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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
移動の最中、面倒事の章
55/84

暴走と砂糖。

砂糖注意報を発令します(笑)

Side Ray. ~レイ・サイド~


 頭がぼんやりする。視界がぐらぐらする。

 全てがグニャリと曲がって………藍色の影だけがくっきりと、鮮やかに俺の頭の中に残った。


 この現象、なんだろう。……さっき飲んだ、リエナが淹れたお茶、なんか変な味がしたような気がする。あれは……あの甘い、甘い味は、一体なんだったのだろうか。


 ………考えるが、それ以上俺の思考は働かない。

 ただ一つくっきりと残る、愛しい藍色のことしか考えられない。………って、愛しい? なに言ってんだ、俺は。つか、“藍色”って誰のことだよ。…………ん? なんで“誰”って人限定にしたんだ? “藍色”って人のことなのか? 分かんねぇぇ!!!


 考えているうちに俺の思考はさらにぐらつき、視界はブラックアウトした。


 ……………

 ………

 …


 いつに無く清々しい。今日こそは、素直になってみせる。そしてセラフィに……。

 そう決意を固め、俺は立ち上がる。


「ど、どうしたんですかぁ? あっ、もしかして、も、もう効いてきて………あぁ~、まだです! 心の準備がまだですぅ~」


 あ? リエナは何を言ってるんだ? ……まぁ、どうでもいいか。俺はとにかくセラフィに逢わなければならないのだ。


「セラフィのところに行く。すぐにハルたちをこっちに送り込むから、待ってな」


 俺はそう言い残し、リエナが何か答える前に、先ほどセラフィが向かった川辺を目指すことにした。






「レイっ! ……え、レイ?」


 聞こえてくる綺麗なソプラノ。……俺が一番、聴きたかった声だ。


「セラフィ…」

「ど、どうしたのよ? なんか、様子がおかし…い!?」


 言い終える前に、俺はセラフィの手を握る。


「ついて来てくれ。少し、行きたいところがあるんだ」

「え? えぇっ?! な、なんなのよ、一体!!」

「いいから。………それとハル。覗き見の類は絶対すんな。リエナをあの場所に残してあるから、そこまで全員連れて戻れ。いいな?」


 俺はハルの返事も聞かず、手をつないだ状態のセラフィを促すように軽く引っ張り、歩を進める。


「ちょ、レイ! セラちゃんじゃないけど、様子がおかしいよ?!」

「なんか、へんなモノでも食べた?」

「なんだっていいだろ。……俺とセラフィの邪魔をしたくないなら、さっさと戻れ。ハル、ルナール、ジュリアスも、いいな? いや、文句は言わせない」


 俺の言葉に、何故か呆然とする三人を尻目に、俺はセラフィを連れてとある丘を目指した。






 目の前に広がるのは、たくさんの星が散りばめられた夜空。セラフィを連れてきたこの丘からは、立った状態で綺麗な星空を眺めることが出来るのだ。


 言うべきことは決まってる。ただ、いきなり言い出せるほど素直でもないから。……とりあえず、普通に会話から始めよう。


「セラフィの髪って、綺麗だよな。……まるで、この夜空みたいだ」

「いっ、いきなり、なな、なに言ってんのよ!!」


 顔が赤いよ、セラフィ。まぁ、そこも可愛い。


「夜空を映しこんだみたいに濃くて深い藍色。いや、夜空色って感じかな。……とにかく、綺麗だ」


 ゆっくりと。彼女の髪を梳いてみる。さらさらと流れるセミロングの髪。梳く度に広がる、セラフィの甘くて柔らかい香り。


「……れ…い…」


 潤んだ瞳で。熱を持った瞳で。セラフィは俺を見つめてくれる。


「……可愛いよ」

「…ほめたって……なにも出ないんだからね…」

「俺が勝手に引き出す。お前は、俺に委ねてくれるだけでいい…」

「な、なにを委ねれば……」

「心を。俺はお前の心が欲しい」


 言いながら、俺は片手でセラフィの身体を引き寄せる。唐突の行為に、セラフィはもぞもぞと抵抗を試みるが…。


「…嫌、か?」

「?! ……い、いや…じゃない……けど…!」

「嫌じゃないのか。そうか。なら続けよう」


 セラフィが少し大人しくなったのを良い事に、さらに彼女を引き寄せる。もう、今ではほとんど抱きしめているようなものだ。セラフィの柔らかい身体は、ほとんど俺と密着している。


