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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
ヘタレとひねくれ、邂逅の章
5/84

あえて言おう。君の常識はズレている…!!

レイ・サイドです。


ハル(シノライン)に手合わせを頼まれたレイ。

一体どうなるのでしょうか?


楽しんでくだされば幸いです。



それでは、本文をどうぞ!


Side Ray. ~レイ・サイド~


 ああ、とうとうコイツは頭がイカれ始めたようだ。剣が話したいって、どういう状況だよ? 何がしたいわけ? そもそも、戦闘時と平常時のオーラの違いが激し過ぎるコイツは、大いに怪しい。怪しすぎる。

 少しでも関わることすら、ご遠慮願いたいね。


「よお、ガキ。シノライン様が出てきてやったぜ」

「いや、ガキはお前じゃね?」


とりあえず、そう返さずにはいられなかった。だってそうだろ? コイツの頭は、俺の肩ぐらいの位置にあるのだから。………まあ、殺気振り撒いてる今のコイツに、先の言葉を聞かれると面倒………よって小声で言ったわけだが。

だが、コイツのオーラは一気に変わった。戦闘時のコイツと、全く同じオーラ。あのヘタレさとは似ても似つかない、鋭く濃密な威圧感だ。


「ヘタレオーラと殺気じゃ、最悪の組合せだな」


それが率直な意見。もっと言えば、どちらの性格も俺は好かない。関わり合いになる気分になど、毛ほどもなれなかった。


 先程の俺の言葉(ガキ発言の方は聞かれていないハズだ)に、なにやら喚いているが、そんなことはどうでも良かった。

 俺の耳に一番ストレートに飛び込んできたのは、“手合わせ”という単語なのだから。


いやいやいや、手合わせ? 


うっわ、果てしなくめんどくせぇ。俺の予感は、やはり的中する運命にあるらしい。つまり…。


 ………こいつと関わり続ければ、容赦なく面倒事に巻き込まれる…!


 俺の勘は、確実にそう訴えている。そんな事態に陥ることだけは御免だ。と言うか、もうさっさと逃げたい。

 というわけで、俺の答えは至ってシンプルなモノとなり、吐き出される。


「全く以って興味ないね」


 いや、ちょっとは戦ってみたいとか、思わなくもないんだが……まあその気持ちがなくもないと、言えるような気がすると思い込んでやってもいい、というくらいには思っているんだが、それでも面倒事に巻き込まれ続けるのは御免だ。というか、マジ勘弁してくれ。俺は別に暇ってわけじゃねぇんだから。


 というわけで、俺は俺の最大の武器であるスピードを大いに生かし、全速力でその場から立ち去る。

 目指すは、コイツが逃げてきたであろう町だ。それなりの広さと治安の良さ(あくまで、傭兵にとっての)を持つ町……という噂を聞いたことがある。あそこまで行けば、撒けないこともないだろう。


 周りの景色がびゅんびゅん飛んでゆく。風を切る感覚が、先程の戦闘で温まった身体をちょうど良く冷やしてくれる。………まあ、この運動でまたすぐに体温は上昇するんだろうけど。

 後ろを全速力で追っていた気配をグングン突き放し、最終的には気配を感じることはなくなった。アイツ、諦めてくれたか?








 ………意外と遠かったな。こんだけ全速力で走ってれば、そりゃ汗だくにもなるだろう。まっ、俺はまだ余裕だけど。

 それでも、疲れたことに変わりはない。さっさと宿取って寝よう。



 …………あ、賞金首の野郎の首、持ってくんの忘れた。



 最悪だ。せっかく貴重な資金源だったと言うのに…。あと、一年分の生活費しかないじゃねぇか。

 あ? 充分多い? 生活費以外にかかる金がすげぇ多いんだよ! 傭兵ナメんな! 武器代バカになんねぇぞ! 武器は充実させるべきなんだよ!!




  広い町という噂だったが、そうでもないな。前にいた町の方が断然広いし………何より、この宿の質はどうかと思う。受付の態度、悪すぎだ。ああいうヤツは好かん。何が『部屋? ああ、適当に入っといて』だ。仕事する気、あるのかよ。

 まあ、部屋自体はそこまで悪いわけでもない。簡素気味ではあるものの、必要最低限の家具は取り揃えてあるし、どれも木製で落ち着ける。ベッドもふかふか、悪くないね。


 ……………よし、寝よう(・・・)


あ? まだ昼? カンケーねぇよ。眠い時には寝たいだけ寝る。それが俺の信条だ!(嘘)


