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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
ヘタレとひねくれ、邂逅の章
4/84

ヘタレの自覚? ないよ、そんなの。

ヘタレなハルくんが頑張るお話…………いや、シノラインの方が頑張ってるかも(笑)


…というわけで、シノが贈る“ハル・サイド”をどうぞ!

Side Hal. ~ハル・サイド~


「ひやっほう! 腕が鳴るぜえ!」


 歓喜の台詞を上げて僕は剣を振るう。いや、戦っているのは僕ではないんだけれど。


 それはわずか数分前のことだった。

 倒れていたはずの男――ギルが平然と立っていたところから始まる。


「い……いきてた」


 驚愕と、多少の安堵感があったことは否めない。と、ここで先ほど叱られた内容を思い出してしまう。

 ギルと黒衣の青年は互いに何か言い合っていたが、すぐに戦闘に移る。殺し合いよりも、僕は青年から溢れるダガーに魅了された。


「かっこいー……」

『あのコートはマジックアイテムだな。コート裏に大きいズタ袋が付いてんのと

同じだ』


 脳内に――正確には背負った剣から発せられている――声が聞こえる。


「シノライン、あの人を助けたい。さっき助けてくれたから」

『助けなんていらねえように見えるが……剣を振れるんなら文句は言わねえよ』


 僕は背中のロングソードを抜く。とたんに足元から落ちてゆくような感覚が起き、目を瞑る。その両目を開くと、身体の自由は利かなくなっていた。シノラインが僕の身体を乗っ取った証拠だ。




「さっきまで説教たれてたヤツが情けねえな、おい! 押されてんじゃねえか!」




 口の端が吊り上がる。笑っているんだ、シノライン……。

 剣をさほど構えず、ふたりの間に飛び込む。地を蹴る音さえ煩い、覚醒されたシノラインの世界で、剣筋はギルの腹に真一文字を描く。


「くっ……」


 寸前で後ろに飛び退かれてしまった。それでも、多少の痛手はあったはずだ。

 二合三合四合と、立て続けに短い剣舞を繰り出す。この速度について来られることは、褒められた点かもしれない。

 青年はというと、ただひたすら自らの気配を静めている。その意図に気付き、戦法を“攻める”から“観せる”(そんなものがあればの話だが)に変える。大上段からの袈裟切りなんて、もはや目を引く以外の何の意味もない。案の定、大男は唖然としながらも、繰り出される派手な技を振り切るので精一杯のようだ。


「ひひっ」


 悪どい笑い声がもれた。断じて僕のものではない。シノラインの心の浮き立ちが発したのだ。

 そして、青年が動き出した。それにあわせて大きく飛び退き、大男から間合いをとる。

 大男はその行動を疑問に思う間もなく……。


 派手に倒れ、そのまま起き上がっては来なかった。


「チェックメイト………まぁ、既に事切れてるんだが」


 青年はダガーを抜いた。シノラインも、剣を振って血糊を落とし、パチンと鞘

にしまった。

 ふつりと僕の身体からシノラインの存在が消え、思い通りに動けるようになる。


「はあー、骨格に合わず無茶するから疲れるよ……。あ、えと、君! 助けてくれてありがとう、ってあれ? さっきも言ったよーな」


 とにかく、命の恩人なんだから。礼は言わないとだよな?

 しかし青年は路傍の石ころを見るような目で僕に言う。


「殺しはよくないとかほざいておきながら、剣を抜くと喜声を上げるんだな」

「あー、いや……それは僕ではなくてですねー。えっ、行っちゃうの?」


 言うだけ言って話も聞かずにさっさと武器をしまい込み、ロングコートを翻す青年。僕は慌てて後をついて行く。


「ね、名前くらい教えてよー」

「馴れ合うのは好きじゃない」

「恩返しがしたいよ」

「大したことはしてねぇよ。だいたい、恩返しなんかできるのかヘタレ(笑)」


 そのあとも粘ってやっと聞き出したのは彼の名前はレイという(何故か、姓は教えてくれなかった)のと、僕と同じ十七歳ということだけだった。僕より年上かと思い込んでいた。


「お前がちっせぇだけだろ、ヘタレ(笑)」

「ちびじゃないし、ヘタレでもないよっ!」


 身長を気にしているのに、そこをえぐってくる……。そこまでちっちゃくはないと思うのだが。ヘタレというのも、自覚はないし。


『いや自覚無いのが余計に悪い』

「えー、そんなあ」

「は?」


 自然とシノラインが口を挟んでくるものだから、つい答えてしまった。慌てて独り言だと弁解したが、レイはサラサラの黒髪を靡かせつつ、なかなかに鋭い蒼い瞳でこちらを射抜く。先程のシノラインの剣さばきといい、疑われてるようだ。


『ちょっと退()いてろ、ハル』

「え、でも……」

『別に隠すコトじゃねぇしな。……なによりコイツ、少しは強そうだ』


 なにか不安を覚えつつも、僕はシノラインに意識を委ねることにした。


「あの、レイくん。シノラインが話したいって言ってるから、ちょっと待ってて?」

「…………」


 レイは何も言わなかったが、確実に僕の評価は“ヘタレ”から“頭のイカれたヤツ”に降格しているようだった。

 狂人の疑いが晴らされることを願って、抜剣する。シノラインがどうか馬鹿な真似をしませんように。


「よお、ガキ。シノライン様が出てきてやったぜ」


 シノラインは抜いた長剣を肩に引っ掛けて、ふてぶてしくレイを眺め見る。


「ヘタレオーラと殺気じゃ、最悪の組合せだな」

「はっ。最近の流行は意外性なんだぜ。ヘタレが殺しやるとか、最高じゃねーか。それよりガキ、さっきの大男倒したんで腕が乗ってきてんだろ。俺と手合わせしやがれ」


 ああっ。シノラインのことだからきっと、さっきの大男は俺がトドメをさしたかったとか、そういう理由なんだろうな……。殺し合うわけではない口振りだが、無益な戦いは止めて欲しい。痛いのはいやだ。



 レイは数秒の沈黙の後、静かに口を開いた――。




当然、次回はレイ・サイドですね。


ここまで、順調に一日一投稿してますね(笑)


それが続くかは分かりませんが(というか続けば奇跡ですがw)、柚雨はいつでも早めに投稿できるようにしたいな、と思っております。


それでは、また次回(^^)ノシ

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