「………はずかしい、よ…」

「俺は気にしない」

「……レイぃ……いつもと様子が違う…」

「いつも通りだ」

「違うもん……レイはこんなに積極的じゃ…」


 未だに心を委ねてくれないセラフィの迷いを完全に吹き飛ばすように、俺は強く抱きしめる。そして、耳元で囁くんだ。


「……好きだ、セラフィ。俺に応えてくれ…」


 びくんと彼女の身体が震える。


「………目を覚まして……もう、我慢できなくなっちゃうからぁ…」

「我慢なんかしなくていい」

「だって……だってレイがおかしいから……。もっと冷たいのがレイだよ…」

「それなら、俺はもっと熱くなる。お前にだったら、いくらでも熱くなれる」

「……素直じゃないのがレイだよ…?」


 確かめるように、俺がどういう存在か教えてくれる。ああ、確かに俺は素直じゃないかもな。それでも…。


「素直になろう。愛しいお前のために」

「…素直じゃなくて、ひねくれてて、あたしのことなんか眼中にないように見えるのがレイだよ……」

「これからは変わる。お前のことだけを見ていよう」

「……それでも、ホントはあたしのことを気にかけてくれて、すごく優しいのが………レイだよ…」


 嬉しい。セラフィは、俺のことをちゃんと見ていてくれたようだ。


「ああ。これからもお前にだけ、優しくいよう」

「……みんなに気がないみたいで…ホントはみんなを気にかけるのがレイだもん…」

「分かった。ハルもルナールも、仲間として気にかける。もちろん、ジュリアスとリエナも、同行中は気にかけよう」


 セラフィは答えない。………俺は、お前の声が聴きたいのに。


 しばらくして、俺のそんな不満には全く関係なく、セラフィは口を開く。


「違う……レイはこんなんじゃない! 素直じゃなくて、口を開けばすぐ文句で、悪口多くて、毒ばっか吐いて………それでもホントは優しいのがレイだもん!! たまに不器用な優しさを見せてくれるのがレイだもん!! こんな風に直接的に言ってくるレイなんて、レイじゃない!!!」


 !!? 俺は衝撃を受けた。俺が、俺じゃない? いつもの俺ってどんな感じだったか? ………思い出せない。俺は、どんな……。


 俺の思考は、ごちゃまぜになり、視界はぐらぐらと暗転した。


 …

 ………

 ……………


 再び、思考がクリアになる。


「レイ! レイっ!! どうしたの?! いやぁ!! 死なないでぇ!!!」


 ソプラノの声が頭に響き、そこでなぜか自分が目を閉じ、しかも寝転んでいたことに気付く。

 そっと目を開け、目の前にセラフィを確認。とりあえず起き上がって、そして先程の言葉にこちらも言葉を返す。


「……耳元でうるさい。俺は死んでねぇよ。つか勝手に殺すなアホ女ぁ!」

「……レイ…! レイだ!!」


 そう、俺はレイだ。………なんでそれで喜ばれなきゃならない? ここは怒鳴り返されるところだと思ったぞ?


「この毒舌とめんどくさそうな表情!! これがレイよ!!」


 そう言って、セラフィは抱きついてきた。って、オイ! なにしてんだこの女は?!


「っと、いきなりなんだよ! 抱きついてくんな!!」

「そんなこと言っても、抱き締めてくれるのがレイだもん!!」


 …………そうでもしないと、またぶっ倒れることになるからな。別に、抱き締めるのが嬉しいワケじゃねぇから。マジで。いや、ホントだからな?!




「……やっぱり、こっちのレイの方がいいよ…」


 少し落ち着いたようで、今度は抱きつく力を軽く弱め、上目遣いで俺を見ながら、呟いた。


「こっちの俺が、どうしたって? つか、こっちとかってなんだよ」

「……覚えてないの? レイ、すごく積極的だったんだから。……あと少しで、完全に甘えちゃうところだったんだよ?」


 ………えーと? マジで俺は何した?? 俺が意識を失ってる間に、なにをしたぁぁ?!


