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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
移動の最中、面倒事の章
49/84

あぁ、今日の夜空も綺麗だ…。

刺客の襲撃に遭うパーティ“アカシア”の面々。


さて、どのように蹴散らすのでしょうか。


さらに、王子様に軽く傷つけられたセラフィのケアに出るレイ。


二人は今回、どんなニヤニヤ展開を…(笑)



…というような回です。


それでは、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 そうか、後継者争いに巻き込まれたワケね。うん、分かる分かる。このアホガキが王子様(笑)だってコト、それに護衛が途中で消えてったってことまで考えれば、なんらかの妨害を受けていることくらい分かる。

 んで、この襲撃。アホガキの王位継承権は、さりげなく二位にある。王位継承権第二位というヤツか。その立場に、兄貴のブルーリオとかいう王子を支持している過激派が危惧の念を抱き、弟のジュリアス(アホガキ)を暗殺しようとしたってワケ。


「マジで、面倒事に好かれてんのな」


 呟いても、襲撃を受けている事実には相違ない。敵は五人で、こちらの戦闘員は四人…? と言えるかどうかの危うい面子。……まぁ、やったるしかねぇよなぁ。


「お前たちに罪はないが、ブルーリオ王のため、ここで死んでもらう! 覚悟せよ、傭兵の少年少女よ!!」


 どうでもいいけど、コイツらアホと違うか? 王子を殺すんなら、こんなド派手に攻めないでキッチリ寝こみ襲ったり、旅人として近づいてなんだかんだで旅に同行して、こっそり食事に毒を混入させたり、もっとマシな手を考えろって。


「まぁ、こっちの方が護衛はしやすいけどな。……さて、襲撃者ども。ここで死ぬか、逃げるか。どちらにしたい?」

「調子に乗るな、ガキぃ!!」


 扱いやすいことで。……引っかかったバカは一人であるものの、そいつは愚かにも一直線に、俺に向かってきた。

 ………俺は少し体位をずらし、拳を鳩尾(みぞおち)に軽く叩き込むだけでよかった。それだけでそのバカは気絶。他の四人は呆然としている。


「お前ら、バカなんじゃねぇの? こういう時の殺しってのは、暗殺が一番なワケ。バカみたいに正面から向かってきたら、予想外の護衛とかがいたりするワケ。分かるか? お前らじゃ、俺らには勝てねぇの」

「ふ、ふざけるな! そいつは、俺たちの中でも一番弱い下っ端だ!!」

「そうかい。じゃあ、これを見てもそんなこと言えるかねぇ。………セラフィ。召喚」


 白狼は常識的に考えて、ギルドランクD程度の実力を持つ傭兵が五人で討伐する魔獣だ。んで、さっきの刺客はギルドランクEがせいぜい。……まぁ、結果は予想できるよな。


「え? あっと、うん、分かった!《リア、お願い!》」


 セラフィの適当呪文によって現れる魔方陣。そして、そこには立派な白狼、リアが。


「「「「白狼っ!?」」」」

「こんぐらいで慌てないで欲しいねぇ。あのセラフィは、まだまだつえー魔獣を山ほど召喚可能だぞ? さぁ、逃げな。そして伝えろ。ジュリアス・ミアルカンド・シャンパイクは王位を継ぐ気はないと。………さもなければ…」


 俺はグレアムのトコでもらったセラフィ用の武器、二丁魔銃を取り出す。


「コイツで蜂の巣だ」


 刺客一人の足元を狙って、銃を発射する。激しい銃声と共に、鋭く固められた俺の魔力が射出され、ちょうど狙った通りの地面を抉る。

 おぉ、反動は強いが、意外と使えるじゃねぇか。……そのうち、セラフィに教えてやらないとな。


「ひぃっ!!」

「………つーワケで、消えろ。まだまだ放てるから。死にたくねぇだろ?」


 魔銃は、ほとんどグレアムが開発したようなものだし、市場に出回っているハズもない。つまり、この強力な武器の存在は一般に知られていないのだ。

 そして、人とは未知のモノに対して恐怖を抱く。さらには、恐怖とは伝染するものであって…。


「グゥ……今日のところはこれで勘弁してやる!! 明日にはもっと強い刺客を送りこむからな!! 覚悟しておけ!!」

「おーう、頑張りなー。暗殺の宣戦布告するバカどもー。あ、それとそこで気絶してる一番槍(笑)なバカも連れてけよー」


 白狼に怯えつつ、そして魔銃に打ち抜かれるのを恐れつつ、バカ五人組は飛ぶように走り去っていった。

 俺はそれを見届け、馬車に戻る。………なんか、皆の視線が痛い。



「あ? どしたよ?」

「なんかレイ……脅しとか上手いね…」

「相手はよわかったけど、おどしはうまい」

「っていうか、あたしはリアしか召喚できないわよ!!」


 あー、そういうコト。


「あのな。あれは別に脅しが上手いワケじゃねぇだろ、どう見ても。ありゃあ刺客がアホほど弱かっただけだ。それと、セラフィが召喚できる数を偽ったのは、もしかしたら信じるかなーという希望的観測だったワケだが、意外にも簡単に信じて、逆にこっちがびっくりだね。ジュリー、てめぇんとこの騎士って使えねぇな」


