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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
マリシア滞在の章
41/84

“アカシア”

やっと、パーティ名が明かされるようですよ?


それでは、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 うわー……………センスねぇー。

 一通り、全員の意見を出し合ってみたものの、俺を含めて全てダサい名前だ。結構問題だろ、コレ。

 最後の方なんて、“ドタバタ四人組の厄介事に好かれる旅”なんて意味の分からないものになっていた。…………つか、パーティ名が“旅”ってなんだよ、おい。それに普通に長すぎるわ。


「おい……どうするよ。決まんねぇぞ」

「さっきから何個も出してるじゃない。何が気に入らないってのよ」


 そりゃ、気に入るワケがねぇ。お前のパーティ名は全て壮大すぎる。“ドラゴンバスター”から始まり、“ドラゴンキラー”やら“ドラゴンマスター”やら“ドラゴン(ry)”………そんなにドラゴンが倒したいですか? 一人でやってろ。


 かく言う俺も…“気まま”やら“適当”やら“のんびり”やら“グッバイ面倒事”やら……いや、本気で考えたワケじゃないからな? ホントだ!


 そして、ハルのは……やっぱ微妙なんだ。例えば“シザンサス”………花の名前らしく、花言葉は『あなたと一緒に』。おそらく、みんな一緒に仲良くやっていこう的な意味を込めようと思ってるんだろうが、これは少し……恋愛っぽい響きじゃないか? ってか、ヘタレの意見が通るのは気に食わんってコトで却下。


「何気に酷いよね?!」

「うるさい、ヘタレ! 気にするな」

「ぶぅ~」


最後に、ルナールのは全てが論外だ。なんせ、“ドタバタ四人組の厄介事に好かれる旅”を考えたのはこの子だ。…………それだけで、微妙な名前オンパレードだったことは推測可能だろう。


 あ、誰だ! 今、お前が考えた名前が一番酷いって言ったヤツ!! ………Exactly…確かにその通りだよ!!!


「レイ、なんでわたしのダメなの? ねぇ、はるも教えて」

「えぇ~、わかんないよ。僕のだって結構いいと思うし……」

「とりあえず、センスないことは自覚してくれ、頼むから」


 全員センスないんだから、そこだけは認めようぜ。俺も、ちゃんと認めたから、うん。


「あんたが一番ないけどね?」

「もうそれは認めたわボケ! 脳内で!!」

「脳内で?! あんたの脳内事情なんて知らないわよボケボケっ!!」

「今もう察したんだからそれでいいだろうがボケボケボケっ!!!」

「あの~、それじゃあ“ボケ”がどんどん増えていくんじゃないかと……」


 いつもなら、ここで『うるさいヘタレ!』をかます所だが、あえてスルーしよう。


「さて、そろそろ本気で考えないと日が暮れるぞー」

「そうね。急ぎましょ」

「え? あえての無視?!」

「はる、なにやってるの? はやく決めようよ」

「え? うぇえ?! 僕? 僕が悪いの??!」

「「「いぇす!」」」


 はい、三人揃ってグーを作って親指を立てる。どんまい、ヘタレ。

 ………………って、なにやってんだ俺は。


「ぷっ! あっはっははは!! お、おもしろすぎるわよ四人とも……ふふっ! パーティの名前決めるだけでこんなに時間かかるパーティなんて初めてだわ♪」


 その結果がコレだ。ギルドマスターなキリーに笑われた。…………そんな、大爆笑すんな、今さらになって恥ずかしくなってくる。


「うっせぇ。無難な名でいいっつってんのに、その“無難”すらも思いつかねぇんだよ」

「そうよ。…あ! 逆にギルドマスターのあなたが勝手に決めればいいのよ!!」

「おう、それがいい。たまにゃあいいコト言うじゃねぇかセラフィ。キリー、あんた決めろ」

「わたしも、それがいいと思う。きめて、キリー」


 はい、三人揃って凝視(目を細めて、鋭い眼光で)。…………俺も含めて、だいぶ壊れてきたコトは分かってる。それでも、もう考えんのめんどくせぇよ。俺に名前決めとか向いてねぇよ。


