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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
移動の最中、面倒事の章
54/84

王子様の謝罪

レイとセラフィの仲直りはまだです。


とりあえず、ジュリーくんがアクションを起こすようですよ。



それでは、本文をどうぞ!

Side Hal. ~ハル・サイド~


 あぁ……過ごしにくい。僕とルナールであれやこれやと弁明したおかげでセラフィーナを馬車に連れ戻すことに成功したけれど、怒った彼女には取り付く島もない。


 馬車内を包む緊迫した空気に、リエナはおろおろとし始める。


「あのぅ、私……降りますね」

「あっ、いや……」


 レイがとどめるも、横目でセラフィーナを見て、次に僕を見る。はいはいわかりましたよ。僕の出番です!


「えっと、リエナ……さん? また襲われたら危ないし、それに……怪しい人たちがうろついてるかもしれないし。一晩くらいは一緒に行動したほうがいいんじゃないかな?」

「うん、そうそう。ブルーリふぉがっ」


 おっかないルナールが余計なことを口走り、それをジュリアスがひっぱたく。そんなこと言ったらジュリアスが王子だってことがバレちゃうじゃないか!


「いたい」


 ルナールはぷうっと頬を膨らませてジュリアスを軽くにらむ。ジュリアスは知らん顔でリエナに言う。


「僕もその方が良いと思う。もし襲われることがあったら……」


 僕の責任かもしれないしな、と小声で付け足す。だがその声はリエナには届いていないだろう。


「で、でもぉ……」

「いいんじゃないの」


 セラフィーナが窓の外を凝視しながら言った。僕らとは一切目を合わせない。特にレイ、リエナには。そしてこう付け足す。


「レイのしたいようにすればいいじゃないっ!」

「なんだよ! なんでそんなに怒ってんだよ!!」

「まあまあまあ……ふたりとも、リエナさんの前だし……ケンカはよくないよ、うん」


 あり? いつもみたいにハモリのツッコミがない。それってほんとの本気で怒ってる、ってこと? 確かにさっきのレイは言いすぎだったと思うし、セラフィーナが怒るのもわからなくはないけど……ちょっと度が過ぎてないかな?


「じゃあ、お言葉に甘えて一緒にいさせてもらいますね」


 リエナはにっこり笑って(レイに向けて)言った。

 ま、今以上に、僕達に問題が起きなければ何だっていいんだけどね……。






「ん! おいしいっ!」


 今日の夕食はリエナが作ってくれた。お世話になりましたから、って。僕達はありあわせの材料しか持っていなかったけれど、それでも手際よく作ってくれた。これもう尊敬に値するよ。後でコツ教えてもらお。


「あれぇ、セラフィーナさん、お口に合いませんでしたか?」


 見ると、セラフィーナはほとんど口をつけていない。機嫌も、損ねたままだし。レイが謝らないから……かな?

 突然、セラフィーナはふらりと立ち上がった。僕は慌てて尋ねる。


「どこ行くの?」

「水汲みに行くだけ」


 その割には手ぶらだよ? そのことにはかまわずセラフィーナはさっさと草木をかき分け川辺へと向かう。日も暮れてるし、一人にするのは危ないよね。ここはレイの出番……のはずだけど、当の彼は複雑な表情でセラフィーナの後ろ姿を見つめていた。仕方ない、僕の出番だ!