 いくら下っ端だったとしても、弱い。弱すぎる。


「う、うるさい! 強いヤツもいるし、あんなヤツら、知らない!! それと、勝手に愛称を作るな!!」


 あれ? ジュリアスだからジュリー。結構悪くねぇと思うけどなー。………嫌がるなら、これで呼び続けてやるかね。

 まー、それはともかく。


「はいはい、悪かったな、王子様(笑) んで、これからのコトだが……特に注意が必要だぞ」

「え? なんで?」

「ヘタレ、てめぇはバカか。あんなに弱いヤツらに、一応、第二位の王位継承権を持つ王子の精鋭護衛部隊を、一人ずつ消していけると思うか? おそらく、もっと他に敵がいる。……それも、さっきとは比べ物にならねぇ、つえーヤツ、もしくはヤツらが、な」


 驚愕する四人。………少し考えたら分かると思うんだが。






 その後、これからの護衛方法を軽ーく作戦会議しつつ、馬車での移動という暇時間を潰し、距離を稼いだ。それから夜まで、特に何事もなく野営の準備まで終え、食事も終え、四次元ポケット(笑)から取り出した簡易テントも組み立てた。

 あとはもう、寝るだけだ。


「さて、部屋割りは女子組とハル&ジュリーな。……俺は外でいい。それと、ハル。シノラインには今日は必要ないって伝えときな。俺がやっとくってな」

「へ? 必要ないって、何が?」

「言えば分かる」


 そう言ってハルをテントに押し込み、その後に入っていくジュリー(“ジュリー”と呼ばれてやはり不機嫌そうだった)を見届け、残りのメンバーにも声をかける。………あー、それと“アレ”もやらなきゃだよな。緊張してきた。


「ルナール、おやすみ」

「おやすみ」

「それとセラフィ。……今から、時間いいか?」

「えと、あの……うん…」


 顔を真っ赤にして、頷くセラフィ。…………それだから緊張するんだっての。

 そう思いながら見ていると、ルナールが…。


「セラ、がんばって」


 と、軽くガッツポーズを見せてから、自分のテントに引っ込んでいった。


「……な、何を、頑張ればいいのよ……ねぇ、レイ?」

「………そりゃ……知らん」


 もしかして、だが。俺をオトせって意味なら……自意識過剰だとは思うが……もし本当にそういう意味なら、ルナールはセラフィが俺に好意を持っていると思ってんのか、ねぇ…。

 そう考えると、異様に心拍数が上がってくる気がして、そんな状態を隠すように冷静を取り繕って、セラフィに声をかける。


「……さて、セラフィ。わりぃけど、ちょっと待っててくれ」


 そう声をかけ、武具屋のグレアムからもらったグローブの先から鋼糸を出現させ、辺りに張り巡らせておいてから焚き火の近くにシートを敷き、毛布を用意する。


「毛布、一つしかねぇから、お前使え」

「え、でも悪いから…」

「いいから。使え」


 俺はそう言って、毛布の横に座り込んだ。

 セラフィも、ぶつぶつと文句を言いながら毛布を被り、俺の隣に座った。まぁ、大人しくてなにより。だが…。


「……でも、やっぱりあんたの言いなりにはならないもん♪」


 そう言って、自分は毛布を被ったまま、俺の上に乗っかってきた。……こんのじゃじゃ馬がぁ!


