武器を造るための情報を提示しよう
二日酔いのハルくんを起こし、武器屋の爺さんのトコまで行きます。
それでは、本文をどうぞ!
Side Ray. ~レイ・サイド~
ああ、悪くねぇ決心だ。本当にハルらしい。
―――――みんなが笑うために強くなる。
それがヤツの決心だった。
正直、そんなことが出来る人間はかなり限られてくるだろう。いや、不可能なのかもしれない。力を手に入れれば慢心を生み、責任まで生じる。過ぎた力は身を滅ぼす。…………そういう俺だって、自身が持つ“闇”属性の魔力による狂気と、いつも戦わなければならない。
つまり、皆を幸せにする力など、なかなか持つことなど出来ないのだ。いくら“護るための力”と、言い張った所で、結局は敵を傷つけていることに変わりはない。
……………でも、コイツにならその答えが見つけられるかもしれない。何故か、そう思った。普通は、絶対に無理なコトなのにな。バカらしい。
それでも、ハルを鍛えてやるのは意外とおもしろいかもしれねぇな。
だがまぁ、長々と思考したが、俺にはやる事がある。
「と り あ え ず ! 起きろやヘタレぇぇぇぁああ!!!」
それは当然、ハルの腹に拳を叩き込むコトだ。………………うん、吐かなくてよかった。
今日は、例の武具屋の爺の所へ全員を連れて行き、ギルドにセラフィとルナールを登録して正式に四人のパーティを申請、そして金を集めなければならないのだ。
そのために先程、ハルを強引に起こしたワケだが…。
「うぇー……レイー、気持ち悪いよお…」
「……………酒、本当に一杯しか飲んでねぇんだよな?」
「えぇと………たぶん…」
「……………もう、飲むのは止めとけ。つか飲むな、いいな?」
力なく、ハルは頷く。二日酔い、一杯で二日酔い。どんな弱い体質だよ。………せっかく、これから鍛えてやろうかと思ったが、その決心が鈍ってくる。
確か、二日酔いに効く魔法があったハズだ。………ルナールたち、もう起きてるといいんだが。ルナールなら、二日酔いに効く魔法を習得していそうだ。
扉をノックする。…………返事なし。そりゃ、あいつらだって疲れているだろうし、寝過ごすのも勝手だが、そろそろ昼になってしまうワケで、早く起きて欲しい。どうせ、この町には長く居座らなければいけない流れだし、少しぐらいはゆっくりしてもいいんだが、それでも昼前には起きてきて欲しいものだ。だいたい…。
「ちょっとあんた、何してんのよ。……はっ! まさか覗き?!」
「レイ、のぞきは、よくないよ?」
俺の思考は、ここで途切れた。…………起きてたんかい、コイツら。髪が濡れてるし、風呂にでも入ってきたんだろう。俺も昨日の夜に入ったが、中々に気持ちいい風呂だったし。
「誰が覗くか。チビしかいねぇ部屋なんて、見ても嬉しくねぇよ」
「あたしだって一応、十六歳なんだからね!! あんたも同じくらいでしょ!?」
「はっ、俺は十七だ!!」
「一つしか違わないじゃないの!!」
「この年頃の一つはデカイんだよ!!」
なーんで朝から怒鳴りあってんだ、バカらしい。
「でもレイ。わたしたちが子供じゃなかったら、のぞいてうれしいんだね」
…………ルナールさん、それは言葉の綾というヤツですよ。つか、勢いが削がれた。
「はぁ、そんなワケねぇだろ。俺ぁ、そんな低俗なコトはしねぇよ。……んで、ここに来たのは軽く用があってな」
「用? まさかもう町を出るの? もう少しゆっくりしたいのに」
「いや、この町にはしばらく滞在する。理由は後で説明するから、とりあえず今は俺たちの部屋まで来てくれないか?」
ハルの二日酔いを治してもらわなけりゃ、今日の話は始まらない。
「どうして? はるがまだおきれないの?」
「おう、そんなトコだ。………どうも、二日酔いらしくてな」
「二日酔い? あいつ、そんなに飲んでたの?」
「いや、一杯で酔って、一杯で二日酔いらしい」
……………………………………………………………………………。
なんとも言えない空気が、場を支配した。
その後、ルナールの魔法によってハルの二日酔いを見事に治し、俺たちは昨日の武具屋に向かっていた。
道中、武具屋の爺が俺たちに武器を用意してくれる旨と、その代金を支払うためにギルドでクエストをこなして金を調達すること、そのついでに俺たち四人を正式にパーティとして登録することを話した。
「でも、パーティに登録して、なにが変わるの?」
話したところ、ハルには疑問に思ったことがあったらしく、首を傾げながら俺に訊ねてきた。