……………

………


夢を見ていた。

 過去の俺の中に、現在の俺の意識が溶け込んでいる夢。過去の出来事を、もう一度自分の視点で見直しているようだ。思うとおりに動けないことから、過去と同じ行動しか出来ないのだろう……と、適当な予想を立ててみた。


 これは、いつの日のことだろうか? 正確には忘れたが恐らく、十二歳頃のキオクを垣間見ている? とある事情で両親に捨てられた俺を、救ってくれた(まあ、基本的にそう言ってもおかしくはない)師匠との修行風景。そんな夢だ。


「レイ、そんなことでは私を越えることは出来ないよ」


 いくらなんでも、師匠のことはちゃんと覚えてる。真っ白に染まった髪を短く刈り込み、無精髭など無いそれなりに温和な顔の、好々爺然とした俺の師匠。…………これがまた、戦闘時との変容の仕方が激しい人だった。いつもの穏やかなイメージが一変、歴戦の戦士の表情に変わるのだから。


「慌てなくてもそのうち越えてやるさ。んで、あんたの姓を受け継いでやる。一応、それが俺の目的ってことになってるらしいし?」

「……はぁ、お前には気合いというモノはないのか…」

「あ? あるに決まってんだろ?」


 瞬間、過去の俺は全速力で背後に周り、ダガーを首に突き出した。


 ………あぁ、これが効かねぇんだよな。やっぱ、不意討ちは強いヤツには通じない。


 首の皮一枚の所で寸止めするハズだったダガーは、師匠の指の腹で完全に掴まれ、止められていた。


「ふむ…不意討ちとは悪くない。だが、もう少し狙い澄ましてやるべきだよ。そんなことでは、やはり私を越えることなど…」


 む…景色が歪む。言葉が聞き取れない。なんだ? やはり夢、思い通りにはいかんな。

 暗転する視界。霞む視界。揺れる、揺れる。うわ、気持ち悪っ。………つか、なんでこんなにはっきりした意識で夢を見ないといけないんだ?


 混沌とした視界はやっとのことで安定を取り戻し、目の前にはベッドの上で弱りきった師匠が。………もう老衰。師匠はこの時、助からなかった。


「おい。こんなとこで死のうとしてんじゃねぇよ…。まだ俺はあんたを越えてねぇぞ」


過去の俺は声を震わせて、師匠に声をかけていた。…………滲む視界は、決して涙のせいなんかじゃないハズだ。


「……いや、レイは充分、に……私を越え…た。だから…名乗りなさい、私の姓…を。今日……か…ら、お前の名…は、レイ・アルフォード……だ」


 アルフォードという姓。親に捨てられた時に、元の姓を捨てた俺。だからこそ求めた、新しい姓。確かに受け継いだが、まだ堂々と名乗れないんだ。


―――――だから、俺があんたを越えたと確信するまで、俺はただの『レイ』だ。

 

 以前と同じ決意を固めた。それが俺の名前の由来。………姓を教えない理由。



 ?! なんだ??! 先程とは比べ物にならない視界の歪み。そして先程にはなかった、ゴンゴンっという轟音。一体なにが起こっているんだ?

 …………と、ここまで考えて、俺はいつの間にか目を覚ましていることに気がついた。それと同時に、先程の轟音は扉を叩くノックの音だと気がつく。


「今、出る。だからそんなに激しくノックすんな」


 とりあえず返事をしておき、後頭部をガリガリ掻きながら扉の方へ向かった。

 扉を開けた先に待ち受けていたのは…。


「あ、こんにちは! 隣に宿をとったハルといいます。よろしくお願いしま………って、あれ? もしかして、えっと……そうだ! レイくん?!」


 ………………問答無用で、扉を勢いよく閉めた。鼻っ柱を激しくぶつけたのだろう、扉一枚を隔てて、痛そうな呻き声が聞こえてくる。……が、そんなことは関係ない。ここで一番言うべきことは…。


「なんでここにいる? というか、何故(なぜ)に挨拶? 引越しの挨拶的な? 普通しねぇよ、宿では! もっと常識持てよ! もしこれが常識と思ってんなら、お前の常識はズレてる! ズレ過ぎだ!!」


 扉の向こうに声をかけ、それだけで満足して鍵を閉める。



―――――面倒事が歩いてやってきた。その瞬間だった。




レイくんに『ひねくれ』属性だけでなく『巻き込まれ』属性や『ツッコミ』属性が付加された?瞬間でした(笑)


さて、次回はハル・サイドです。

よろしくお願いします!


それでは、また次回(^^)ノシ

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