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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
移動の最中、面倒事の章
53/84

意地を張って……。

レイがもどかしい! セラフィがもどかしい!


………そんな回です。



それではどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 ………激しすぎて分からない、か。その可能性は考えてなかったな。

 身体を動かすのは自分じゃないとはいえ、動いているのは自分の身体なのだ。つまり、高度な動きをよりリアルに体験できるわけであって、それが経験にもなると思ったんだがなぁ。


「ヘタレは、どこまでいってもヘタレか」

「うぅ……ごめん」

「謝るな。なんか、全力で考えた修行方法が、かなり虚しいモノに感じてくる」


 とはいえ、高度な戦闘を経験するのに一番適した方法であるコトは事実だろう。たまには、模擬戦を行ってみるのも手だな。それに万全な身体ならば、ヤツはおそらく俺より強い。つまり、俺の修行にもぴったりなワケだ。


「ごめん…」

「だから謝んなっての。………だがまぁ、とりあえずは身体を鍛えるトコから始めた方がよさそうだな。と、いうワケでこれから毎日、腕立てと腹筋と背筋を三百回ずつ。それと剣の素振りは千回だ」

「うぇえ?! む、無理だよ!! そんなに続くわけないっ」

「無理じゃない! お前なら出来るさ! 信じてるぞ、相棒っ」


 そう言って、背中をバンバンと叩く。


「……うん! 僕、頑張るよ! レイの期待には応えないとねっ」


 ………やーっぱ、単純なヤツだな、ハルは。






 あの後、俺たちはすぐに馬車の用意を始め、乗り込んだ。やはり歩きと馬車は進みが違い、馬車は歩いていた時とは比べ物にならないほど距離を稼げる。


 ………そして今。またもや面倒事パレードの時間がやってきた。


「た、助けてくださいぃ! だ、だれかぁ!!」


 今、馬車を走らせている街道のその先。大声で助けを求めながら走ってくる女性。どうやら、魔獣に追われているようだ。

 ……………なんか、このパターン多くねぇか? 魔獣じゃないとはいえ、ハルも追われてたし、セラフィだって魔獣に追われてたし、ミアルカンドまで運んでくれた行商人、セインだって魔獣に追われていた。俺らが追われたこともあったな。あの時のハイ・ワイバーンは、マジでヤバかった。


「どうやら、またイベントらしい。魔獣蹴散らすイベントが多すぎるのも気になるけど、とりあえず片付けてくる」

「ん、気をつけてね、レイ」

「きをつけて」


 どうやら、セラフィとルナールにとって、俺が魔獣を蹴散らしに行くコトは当たり前のコトになっているようだ。


「あ、僕は、どうすれば…?」

「あー、お前はまだやるべきじゃない。それに、あんなのはすぐにカタがつくしな」


 ハルの問いにもおざなりに返しておき、俺は馬車から飛び出した。


「ちょ、お前! 僕の護衛はどうするんだ!! それに、あんなに魔獣がたくさんいたら…!」

「大丈夫だっての、ジュリー。一応、そいつらだってやる時はやるさ。あと、俺だってすぐに戻ってくる」


 全く、心配性な王子様だ。あんなの、大したコトねぇって。ただ一応、安心させるために、髪をわしゃわしゃと掻き混ぜておいた。


「ほら、さっきの裏ハルとの模擬戦、見ただろ? 俺は、あんなのに負けない程度には強いって。だから、心配すんな」

「べ、別にお前の心配をしてるわけじゃ…!」

「はいはい、分かってるっての。……んじゃ、また後でな」


 さぁて。今度の被害者さんは、どんなヤツかねぇ。






 やはり、大量の魔獣を片付けるには、起爆札に限る。俺はダガーに起爆札を装備し、追われている女性の少し後ろ、魔獣だけに爆風が及ぶように計算して、ダガーを投擲した。と、同時に、追われている女性のもとまで影走りで近づき、脇に抱えてもう一度、影走りで爆風から遠ざかった。


「おい、大丈夫だったか?」


 俺は道の脇にその女性を下ろし、とりあえず声をかけてみた。


「ふぁ、ふぁい! うぁ…! じゃなくて、はい。だ、大丈夫ですっ」


 なにもそこまで慌てなくても。


「もう、魔獣は倒したっての。心配する必要ねぇぞ」

「え?! あ、あのっ、ありがとうございましゅ! あっ、またかんだ…」


 滑舌悪いのか? 噛みすぎだ。しかも、噛みまくってるのが余程恥ずかしいのか、少々顔も赤い。


「ふふっ、おもしれぇな、お前」


 それに、結構可愛い。豊かな深緑の髪に、若葉色のぱっちりとした瞳。赤面し、瞳も軽く潤んでいて、なんか可愛い。そして、出るべきところはしっかり出ている、スタイルのいい女性だ。

……セラフィもスタイルが悪いわけではないが、ここまで大きくはない。いや、セラフィもいいけども。ちょうど良いと言うかなんと言うか……って、何言ってんだ、俺は。

 んで、見た感じでは、この女性は俺より二、三歳年上ってとこかな?


