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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
マリシア滞在の章
38/84

ヘタレ、脱・ヘタレを決心する。

酔ったまま、ハルくんは夢を見るようです。


その夢が、彼に与える影響とは…。



それでは、本文をどうぞ!

Side Hal. ~ハル・サイド~


 僕はレイに部屋まで引きずり込まれてベッドに投げ出された。そんなに荒々しくされると、吐く……。


「どうしてこうなった?」


 笑っているのか怒っているのか分からないが、レイが僕に言った。でも僕の頭には入ってこない。頭の中がぐわんぐわんして何て言っているのか上手く理解できない。ぐわあー……。

 レイが何と言ったかわからないのでとりあえず頷いた。ぐえーっ。頭振ると、かなり苦しいことが分かった。


「はあ……もう寝てろ」


 呆れたレイの言葉を聞かず、僕は完全に伸びてしまった。見えるもの全てが歪んでる……。







 頭が回る。体の全部が回っている気もする。ああ……気持ち悪い。時間はどれくらい経ったんだろう。まったく時間の感覚が無い。こんなこと初めてだ。あのお酒でこんなことになるとは……。


 ふと、自分の置かれている状況に気付く。

 これは夢なのかな? 夢なんだろうな。僕の前にもうひとり僕がいるんだから。とにかく気持ち悪くて頭が働かない。もしかして夢じゃないのかも。頭を使って考えると、また吐き気がよみがえる。



『はぁあ』



 もうひとりの冷静な僕はダメな僕を見て、溜め息をつきながら言う。



『この、ヘタレ人間。なんでもかんでも弱すぎる。それが酒であったり、体力であったり、精神面だったり。レイに馬鹿にされてばかりじゃないか』



 確かに、と僕は思う。冷静でヘタレていない僕は話を続ける。



『それに、能力的にも弱い。自分には力がない。レイはいつも余裕綽々だし、セラフィーナは白狼を喚びだせる。ルナールみたいな魔法も使えない。シノラインのように剣も振るえない。力が無いのは、僕だけなんだ。落ちぶれてるのは、僕だけ』



 そうだ。戦うときはいつもシノラインが出てくる。だから僕自身の力で戦ったことはない。僕自身には、何の力もないんだ。



『脱・ヘタレとかなんとか、言ったじゃないか。それがこのザマなんて。だから、強くならなきゃいけない、すべてにおいて。だって、僕には何が出来る? 召喚なんかが出来るはずないし、魔法も使えない、剣も振るえない。僕はただ笑ってることしかできない。僕には何もないんだ。だから、少しでも強くなり、力を得たい。シノラインの力ではなく、僕自身の力を。そうだろう?』



 冷静な僕の言葉はダメな僕を突き刺していった。そのひとつひとつが身に染みる。

 分かってる。そう思ったからレイに、強くなりたいと言ってみたんだ。ヘタレじゃムリだって断られたけど。

 こんな僕でも、誰かを守りたいと思ったんだ。ヘタレでダメな僕でも強くなって仲間を守りたい。

 つまりは、頼ってほしい。今の僕じゃまったくもって頼りないけれど、シノラインやレイばっかりに頼りたくない。足手まといになるとか、お前じゃなくてシノラインが戦え、とか言われるのは辛い。お前は必要ないと言われているようで。


 あれっ、僕、そんなこと思っていたのかな? 自分でもそんなことを考えていたなんて気付かなかった。



『いっつも、戦闘はレイとシノラインに任せっきりで、自分は笑ってばかり……』



 言葉が途切れた。突然、僕と冷たい僕の他に、人影が現れ、冷静で卑屈で歪んだ僕を消し去った。


 そして男は僕に手を差し延べる。褐色の肌に赤みのある茶色の目をした若い男。誰だかわからないけれど、僕はその手を取る。僕よりがっちりした固い手が握り返してきた。



「世界のすべての人間が笑って暮らせれば、強さを求める必要はねえんだ。ハルは、笑ってればいいんだよ」


 男はそう言ってにぱっと笑った。


「ヘタレていようと、人を守ることは出来る。その人を大事に思っているんなら、な。決意があれば、強くなることだって出来る」


 ああ、この声は、この顔は、きっとシノラインだ――――。今までに顔は見たこと無いけれど。


「僕、みんなが笑うために強くなりたいよ」






「……お前らしくていいんじゃねぇの?」


 そう言ったのはレイだった。真っ黒な髪を手でかき上げ、いつも通り切れ長の蒼い瞳を僕に向けている。


「僕、起きてるの?」

「は? さっきから長いこと喋ってただろ、ダラッダラと。あれ寝言か? あれだけの酒の量で頭がいかれたか」


 寝てたのかな、僕にも訳が分からない。レイの言うとおり、おかしくなっちゃったのかも。何にせよ…。


「レイー、お酒飲むと新しいことに気付けるようになるんだねぇー……」

「……やっぱり大丈夫か?」


 イタい病人を見る目を向けてくるレイ。実際その通りなんだけど。


「僕、強くなるよ」

「勝手に強くなってろ。俺に迷惑は掛けんなよ」


 そう決心したとたん、力が抜けたのか酒が残っていたのか、僕は激しい眠気に勝てず微睡みはじめた。




―――――大丈夫か、脱・ヘタレへの道。





結局また寝るという…w


次回、二日酔いで吐き気満点なハルくんは一体どうなる…?(笑)



それではっ(^^)ノシ

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