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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
マリシア滞在の章
43/84

素直になるには時間がかかる。

はい、お待ちかね(?)レイとセラフィのデートもどきですよ~


それでは、どうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 あぁ、いい加減にしてくれ。なんでコイツは店内を歩き回るんだ。しかも…。


「ねぇ、レイー。これはー?」


 …………俺を連れまわして。ハルたちは放っておいてるのに、何故に俺を連行する…?

 機嫌が直ったのはいいんだが、女性の買い物は長い上にあちこち回って忙しいと聞く。そんな状態になりかけているような…。


「ちょっとレイ! 早くっ」

「おう、今行く」


 催促の声がかかったので、少しだけ開いていた距離を埋め、セラフィの隣に来た。


「で? どれだ?」

「これよ、これ。このアクセサリー!」


 セラフィが指差すのは、シルバーで天使の片翼を模したネックレス。まぁ、なかなか悪くないんじゃねぇか?


「悪くねぇ。だが、お前に似合うかぁ?」


 俺の言葉に、セラフィはみるみる表情を怒りに染めていく。怒ってるといっても、半分冗談ってトコだろうけどな。


「なによ! どうせあたしは天使なんて遠い存在よーだ!!」

「おう、ちゃんと理解してんじゃねぇか」

「むぅー!! もう、レイなんて知らないっ!!」


 だが、結局そっぽを向いてしまった。…………からかいすぎたか?


「そう怒んなっての。もっと似合うヤツ買ってやるから」

「………そんなお金、あんたは持ってないでしょ。それに、今は生活費が苦しいし、武器代も集めなきゃいけないコトだって分かってるもん。見るだけでしょ、どうせ」


 失礼な。俺だって、娯楽用に貯めてた金はあるっての。


「いいから。俺はお前に買ってやりてぇんだよ」


 機嫌を直すために。………あ、俺が率先して物で釣ってんじゃん。

 まぁ、アクセサリーを買ってやる程度で喜んでくれんなら、それでもいいか。


「そそ、そんなこと言って………あの、その……ありがと…」


 頬を上気させて、恥ずかしそうに礼を言ってきた。…………うっ、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇかよ。反則だ、それ。


「お、おう。で、ネックレスが欲しいんだった…よな?」

「…うん。でも、あの、なんでもいい。その……あんたが、え、選んでくれるなら…」


 さっきから羞恥心の欠片もない言葉オンパレードぉぉぉ!! ……………悪くないけども! むしろなんか良いけどもぉぉ!!


 おっと、壊れるな、俺ぇ! クールに行こう! クールに、クールに。


「分かった。なら、真剣に選ばねぇとな。責任重大だ。………まぁ、少しくらいは意見出してくれよ?」

「うん。……ホントに、ありがとね」


 ここまで素直になるとは“物で釣る”恐るべしだな。……はっ! これが女性に貢いでしまう者の心理なのか?! それは無理! 欲しがるモノは出来るだけ買ってやってもいいけど、“貢ぐ”って響きが無理!!


 って、また壊れてきた。むしろ、今日は壊れてる俺が正常なんじゃねぇのか?

 それでも、内心の壊れっぷりを外に出すつもりは毛頭ないけど。


「気にすんな。…さぁ、選ぶぞ」


 そう言って、俺はセラフィの手を取り、店の奥へ向かう………いや、向かおうとした時に、誰かの気配を感じて立ち止まった。


「お客さんお客さん!」


 と、その気配の正体は、どうやら店員だったらしい。セラフィと共に横に身体を向けると、そこには茶髪で、好奇心旺盛そうな光を焦げ茶の瞳に宿した女性店員がいた。


「お二人、仲いいんですね! お付き合いされてどれくらいになるんですか? あ、もしかして記念日です? 一年記念日とか!! そうじゃなきゃ、わざわざアクセサリーなんて買いにきませんもんね! 記念日にプレゼント! そういう彼氏、いいなぁ~、お優しいんですね! 目つきは鋭めですけど、カッコイイですし! あ、そんなこと言ってたら彼女さんに怒られちゃいますね、すいません! でもでも、彼女さんも可愛いですし、お似合いですよぉ~♪ ………って、どうされました?」


 ………なにこの人、このテンション。しかも勝手に勘違いしてんじゃねぇよ。俺とセラフィはそんな関係じゃねぇ!


「ちょっ……別にレイとはそんな関係じゃないもん!!」

「おう! そうだ、勝手に決めつけてんじゃねぇぞ、おい!!」

「へ? そうなんですか?」


 ぽかんとした表情で、この店員は首を傾げた。信じられないって感じの表情だ。……そこまで、付き合ってるように見えるのか? 俺たちは。


「でも、お二人………手を繋いでいらっしゃいますよね? ホントに、お付き合いされてないんです?」


 は? 手を繋いでる? おいおい、そんな冗談は笑え………な……い…?