「そ、そうですか? えへへ、ほめられた」

「それはいいとして、とりあえず一人で魔獣に追われてた理由を説明してもらうぞ。一旦、俺らの馬車に来てくれ」

「ほぇ? は、はい。分かりました」






「申し送れましたぁ。私の名前は、リエナ・ローウェンといいます。よろしくお願いしますね」


 深々とお辞儀をする、深緑の髪の女性……もとい、リエナ・ローウェン。


 あの後俺たちはすぐに馬車へ戻り、現在は自己紹介をしているところだ。


「僕は、ハル・カーストウッドだよ。よろしくね、リエナさん」

「ルナール・ラグシェンカ。おねえさん、よろしくおねがいします」

「僕は、ジュリアス・ミアル………いや、ジュリアスだ。よろしく」


 む、ジュリー。さりげなく王子として名乗りかけたな。まーたコイツは自ら身分を明かしかけるとは。下らん身分意識は、さっさと捨ててほしいもんだ。………セラフィにも、まだ謝ってないしな。

 まっ、とりあえずは俺も自己紹介だ。


「んで、俺がレイな。よろしく」


 手を差し出し、握手を求める。それに対し、リエナ・ローウェンも笑顔で応じてくれた。

うん、やっぱり少しばかりしっかりした女性のが、いいな。好感が持てる。俺の好みは、おしとやか系なのかも……。いや、そうでもねぇか。もっと怒鳴りあえる関係の方が……って、それってセラフィか? うわー、やべぇ、顔赤くなってきたかも。

 それとさりげなく、リエナ・ローウェンまで顔が赤いのはなんでだ?


「わ、私のことは、リエナって呼んでほしいですぅ」

「お、おう。分かった、リエナ」


 いかん。セラフィのこと考えたせいで、なんか口調が慌てた感じになっちまった。

 …………ん? というか、なんでセラフィは自己紹介してねぇんだ?


「セラフィ? どしたよ? 紹介は?」


「………セラフィーナ・アーヴィン」


 あっるぇ? なーんか不機嫌だぞ?


「え、えっとぉ、セラフィーナさんは、どうして怒っていらっしゃるのでしょうか?」

「分からん。まー、気にすんな。そのうち元に戻る…ってか、俺が戻す」

「は、はい。分かりました」


 一応、リエナは、不機嫌なセラフィを心配してんのかねぇ。結構、優しいのかもな。



「んで、セラフィ。機嫌なおせ。……なんか嫌なコトでもあったんなら、俺にちゃんと言えよ?」

「…………レイなんか知らないもん。ずっと、リエナさんといればいいでしょ」


 なぜか、セラフィの不機嫌の元凶は、俺にある感じの雰囲気だ。……俺、なんかしたか?


「あぁ? なんで?」

「ちょっと握手したくらいで顔赤くしちゃってさ。……レイなんか、大ッ嫌い!」


 それは勘違いだろ! 別にリエナが原因なワケじゃねぇよ!! ……そんな感情が、俺の口から大きな声となって溢れ出してくる。


「してねぇよ! それに、俺だってお前のコトは嫌いだねっ!! うるさくってしょうがねぇ!!!」


 実際は赤くしていた。とはいえ、あれは握手が原因じゃなく、セラフィのコトを考えたせいであって。それにキレられるのは、些か納得がいかなかった。

 ……だから、怒るつもりもないのに、怒鳴ってしまう。


「なっ! もう、最悪っ!! レイなんか、どっかいっちゃえ!!!」


 俺が怒鳴ったのに反応し、セラフィも怒鳴り返してきた。………そして俺は、そうしたいとは微塵も思っていないのに、彼女を冷たく……しかし怒鳴るように、突き放す。


「なら、てめぇがどっか行けよ!!」

「…もうっ! 知らないっ!!」


 馬車から飛び出すセラフィ。

 あぁ……こんなこと言うつもりじゃなかったのに。セラフィが俺の元から離れるのは辛い。悲しい。嫌だ。

 そう思っているにも関わらず、馬車から降りて行ってしまうセラフィを引き止めることは出来なかった。


「ちょ、レイ! 言いすぎじゃない?」

「うっせぇ。ヘタレは黙ってろ」

「でもレイ。ほんとうにセラがいなくなっちゃうよ? いいの?」


 ルナールはそう言う。………そりゃ、よくねぇに決まってる。セラフィは、俺にとって大切なヒトだ。それでも、ちっぽけな俺は意地を張ることしか出来ない。素直には、なれないんだ…。


 何も答えない俺に、ルナールとハルは痺れを切らしたようで。


「わたし、追いかける。ちゃんとつれもどすから、まってて」

「僕もセラちゃんのトコに行くよ。………レイも、ちゃんと素直に謝った方がいいよ? セラちゃんのコト、大切に思ってるんでしょ?」

「…………知るか」


 ホント、ガキみたいだ。なんで、俺はこんなにも意地を張って、バカみたいに素直になれないのだろうか。

 セラフィを追いかけるため、馬車から降りてったハルとルナールを見ながら、ぼんやりとそう思った。



「ジュリー。馬車、止めるように御者に言っといてくれ」

「……わ、分かった」

「悪いな。……それと、俺もお前のコト言えないな。俺まであいつを傷つけちまった」

「………ぼ、僕は、ああいうぶつかり合いも悪くないと思う。それを乗り越えて、また仲良くなればいいじゃないか」


 ジュリーは、御者台の方へ向かいながら、そう呟いた。

 ……はっ、中々生意気言うじゃねぇか。だが…。


「……サンキューな」


 見えなくなった後ろ姿に、聞こえない感謝の言葉を。


 そして馬車には、俺とリエナが残された。


「あ、あの……すいません。私のせいで…」

「リエナは悪くない。全面的に、俺が悪いのさ。……不快な思い、させちまったよな? こっちこそ、悪い」

「い、いえぇ! だ、大丈夫です! 私の責任ですのでっ」


 ………はぁ、やっぱ性格はいいな。だが、それでもセラフィが気になる。



 なんで、あんなコト言っちまったんだろうか…。



やっぱもどかしいぃ~。


これは早く先に進めないと(笑)

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