「がぁぁ! 乗んなボケェ!!」

「やだもん♪ レイも半分使わなきゃダメ!」

「分かった! 分かったから退け! 早く!! 重いわっ!!!」


 嘘だ。ホントはむしろ軽いくらい。………ただ、ちょこーっとな、あー、柔らかい何かが、アレなわけで、退いてもらえると助かるワケ。うん、ちょいパニック。


「重くないもん! あたし、これでも軽い方なんだからね!!」

「はっ! 実際重いんだよ! いいから退け!!」


 そうでも言わないと、退いてくれなさそうで。……セラフィは、怒りながらも退いてくれた。

 あ、危なかった。俺の理性って、意外と軽く崩壊しかけるんだな…。


「で? レイはわざわざあたしをからかうために、ここに留まらせたの?」


 セラフィは、だいぶ怒りながら訊ねてきた。………ケアのつもりだったんだがなぁ…。

 まぁ、それでも俺から離れるわけでもなく、二人で毛布を使えるようにしてくれるし、本気で怒ってるワケでもねぇだろう。


「わりぃ。……ただ、やっぱり辛いだろ? 気になってな」


 ジュリアスの言葉。あれは、確かにセラフィを傷つけた。そう、思うんだ。


「レイ……。辛くなんかないよ。大丈夫だから」

「はぁ……強がんな。言ったろ? 『親に裏切られる悲しみぐらい、分かるつもりだ』って」


 セラフィが仲間になるちょっと前。リディスの領主を懲らしめた直後ぐらいの時。宿に避難させたセラフィに言った言葉だ。


「うん。……でも、レイも親に……捨てられたってことなの?」

「まー、そうなるな。ちなみに、俺はあの時……かなりぶっ壊れたよ。支えてくれる師匠が現れるまで、身の周りにある全てを捨て続けた。とにかく、捨てまくった。友達とも縁を切り、俺は自分の殻に閉じこもった。……まぁ、俺の場合はもう少し特殊な環境ではあったが、それでも、親に捨てられることが悲しいのに変わりはねぇんだ」


 特殊な環境ってのは、また追々な。……ただ、随分ひどかった、とだけ言っておく。


「………そう、ね…。悲しいよ。あたし、やっぱり要らないのかなって。そう思っちゃって。今日、あの子にあんなコト言われちゃって……また嫌な感情、思い出しちゃったよ…」

「悲しみは、消えるもんじゃねぇからな。……また、あの時みたいに泣いとくか?」

「…ううん。今は、泣く気分じゃない」

「怒るか? 怒鳴るか?」

「……それも違う」


 うーん、この場合はやはり、一人にしておいて欲しいもんなんだろうか。


「あ、でも……レイが気遣ってくれたコトは、すっごく嬉しいよ。……いつも、あんたはあたしのことなんか眼中にないと思ってたから」

「それは誤解さ。お前とは言い争いばっかしてるし、性格も合わねぇと思ってたけど……最近、そうでもないって思えてきてな」

「え、性格合わないなんて思ってたの? ……確かに、ケンカは多いけど……あたしは、結構接しやすいと思ってたんだけどなぁ…。レイになら、言いたいコトが言える。何も隠さなくていいような気がして」


 まぁ、言いたいこと言えた方がストレスは溜まんねぇよな。


「そう、か。……だけど、性格合わねぇって思ってたのも、ちょっと前までのハナシだ。今は……まぁ、あれだ、お前と居ると楽しいんだよ。………だから、その…あーっと……お前は…必要だ」

「え? えと、あの、ひ、必要?」

「ああ。俺には、お前が必要だ。要らなくなんかない。今のお前との繋がりは、俺にとっちゃ大切なんだ。たとえケンカが多くても……まぁ、ケンカ仲間として……絆が切れねぇってのもいいかもな」


 首からぶら下がったネックレスに通った指輪をいじくりながら、呟くように言った。確か、これには『着けている二人は絆が切れない』っていう言い伝えがあったハズ。……離れてほしくないから。ケンカ仲間としてではなく………いや、やっぱ認めんのは癪だ。これ以上考えんのはやめる。


「そっか……ケンカ仲間、ね」

「あー、やっぱ、変えるか?」

「ううん。今は、これでいいの。この関係で、いい」

「そか。………まぁ、そのうち、変わると思うから……あれだ、ちょい待っとけ」

「えと、その、うん…。待ってるよ? 絶対だからね?」

「お、おう」


 その後は沈黙だった。そのうち聞こえてくる息遣いが規則正しいものに変わった事に気付き、セラフィが寝たことを察した。


「………普通なら、ここでテントに帰すトコなんだが………やめとこう。ちょこっと、俺の湯たんぽになっとけ」


 なんとなく、だが。今は近くに居たかった。…………案外、セラフィのケアのためじゃなくて、俺がセラフィと居たかったのかもしれねぇな。

 なんて怖い考えが頭をよぎるのを感じながら、それでも俺はセラフィをテントに運ぶ気にはなれなかった。


「まぁ、運ぶのもめんどくせぇしな」


 うん、これを理由にしておこう。


 なんとなく恥ずかしくなるが、隣から感じるセラフィの温もりはやっぱり手放す気にはなれなくて。刺客のことを警戒しながらも、なんとなく幸せを感じ………そんな考えがやっぱり恥ずかしくて、とりあえず夜空を眺めながら時間を潰すことにした。


 あぁ、今日の夜空も綺麗だ…。




刺客、超あっさりー!


いや、まだ刺客の本命が残ってる!


あんな弱っちいヤツらだけでは終わらせないっす(笑)



それではっ(^^)ノシ

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