王子様(笑)
さて、王の息子だったクエスト依頼人の子供と、“アカシア”メンバーはどのように絡んでいくのでしょーか。
それでは、本文をどうぞ!
Side Ray. ~レイ・サイド~
こ の 国 の 王 子 ?
つまりミアルカンドの王子→金持ち→おだてる→「ははは、そうだろうそうだろう」→がっぽり♪
「これはこれは。失礼いたしました。先程のご無礼、お許しください。てめぇらも謝れボケぇ」
「すみませんでした、王子さま。あたし…いえ、私どものご無礼、どうかお許しください」
「なんで? ねぇ、それよりもこの子年下?」
空気読めぇぇ!!
「おいハル!! ルナールを一旦遠ざけろ!!」
「へ? うぇえ?! わ、分かった」
俺たちの態度の豹変についてこれていないのだろう。
しかし、ことは急を要する。なんせ…。
………今、俺たちには金がないのだ。欠片も金がないのだ。
大事なコトだから、二度言ったぞ? 覚えとけ。って、このネタをついさっき誰かが使ったような気がするのは、やはり気のせいか?
っと、そんなことより。
「王子。わたくしどもをお許しいただけるでしょうか…?」
軽くお伺いを立てておかなければ。金は欲しい。つか金だせや。てめぇのポケットにたんまり入ってることは分かってんだぜ。なんなら、全部のポケットをひっくり返してやろうかぁぁ!!
………………俺はチンピラか。
「な、なんだその態度の変化は?! 気持ち悪いから崩せ! せっかく敬われるのが嫌いだから傭兵ギルドに登録してるんだぞ!!」
あ? 敬われるのが嫌いだって? なら、自分から身分明かしてんじゃねぇよ。
「だいたい、依頼主は僕なんだ! それがどんな子供だろうと受けるのが一流ってもんじゃないか! これだから下賎の傭兵は困る。どれも貧相なヤツばっかじゃないか。黒髪な毒舌豹変金の亡者に、茶髪でヘタレで……えと、ヘタレなヤツに、無反応年齢気にする不思議少女に…」
うん、全部ネーミングセンスねぇよ? それに、金の亡者とか言われても全然気にならねぇ。……金がないのは事実だ。金がいる。
あ、だけどハルについては完全に的を射ている(笑)
そんなことを思っていると、王子様(笑)は、最後にセラフィの方を向いて言葉を吐く。
「それと……あぁ、君はもしかしてあれか? トレスフィニアで捕まったアーヴィン家の子供か? 親に捨てられたっていう。ふむふむ、なるほど。確かに捨てられそうな顔してるよ」
ブチッ!!
目の前が赤く染まる。怒りの色。セラフィを侮辱すんな…! 完ッ全にブチ切れた。こいつは、言っちゃいけねぇコトを言っちまったよ。
俺は目の前にいる子供の首を掴み、少しだけ持ち上げる。セラフィが声をあげる前に。
「てめぇ……! 今、なんつった…」
「おい、無礼だぞっ! 離せ!!」
「謝罪しろ…!!」
「なんで!」
「いいから謝罪しろっつってんだガキがぁぁ!!」
俺の声が響き渡る。…………さすがに、注目を集め過ぎちまうか。
「レイ……もういいよ…。なんで家の情報が他国にまで伝わってるかは分からないけど、もう気にしてないから…」
嘘だ。親に捨てられる辛さを、そんな簡単に乗り越えられるワケがないじゃないか。……俺も両親に捨てられたから、少しはお前の気持ちが解るんだ。
とはいえ、ここで騒ぎを起こすべきではないのも事実。
「………悪い、調子乗ったな。王子、ケガねぇか?」
「…はぁ…はぁ…ケガさせようとしたのは、お前じゃないか…!」
「えと、王子さま? レイは、仲間が侮辱されたからつい怒っちゃっただけなんです。許してあげてくれませんか? ……この通りです」