「さ、三人とも………それ、もはや脅迫…」

「「「キョウハク? なにそれ、どういう意味?」」」

「…………うぅ……三人のハモりって、性質(タチ)悪い……」

「ふふっ! おもしろいわ~。あなたたち、傭兵パーティじゃなくてお笑いユニット結成したら?」


 ……………ナメんな、ギルドマスター。つか、ちょっと調子に乗りすぎたな。


「まぁ、冗談はさておき。………真面目な話だが、パーティ名、テキトーに考えてくれねぇかな?」

「うーん……別に他のパーティと識別できるのならどんな名前でもいいんだけど…。やっぱり、意味のある名前がいいわよねぇ?」


 おぉ、意外と真面目に考えてくれるのか。助かる。


「うん、意味は欲しいな。せっかく、僕たちで組むわけだから……それにそれで名乗ることもあるだろうし、やっぱり僕たちに合った名前にしたい」

「はる、わたしも。かっこいい名前がいいとおもうよ」

「そうね。どうせならいい名前にしたいわ」


 俺の意見も求めるように、三人がちらっと見てくるので、一応頷いておく。………まぁ、変じゃないならなんでもいいけど。


「意味……ねぇ。そしたら、茶髪の子が言ってたように花の名前なんてどうかしら。花には花言葉があるでしょ? それらしい花言葉のある花の名前をパーティ名にしたらいいのよ。構成員の二人は女の子だし、その方がいいと思うわ。花には、響きがよくて男の子も気に入る名前もあると思うの」


 …………花言葉っていうと、恋愛関係が多いような気ぃするんだが、俺の偏見じゃねぇよな? 偏見じゃないなら、止めておきt…。


「それいい! うん、花の名前っていいと思うわ!! ねぇ、ルナール?」

「うん、かわいい。それがいい」


 おいルナール。てめぇは“かっこいい”名前がよかったんじゃねぇのか。すぐに意見翻してんじゃねぇよ。


「よし、それじゃあ決まりね。………問題は、なんていう花にするかだけど…」


 止める間もなく決定しちまったじゃねぇかよ。………セラフィたちがあそこまで食いついたせいか…。

 まぁ、しょうがねぇ。ここまできたら、無難な響きの名前なら文句ねぇよ。


「やっぱりここは“シザンサス”で!!」

「「「却下」」」

「なんで?!」


 なんでってそりゃ、花言葉が微妙だし、響きもよくねぇだろうがよ。


「あら、いいと思うけど。花言葉は『あなたと一緒に』でしょ? ………ふふっ、お似合いだと思うけど?」


 ………………さりげなく、俺とセラフィを見ている気がするのは、やはり俺の気のせいだろう。あ、ほら、今はハルとルナールの方に目ぇ向けてニヤついてやがるし。

つか、なんでそう思うんだよ。そんな雰囲気、出した覚えは……む…少し、セラフィと距離が近いか?