「覚えてないんだ。あんなコトまでしたのにね?」


 あ、あんなコト? ヤバイ、なんか俺、やらかした?! ヤバ過ぎる、ヤバイヤバイヤバイ!! どれくらいヤバイかって言うと、マジヤバイぃぃ!!!


「俺……何した?」

「忘れたんならそれでもいいよ。………ただ、責任は取ってよね」


 せっ、責任!? ヤバイヤバイヤヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ…………。


 俺の思考がパニックに陥っていく中、セラフィの悪戯っぽい笑みが目の前にあることに気がついた。


「ふふっ、冗談よ」

「なっ! てめぇ!! 俺を騙しやがったのかボケェ!!」

「……でも積極的だったのは本当だよ? 自分がやったことくらい、覚えててほしいな」

「ま、マジか…。わりぃな、なんか意識がはっきりしなかったんだ。……なぜか、“藍色”のことしか考えられなくなって…」


 “藍色”……藍色。藍色?

 俺は、目の前にいるセラフィの髪を見る。……藍色。


 !!?? お、思い出した…! これはこれでヤバイじゃねぇかよ!!


「わっ、忘れろ!!」

「思い出した? だけど、いやよ」

「なんで?! あれは……ほとんど俺の本心じゃねぇし…」

「じゃあ……レイは抱きつかれるのも抱き締めるのもやなの?」


 …………なんで今度はコイツが積極的になってんだよ。


「……嫌じゃねぇ……けど…今は止めとけ! ………ついさっき、やりすぎただろ」

「今のレイと、さっきのレイは違うもん」

「確かに違うけど……さっきまでずっと、意識ボロボロだったけど……それでも、性格が違うだけで俺には変わりないワケで。……その記憶も、双方に残ってるワケで…」


 正直、自分があんな恥ずかしい言葉を吐いたという記憶は、さっさと忘れ去りたい。


「でも……さっきのであたし……少し…あの……緊張したけど……これだけで終わりたくなくって…。今度は、ちゃんと意識のあるレイに……」


 落ち着き無くきょろきょろしながら、それでもたまに俺と視線を合わせてきて。その度に慌てて視線を外して。……すごく緊張してるのがよく分かる。


「あぁ、もう………不本意だが、少し……少しだけ、抱き締めてやるよ」


 なにも答えず、代わりにセラフィは嬉しそうに顔を上げ、表情を輝かせた。

 ………まぁ、普通に可愛いよ? うん、あの恥ずかしいこと言ってた時の俺も、意外と本心で喋ってたのかもしれない。うわーお、怖。

 でも実際、抱き締めるとフワリと香るセラフィの甘い香りは心地よくて……もう少し、抱き締めてやってもいいかなって。そう思えた。



「セラフィ……今日は、悪かったな」

「…ううん。気にしてない。リエナさんが、女性として魅力的ことぐらい、分かるから…」

「いや、それでも…悪い。俺は、確かにお前を傷つけた」


 俺の言葉に、セラフィは軽く頭を上げ、悪戯に微笑む。


「じゃあ、罰として……もう少し、このままで」

「………そんなんじゃ、罰にならねぇぞ。だから、お前の気の済むまで……このままでいい。いや……このままで、いさせてくれ…」


 セラフィは答えず、代わりに、抱きつく力をさらに強め、どこか嬉しそうに身をよじらせた。


 ……あぁ、やっぱセラフィは俺にとって大切なヒトだ。


 またケンカしたとしても。普段から言い争いばっかの関係でも。俺はセラフィのコトが……好き、なんだろうな。






 この時俺は、まさかリエナが俺たちのこの様子を見ていたなんて……そして、それを見た彼女があんなことになるなんて、全く思っていなかった…。




いや~、レイが壊れましたね、うん。


やっちゃった感は否めません(笑)



そして、リエナが本格的に怪しくなってきましたねぇ。



これから、どうなるんでしょうか。



それでは、また次回っ(^^)ノシ

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