「うぉうっ!」「ひゃあっ!」


 忘れてた、買うヤツ探しに行こうとした時に、コイツの手を取ったんだった…。あまりに自然すぎて、完全に忘れていたよ……。


「「じ、事故っ! わざとじゃないっ!! ホントに!!!」」


 あ、ここでハモるとか……完璧に照れ隠しだって思われる…。終わったな……。


「ふふっ! やっぱり仲いいじゃないですか!! それじゃあ、仲がいいお二人にはコレなんかオススメです、ハイ!!」


 店員は、ハイテンションのままに近くの棚まですっ飛んでいき、そしてすぐに商品を取って戻ってきた。


「あ…可愛い…」

「……悪くねぇな」


 それは、指輪だった。いや、指輪をネックレスのようにぶら下げる形にしたもので、なかなかに凝ってる造りだ。そして、指輪部分には小さな宝石が嵌っていて、片方は紅いルビーで、もう片方は蒼いサファイアという………高そうな逸品だった。


「ふふふ、ペア・アクセサリーです! どうです? きれいでしょう? 男性はサファイアの指輪、女性はルビーの指輪を、ネックレスの輪に通して首からぶら下げるんです! そうすると、二人の絆が切れることはないんですって!! まぁこれは、この地方の言い伝えってだけなんですけど」


 相変わらず、よく喋る店員だ。………二人の絆が切れることはない…ねぇ。別にそういう関係じゃねぇって言ってんのに。








 結局、買ってしまった…。俺もセラフィも、そのアクセサリー自体は気に入った。というか、かなり欲しくなった。そんなワケで、買ってしまったのだ。

………どう考えても、恋人同士が買うようなネックレスを。しかも、俺が貯めてた娯楽用の金では収まりきらず、生活費を軽く削ってまで。そして、互いに顔を真っ赤にしながら。

 こりゃ、失礼な計画を立てていやがったヘタレたちには報告できねぇな。だが、言いたいことはある。……別に、感謝ってわけじゃねぇけど。

 と、ここでハルとルナールが勘定を済ませた俺たちの方を向いた。


「おら、ハル。帰んぞ。もう、欲しいもんは買った。……お前らも、さっさと済ませろよ」

「へ? ちょ、ちょっと待って」

「はる、これ、買って買って」

「え、うん。ま、待って」


 ハルは慌てながらもルナールにハンカチを買ってやっていた。黄色だったな。………ハルの瞳の色に合わせた? いや、ねぇか。ヘタレがそこまで好かれるわけはねぇ…おそらく。厳密に言えば、ハルの瞳の色は金色だし。


 そして、店から出て宿に帰り、俺とセラフィは部屋が違うのでそこで別れ……俺とハル、セラフィとルナールに別れて部屋に戻った。


 ハルと共に部屋に入った俺は早速、口を開いた。


「おう、ヘタレ。なんかお前、俺とセラフィの仲を取り持とうとしてたみたいだな」

「うぇえ?! き、気付いてたの?」

「あのな、セラフィはどうか知らねぇけど、俺には丸聞こえだボケ。ルナールと随分勝手な計画を立ててたみたいだな、オイ」

「ご、ごめんっ! でも、仲よくなれたでしょ? お揃いのネックレスだってつけてるしっ!!」


 うわ、もう気付きやがった。

 実は、ネックレスの勘定を済ませる前に、あのよく喋る店員にネックレスを着けさせられたのだ。……………なんか、ホントに繋がってる感が恥ずかしいな、おい。


「あー、これについては突っ込むな。特に、値段なんかは絶対に訊くな。……いいな、分かったか?」


 最後の言葉を吐く時には、あのワイバーンと()り合った時以上の殺気を込めて。


「わわ、分かった、うん。ぜぜぜ、絶対にき、きき、訊かないよ」


 分かってくれたか。物分りのいいヘタレだ、うん。


「おう、それでいい。………それと、別に余計なことはしなくてもよかったぞ」

「え? 仲よくなれたんなら、余計じゃないと……思うよ?」

「あぁ、そういうコトじゃなくて。俺とセラフィは、ケンカしてるくらいがちょうどいいのさ。そんな関係のが、心地良い。………まぁ、たまにはああいう機会があってもいいとは、思わなくもねぇけどな」


 別に、感謝してるワケじゃねぇからな。……ペア・ネックレスを買ったコトで、アイツのことを好きになるわけでもねぇし。ってか、アイツの性格はねぇよ、俺と合わねぇよ。……たぶん。

 だが、一応は俺たちのことを考えてくれたわけだし、礼は言っとく。……不本意だけどな。


「……ありがとよ、相棒」

「へ? 今なんて?」


 聞き取れなかったか。まぁ、だいぶ小声で言ったしな。


「なんでもねぇ。それより、あとでルナールだけには感謝しとかねぇとな。セラフィと俺が軽く仲違いしかけたと思って、気遣ってくれたみたいだし?」

「ぼ、僕はぁ?!」

「はっ! ヘタレには、逆に感謝してもらわなきゃいけねぇほど恩作ってんだ。感謝なんてしねぇよ」

「ひ、ひどいぃ~」



 ………ハル、それでもありがとう。少しだけ、素直になれる気がしてきたよ。ホントに、少しだけ、な。

 何に“素直になる”かは訊くなよ? 勝手に察してくれ。……俺だって、まだ認めたくねぇんだから。


だから、素直になるのはもうちょい先だ。




ちょ……あれ? レイくんが軽く自覚し始めた?


早い、早すぎるよ兄貴!



まぁ、まだまだケンカばかりの二人になると思いますがねぇ(笑)



さて、そろそろマリシアから抜け出さないと、目的地に辿り着けませんね。


パーティ“アカシア”の面々にも、急いでもらわないと!




それではっ(^^)ノシ


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