 とりあえず、さりげなくセラフィから離れた。セラフィも、少しだけ頬を上気させ、一旦離れてくれた。勘違いされたらたまらんよな。

 だが、その様子を見たキリーは、あくどい笑みをさらに色濃く表し、意味ありげな視線を送ってきた。………うぜぇ。

 そう思いつつ、否定すればそれこそ認めてる感じがして癪だ。なんでもないように話を続けよう。


「響きが微妙なんだよ。他、ねぇか?」

「ん~、僕は他に花言葉知ってる花はあんまりないなぁ」

「じゃあなんで“シザンサス”は知ってんだよ?」

「えと、お母さんが『お父さんがプロポーズの時に贈ってくれた』って話してくれたから?」


 やっぱ、恋愛要素含んでる………ってかストレートで恋愛要素じゃねぇかよ。


「女の子たちはどうかしら? 花の名前と花言葉、いいの知らない?」

「んと、わたしはあんまりわかんない。あ、でもほんとのお母さんだったらしってるかも」

「…………あたしも、あんまり花の知識はないわね」


 知らないのかよ。つか、いつのまにかキリーが仕切りだしてるし。まぁ、楽だからいいか。さっさと進めてくれ。

 そう思っていると、キリーがいきなりニヤリと口の端を吊り上げ、妖しげに笑い始めた。


「おい、あんた。どうしたよ?」

「ふふふ………我ながら、とてもいい名前を思いついたわ」

「おぉ! マジか。教えろ」

「ええ。その名も“アカシア”」


 おう、響きは悪くねぇ。まあまあ、無難ってとこじゃねぇか?


「じゃあ、花言葉は?」

「ズバリ。『友情』! あなたたち仲いいし、丁度いいんじゃないかしら?」


 友情……ねぇ。そもそも、俺らって友達なわけ?


「おお!! いいです、すごく!! ね、僕たち、仲いい友達だもんね!! ねぇ、レイ?」


 うーん、まぁそうなのかもしれんな。いや、そうなんだろう。あいにく俺は、友達は親に捨てられたときにいなくなって、その後は師匠と修行ばっかして、独立したら生きるのに精一杯で……。友達なんて、どんな関係かも忘れた。だから、“友達”の定義が分からん。………まぁ、“友達”ってのは悪くねぇ響きだが。

 それでも俺はこんな時、正直に『そうだな』とは言わないひねくれ者(自覚あり)なワケで…。


「なに言ってんだ? お前は俺のお荷物Aだろうが」

「ひ、酷いぃ~」


 まぁ、俺たちの間ならコレも冗談で通じるだろう。…………お荷物Bを自覚して、怒りのオーラを滲ませている深い藍色の髪をした鬼については、考えないことにしておく。


「さて、冗談はともかく。悪くねぇと思う。お前らはどうだ?」

「わるくないとおもうよ。かっこかわいい」

「勝手にしなさいよ」

「うぅ~、脱・お荷物と脱・ヘタレなんて難しすぎる………って、レイなんか言った?」


 あぁ~、セラフィとハル。悪かった。とりあえずセラフィ、機嫌直して。ハルは(うつ)らないで。


「えーと? もう“アカシア”で登録しちゃっていいのかしら?」

「おそらく。いいんだよな、お前ら」

「えぇと、うん。いいと思うよ。ね、セラちゃんもいいよね?」

「悪くない。それでいいわ……って、レイに伝えといて」

「うぇえ? 自分で伝えてよ!?」


 セラフィ………ホント、いい加減機嫌直してくれ。あれは冗談だっての。


「あー、キリー。どうやら俺は、コイツのご機嫌取りに勤しまなきゃならねぇらしい。“アカシア”で登録頼むわ」

「ええ。分かったわ。女の子二人のギルドカードが出来る頃にはまた来てね?」

「おう。クエストも受けなきゃならんし、明日にでも来るかもしれん。だから、またな」

「ええ、また」


 返事の言葉は聞き、俺たちはセラフィの機嫌を軽く気にしながらギルドを出てゆくのだった。






 ………後日、分かったことだが、“アカシア”の花言葉には『秘めた恋』という意味もあるらしい。



―――――あ の 女 ァ ! からかいやがったなボケぇぇ!! 



“とてもいい名前”ってそういうコトかふざけんなからかうのも大概にしろ俺とセラフィはそんな関係じゃねぇついでにハルとルナールもそんな関係じゃねぇだろうよそしてなにより俺とセラフィはそんな関係じゃねぇアゲイン!!!



 はぁ、どうだ。ノンブレスだぞ…!




実際、アカシアという花には『友情』という花言葉と『秘めた恋』という花言葉があるらしいです。


今回は、それを使ってオチとさせていただきましたw

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