏に大きめの魔力球を創り、上空に吹っ飛ぶ。そして魔法反射で軽くホバリングしながら魔方陣の直上に移動し、詠唱を始めた。辺りに響き渡る、執行人による咎人への罪の確認。そんな詠唱。


「《――――――――――死刑執行キル・エクスキュージョン》」


 長い詠唱を終え、そして放たれる、真っ黒い魔力の奔流。それは、全てが魔方陣へ、リエナの元へ降り注いだ。

 響き渡る轟音。ルナールが、魔方陣の周りに思わずシールドを張ってしまうほどの破壊能力。地面の砂を巻き上げ、シールド内では、もうもうと砂煙が立ち込めている。…………やっぱ、いくら魔物でも、これで生き残ることは出来ないんだろうか…。


 地面に着地した俺に襲いかかってきたのは、大量の魔力を消費したことによる激しい倦怠感と、やはり激しい後悔。押しつぶされそうになりながらも、押しつぶされるわけにはいかない。もし殺してしまったという結果であっても、それは俺が一人で受け止めるべきだ。俺の責任なのだから…当然だ。


「レイ…。一人で抱えこまないで。あたしのせいでもあるよ………二人で、償おう?」


 そんな俺の決心を察したのか、セラフィが俺を気遣うように声をかけてくれた。


「………セラフィ。ありがとな。……でも、まだ死んだかは分からないんだ。最後まで、希望は捨てない」

「…そうね」



 そして、砂煙が晴れた。


「レイっ! あれはリエナさんじゃないか?!」


 魔方陣の近くまで行って、様子を見ていたジュリーの声。リエナだって? 本当に、大丈夫だったのか?


 俺は思わず影走りを発動して一瞬でジュリーの横に並び、俺のせいで出来たクレーターをのぞきこんだ。もう魔力量がほとんどなく、くらくらするが関係ない。


 そこには、ボロボロながらも、息をしているらしき……人間状態のリエナが横たわっていた。


「ルナール!! 治療っ!!!」

「わかってる!」


 ………助かってくれ。お願いだから、助かってくれ…!


 とうとう魔力が切れ、薄れゆく意識の中、俺はとにかくそれだけを願った。



怪しいリエナさんは、魔物だったようです。


ちなみに、魔獣と魔物の違いは、獣か獣じゃないか。それだけだったりします。


え? なんで人形体なのに魔人にしないかって?

そりゃ、魔人ってもっともっと強いイメージだからですよっ!


……まあ、柚雨の勝手なイメージなんですけどね。




それでは、また次回っ(^^)ノシ

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