「……僕も、行ってくるね」

「まって、わたしもいく」


 僕が立ち上がると、隣にいたルナールもついてきた。僕らに背を向けていたリエナがくるりと振り返る。


「あ、お茶淹れたのにぃ。じゃあレイ、どうぞぉ」


 渡されるがまま、レイはリエナからカップを受け取る。カップからは温かな蒸気が立ち上っている。

 残されたジュリアスはレイたちと僕たちを交互に見て何か訴える仕草をした。僕はそんな彼に、「任せた☆」という意味を込めた笑いを贈ってセラフィーナを追った。






「セラちゃんどこ行ったのかなぁ」

「むこうに川ながれてる。そこにい」

「おっ、お、置いていくな!」


 取り残して来たはずのジュリアスが背後から僕の肩をがっちり掴んできた。ついてきてたのか。『任せた☆』つもりだったんだけどな。


「あれ、ついてきたの?」

「だって、あの二人と一緒だなんて、居づらくてしかたないじゃないか!」


 それは、そうだよね。僕もそう思う。ルナールがジュリアスに言う。


「はるの次くらいにへたれだね」

「うるさい! 一緒にするなっ!」


 僕の目の前でそんなこと言い合いますか……ははは。もうヘタレって言われることに慣れちゃったよ。……はっ! 脱・ヘタレのこと忘れてた! そうだよ、ヘタレを脱するために、体を鍛えるんだった。そういえば、ジュリアスが特訓させてくれって申し出たときに、レイが何か言ってたよな?


「ね、昼間レイに何か言われてたよね。あれって何?」

「あ……そ、それは」


 何か言いにくいことなのかな? だったら言わなくてもいいんだけど……。


「僕がアーヴィン家のことを言ったのを謝れ、って」


 あー……そうでしたか。レイも、それを条件に出すなんて、よく考えてるなあ。それって、セラフィーナを大事に思ってる証拠じゃん。


「ジュリー、それ、あやまんないとダメ。家族たいせつだから。わたしも、まだお母さんすきだから」


 ルナールは、実母を捜すために僕達の旅に同行することを決めた。家族を大切に思う気持ちは、ルナールも強いのだと思う。


「……わかった。僕も短時間だけど皆と一緒にいて、考え方が変わった気がする」

「がんばって」

「水音近いから川はすぐそこにあるはず……あ、あれ、セラちゃんじゃない?」


 目を凝らすと、薄暗い中に、座り込んでいるらしきセラフィーナが見えた。僕は、ジュリアスの背中を押す。がんば!






「せっセラ、フィーナ……さん」

「レイっ!? ……なワケないよね。そんな変な呼び方しないし」


 ぱっと振り返ったが、ジュリアスの姿に落胆するセラフィーナ。期待はずれ感が漂う。が、頑張ってジュリアス! 負けないでジュリアス! 僕とルナールは少し離れた木の影から応援する。


「……すまなかった」

「え?」

「その……レイに言われて気付いた。ひどいことを言ってしまった。……すまない。でっ、でも今謝ったのはレイに言われたからじゃなくて、僕が謝りたいから謝ったんだ。だから……」


 途中からしどろもどろな状態に陥るジュリアス。


「どうせそこの人達の差し金じゃないの?」


 セラフィーナはあっさり僕達と目を合わせた。あはは……ばれてましたか。でも謝れっていったのはレイだよ? 僕とルナールは茂みから出る。


「あは……バレて」

「リング、つけてないの?」


 僕の言葉を遮ってルナールが、昨日までというかさっきまで身に付けていたはずのルビーのチェーンがないことに気付いた。


「着けてるけど……」


 セラフィーナは服の下に隠していたチェーンを取り出して眺める。レイとお揃いのリングチェーン。


「……バカ」

「え?」

「何よぅ、ニヤニヤしちゃって! ただの可愛いくて、スタイルよくて、家庭的な女の子なだけじゃない! レイの馬鹿ぁ!!」


 あぁ……俗にいう、ヤキモチってやつなのでしょうか? えーと、こういうときは何て言ってあげたらいいのかな?


「えーと……もやもやしてるならさ、ばちーんと一発、殴っちゃいなよ! そしたら、さすがのレイも目が覚めるって!」


 うぅ、慰めるにしてもさすがに無茶ありすぎたかな。しかしセラフィーナは思いの外ノッてきた。


「そう……ね! イライラはぶつけたほうがすっきりするかもだしっ!」


 うわっ、レイ逃げて超逃げて!

 さっきとは打って変わって、セラフィーナは勢いよく立ち上がった。ひとまず元気になったからいいか……その原動力が怒りという感情だったとしても、ね……。セラフィーナは茂みを薙ぎ倒して来た道を戻る。僕らもそのあとを続く。


「レイっ! ……え、レイ?」


 セラフィーナが立ち止まる。僕らが背中ごしに様子を伺うと……レイがいた。

 訂正しよう、少しおかしなレイがいた。



様子がおかしなレイ。


一体、どんな風におかしいのでしょうか。



それでは、また次回っ(^^)ノシ

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