ハルは、そう言って頭を下げた。
「ふむ…………少なくとも君は、少しは高い身分だったようだな。じゃあ、君に免じてここは許す。……それと、予定の報酬以上のお金は払うつもりないからな!」
「許してくださって、ありがとうございます」
もう一度頭を下げたハルの肩を、ありがとうという意味を込めて軽く叩いておく。
その間に、依頼主の王子様(笑)はさっさと歩を進めて門を潜り抜けていった。おそらく、その先に荷馬車などがあるのだろう。
はぁ……傲慢な野郎だ。
身分で差別されて、あがめられるのを嫌うコイツが、自ら身分で差別して、平民を蔑む。……どうやら、すこーし撫でておく必要があるみてぇだな。ちなみに、この場合の“撫でる”は、“シメる”と同義だ。
「ハル。フォロー、ありがとな」
「へ? あ、うん。僕も役に立ちたかったから」
「おう、今回ばかりはお荷物じゃなかった」
実際、俺が暴走するのを止めてくれたのは非常にありがたい。
「それと……セラフィ。大丈夫じゃねぇだろ?」
「えと……ううん。大丈夫よ」
「……そうか。あー、そうだ。今夜、寝る前に少しだけ俺と会う時間作ってくれ」
高慢傲慢チビ王子(ネーミングセンスがないのは分かってる、分かってんだよ…)を軽くシメる必要もあるが、今最優先なのはセラフィのケアだろう。
「ふぇえ?! えと、あの、うん。……わ、分かった」
「おう、頼む」
なんでそんなに慌てたんだ? ………あ、夜って結構マズイ感じ?
「ねぇはる。レイとセラは、夜に仲良くするの?」
「うぇえ?! えと、あー、ちょこっと会話するだけじゃないかな? ね、レイ?!」
「お、おう! 当たり前だろうが」
なーんで俺も慌ててんだか。
それはさておき。
さっさと、気にくわねぇ王子様な依頼人のトコに行かねぇとな。また機嫌損ねたらめんどくせぇ。
「遅い! なにしてたんだ!!」
「おう、わりぃな王子様(笑) 少し話すことがあったんだ。ここは、王子様(笑)のひろーいお心で許してくれ。な、王子様(笑)?」
「…………なんか、無礼な呼ばれ方な気がするのは気のせいか?」
「気のせいだって王子様(笑) なぁ、ハル。俺は別に変な呼び方してねぇよな?」
ちょっとこの呼び方、ハマったわ。やっぱ熱く怒るよりも、冷静に少しずつ刺激して、逆撫でして、精神的に攻撃した方が楽しい。
「……レイ。ちょっと趣味悪いよ」
「テレパシー?!」
って、これで“実は喋ってましたパターン”はマズイ。
「レイ、ちがうよ。たぶんはるは、かおを見てはんだんした」
「うん、すっごく悪い笑みだったよ…?」
あー、ルナールにまで気付かれてたか。
「いやいや、そんなことねぇって。俺がそんな悪いヤツに見えるか?」
「「「見える」」」
いや、セラフィまで裏切んなよ…。
「冗談よ。レイはたまに意外と優しいもん」
「おひとよし」
「そうそう、いつも助けてくれるよね。毒舌だけど」
セラフィ、“たまに”と“意外と”は余計。ルナール、“お人好し”は俺にとって褒め言葉じゃねぇ。そしてハル、“毒舌”が余計だ。わざわざ付け足す必要ねぇだろうがよ。
「おい! いつまでダラダラしてるんだ!! クエストを受けたんだからしっかり僕のことを護れよ!!」
「おーわりぃわりぃ。今行くって王子様(笑)」
とりあえず答えておき、すでに馬車に乗り込んだ王子様(笑)の後を四人で追うのだった。
『レイ、ブチ切れる』の回でした(笑)
どうやらレイは、自分を貶められてもなんとも思わないけど、大事な人(そうと自覚していなくても)を貶められると、怒っちゃうタイプの人種のようです。
それではっ(^^)ノシ