突然の襲撃のようです。
今回、王子様(笑)の名前が明らかになります。
それでは、本文をどうぞ!
Side Hal. ~ハル・サイド~
僕達は、王子だと名乗るちびっこに連れられて馬車に乗り込んだ。王子の隣に僕、その正面にルナール達三人が座る。王子が、狭いのは嫌だっていうからこのポジショニングになった。
王子が指示を出して、馬車がゆっくりと動き出す。
「そういえば、まだ名乗っていなかったな。僕はジュリアス・ミアルカンド・シャンパイク、次期王の弟だ!」
僕は外交に疎いから、隣国の王家のことはよくわからないけど、そんなに易々と名乗っていいのかな? 一国の王族が一人でふらふらしてるのも、変じゃない?
「僕はハル・カーストウッドです。それと旅の仲間のレイ、セラフィーナ、ルナールです」
「ああ」
「よろしく」
「ねーねー、なんで一人旅なんかしてるの?」
レイ、セラフィーナ、ルナールの順に……ルナールは疑問符が付いているけれど。ちょっ、タメ口ですかルナールさん。一応、王子とかいう人ですよ? この子はこういうところもマイペースで、ちょっとドキッとする。あ、ヒヤヒヤするって意味でね。だが、ジュリアスは機嫌を悪くする風はなかった。
「うむ、いつかは兄さまが統べる国だからな。兄さまの補佐のために僕はこの国の隅々まで見ておかねばならんのだ」
「その割には、平民がお嫌いなようで」
「レイっ」
セラフィーナがたしなめる。レイは小さく肩をそびやかす仕草をした。また機嫌損ねたら面倒だよ……からかってるだけとはいえ。
「護衛無しで旅を、ですか?」
「それが、元々は数人いたんだが……一人、また一人と居なくなってしまったんだ」
え……それって危ない雰囲気? 居なくなった、って護衛が逃げ出したってこと? それとも……殺された?
レイが口を開く。
「いなくなった……そいつらはおま、いや王子様に近しい人だったのか?」
「えーと、三人は知らない人だったんだが、一人は僕の側近だったぞ。でも全員が城の人間のはず」
レイは複雑な表情でなにやら考え込んでいるようだ。僕には到底わからないけれど。
「じゃあ、この馬車は? この馬とか御者とかは城の人じゃないの?」
セラフィーナの質問に、ジュリアスではなくレイが答える。
「御者が国派遣のヤツなら、傭兵ギルドに護衛を依頼する必要は無いだろ。少しはその頭使ってみろ」
「いっつも一言二言が余計なのよっ!」
ああ、また始まったよ……。もう、仲裁するの面倒だなぁ。え? それ言っちゃだめ?
がたがたっ。
「うわっ、何?」
馬車が一際大きく揺れ停止した。僕が疑問を口に出すと同時に爆発音が響く。馬車の窓から、外に火が上がるのが見える。
「火がっ!」
「なに!?」
「しゅ、襲撃?」
突然の出来事に動揺する車内。そしてもう一発、耳を裂くような音が響く。さっきよりすぐ近くだ。
「なになに、どっ、どうする?」
うわあああパニックだよどうするのっ? セラフィーナは今にも悲鳴を上げそうだ。ルナールはきょろきょろしてる。ああ、ルナール見ると落ち着くな。
「落ち着け!!」
レイの大喝に車内は静まる。そして興味本位で馬車から顔を覗かせたジュリアスを押し退けて、素早く外を見回す。
「引っ込んでろ! 多分、狙いはお前だ」
「なっ……!?」
そりゃまあ、僕達より王子様の方が狙われそうだよなぁ。僕達もいろんな事やってきたけどさ……。レイは一点を睨み付け、状況把握をしていく。
「黒服が……四、いや五人か。さっきの爆音は魔法弾だな」
「魔法弾?」
僕とセラフィーナ、そしてジュリアスは、こんなときでも揃って頭を傾げた。
レイは外を伺ったままルナールに話を振る。
「ルナール、説明」
「んと、魔法で火とか空気とか水をぎゅーって圧縮して投げて、爆発させるんだよー。わたしもできるよ」
おおー、ルナールがちょっと凄い存在に思える。って、そんな場合じゃないよね! てことは相手は魔法使えるってことじゃん!
「五人、黒服、弓矢、剣、ロッド……モロ暗殺者じゃねーか」
「「「「暗殺者ぁ!?」」」」
ジュリアスを入れた四人ハモリきました。流石のレイ(?)にも焦りが滲む。
「本ッッ当に面倒な王子だな!」
「僕のせいじゃない!」
「どうしようどうしようどうしよう!」
パニックに陥る中、それまでは器用に隠していたのだろう、僕でも察知できるような殺気が近づいてくる。
「ブルーリオ王よ永遠なれ!」
「ブルーリオ?」
王様、ってことは……? ジュリアスを見ると彼は恐怖に震えていた。
「兄さまの……名前だ」
兄貴ぃぃ!!
王子ジュリアスの兄貴一派が、刺客のようです。
それではっ(^^)ノシ