「ギルドカードによって、パーティ間での連絡が取れるようになる。“音声送受信魔法”とかなんとか。他にも、そのパーティで一番ランクの高い者が受けられるクエストなら、どれでも受ける事が出来るようになる。………ついでに説明しておくと、ギルドカードはキャッシュカードの役割も果たすことが出来る。まぁ、一応傭兵であるハルは知ってるだろうが、ギルドのバンクに金を預けておけば、そこに預けている金をギルドカードで使うことが出来るワケだ」
つまり、ギルドバンクに預けた分だけなら、ギルドカードを持つだけで使用可能になるというコト。重い金貨を持ち歩かなくても済むワケだ。(すでに、飛竜討伐の際に手に入れた報酬はギルドバンクに預け、それを使って買い物までしたワケだし、ハルだってその利点は充分理解しているだろう)
先程も言った通り、ギルドカードはパーティ間での連絡をとることも出来るし、国境を越える際には身分証明にも使える。………なかなか便利な代物だったりするのだ。
と、ここまで説明し終えたところで、目的の武具屋に辿りついた。
「よう、爺。仲間を連れてきたぞ」
「おうてめぇか。…って、随分低年齢なパーティだな」
「新進気鋭のパーティでね。これでも、実力と人格は俺が保障できる」
………ハルの実力に関しては、そのうち鍛えるし、それまではシノラインに頼ればいいだろう。セラフィに関しても、性格は俺と反りが合わないにしたって、悪いヤツではなくむしろいいヤツだ。
「そうか。じゃあとりあえず、一人一人、自分の出来ることを教えてくれ。……それを参考に、武器を造る」
「専用武器ってワケだな。じゃあ、俺から説明しておく」
《レイ・アルフォード》ギルドランク・B(G~EXの中で評価)
特有スキル :魔法反射、魔力操作、一部特殊魔法
使用可能武器:ダガー、鋼糸、起爆札、針(暗殺用)、長剣、ナイフ、メイス、鎖鎌、短槍
技 :死刑執行(膨大な魔力の奔流)、影走り(反射による高速移動)
特記事項 :魔力操作により、武器を空中に浮かばせ、自由自在に操ることも可能。主に、不意討ちや暗殺に通じる攻撃方法を好み、毒を扱うこともある。また、魔方陣の知識も持ち合わせている。中距離型な器用貧乏もどき。
《ハル・カーストウッド》ギルドランク・F(レイとの飛竜討伐を評価され、一つ上がった)
特有スキル :人格交代、ヘタレ(笑)&(憐)
使用可能武器:長剣…?
技 :苛烈な剣撃、濃密な殺気の放出(全て、シノライン時のみ)
特記事項 :剣に宿るシノラインの魂を自身の身体に憑依させることが出来る。シノラインが表層に出ている時の戦闘力はかなりのものであり、身体が鍛えてあるならば、レイを軽く(?)越える実力を持つ。完全近距離型の前衛。
《セラフィーナ・アーヴィン》ギルドランクなし
特有スキル :白狼召喚、体力最低(笑)
使用可能武器:今の所なし
技 :高速召喚(白狼であるリアに“お願い”するだけで召喚可能)
特記事項 :後方支援型にもなりきれない。
《ルナール・ラグシェンカ》ギルドランクなし
特有スキル :あらゆる属性魔法の使用、及び、精霊魔法の使用
使用可能武器:今の所なし(魔法の指向性を高めるロッドは使用可能)
技 :スキルと同じ
特記事項 :多大な魔力を持ち、ほとんどの属性魔法が使用可能、さらには精霊魔法まで使えるものの、未だ子供であり、どこか危機感に欠ける。それでも、下手するとパーティ内一の実力を持つと言えるかもしれない(むろん、近距離戦闘は不可)。
能力の説明がてら、俺たちは名乗った(“アルフォード”姓は名乗っていない)。ついでに、爺の名前も訊いておこうか。
「こんなトコだ。んで、俺らは名乗ったワケだし、あんたも名前を教えてくれ」
「おう、そうだな。俺ぁ武器職人であり、リヒトの親友。ドワーフの血を四分の一継いでいるクォーターだ。んで、名前はグレアム・ブラウニングってんだ。よろしく頼む、レイ、ハル、セラ、ルナール」
仰々しい名乗りを挙げてきたグレアムに、俺たちも軽く応える。
「ああ」
「うん、お願いします」
「よろしく、職人さん」
「武器、がんばって。つくるの」
これで、とりあえず自己紹介も終わりだ。この人なら俺たちによくあった武器を造ってくれることだろう。………その武器を使った戦闘方法を、ハルに教えてやるのもいいかもな。
当面は、クエストによって金を稼ぎつつ、ハルを鍛えて武器の完成を待つことになるだろうが、急ぐ旅でもねぇしゆっくりやっていくか。
最後に挨拶を終えてグレアムの武具屋を出た俺たちは、その足でこの町・マリシアのギルドに足を運ぶ。
さて、パーティの名前はどうしようか。………こういうの考えるのは、あまり得意じゃねぇし、いい名前を考えるヤツが俺たちの中にいればいいんだが。
……………ざっと見渡し、一人も考えそうにないと思ったが、気のせいだと思い込もう。
ちなみに、すでにパーティ名は決まってますよ。
まぁ、その名前が出るのは二話先になりそうですが。
それではっ(^^)ノシ