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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
マリシア滞在の章
37/84

武器調達……しようと思ったら、思わぬ方向へ。

二日酔いのくだりは、なぜかもう少し先に…w

それでも、ちゃんとやりますよ?

ただ、中々時間が進まないだけです(笑)


さて、今話はハルたち三人と一旦別れたレイの行動を追います。


それでは、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 さて、さっさと目的を済ませるとしよう。別にセラフィを連れていってもよかったが、あいつは相当疲れているハズ………ちょっとくらい駄々こねても、ヘタレに任せて正解だろう。


 行く先は武具屋。俺が蓄えていた武器もだいぶ減ってきたのだ。とりあえず、武具屋を目指すことにした。




 この町に来たことはなかったが、噂は聞いていた。……ここの武具は質がいい、と。それは、この町でも全面に押し出すセールスポイントだったらしく、たくさんの看板による道案内で、町人などに訊く必要なく目的の武具屋に辿り着いた。

 店構えは小さめだが、なるほど、確かに良さげな外観だ。そう思い、俺は扉を開けて店内に入ることにした。


「邪魔するぞ」


 店に入るとすぐにカウンターがあり、そこに店主と思わしき人物を見つけたので、とりあず声をかけておいた。


 ………………………………………………………………………シカト。


 こいつ、売る気あんのかよ。

店主らしき人物はいかにも偏屈っぽい爺で、真っ白い髭を蓄えているというのに、頭の方は寂しいことになっていた。そして、厳つい表情を全く崩すことはない。…………おいおい、見た目通りの偏屈か? なら、なんでこんな武具屋が有名になるよ?


「おい、“いらっしゃいませ”の一つも言えねぇのか?」

「………てめぇみたいなガキに売る武器はねぇ。帰んな」


 ああ、そういうコトか。なら、実力を見せればそれで売る気になると、そしてその場合はかなり質のいい武器を提供すると、そういうワケだな。

 俺は勝手にそう解釈し、ロングコートの懐に手を突っ込みながら訊ねる。


「そうか。だが、俺も売ってもらわないと旅の仲間を護れないんでね………実力を示せばいいんだろ?」

「武器に頼るだけのガキが、戯言を言うな。てめぇには示せる力もなければ、仲間を護れる力もないわ」


 俄然、興味が湧いてくるね。…………もちろん、コイツの生首を転がすことに。…と、危ない思考に入りそうになる自身を必死に押さえ、俺は長剣を取り出すことにした。


「オヤジ、そういうコトは俺の動きを見てから言うんだな」

「………ふむ、その長剣…確かリヒトにやったモノだな。てめぇ、リヒトの縁者か?」

「リヒト………リヒト・アルフォードか?」


 リヒト・アルフォード。俺の師匠だ。現在の俺の武器は、消耗品以外は師匠から受け継いだものがほとんどで、この長剣もそうだ。………長剣を見ただけで、誰に渡した武器かも覚えていやがんのか、この爺は。


「そうだ。縁者なのか?」

「一応、弟子というコトになってる」

「そうか………あやつも、とうとう弟子を取るようになったか」


 俺は師匠が65歳にして初めて取った、最初で最後の弟子だったらしいからな。昔からの知り合いにとっては、師匠が弟子を取るとは思えなかったのだろう。


「ああ。だが、今は関係ない。実力を示したいんだ。どうすればいい?」

「あ? リヒトの弟子には、実力があって然るべきだ。試験なんて要らねぇよ。存分に見てきな。ヤツとの縁もあるしな」

「……生憎、俺は師匠を越えてねぇ。そして、師匠は死んだ。死者が持っていたかつての威光に頼って生きたくねぇな」

「おい、てめぇ…今なんつった?」


 師匠が死んだ。このワードに反応したようだった。………当然だろう。年齢的には近かったハズだし、そこまで社交的ではなかった師匠のことを呼び捨てにしているほどだ。親友だったんだろうな。


「師匠は死んだ。老衰でな。俺は最初で最後の弟子で、完全に師匠に認められる前に逝かれたよ」


 死に際、確かに師匠は“私を越えた”と言ったが、それはおそらく俺に自信を付けさせるために吐いた言葉だろう。……つまり俺は師匠を越えてねぇし、師匠の弟子として一人前には程遠いってワケだ。まだ、“アルフォード”姓は遠いな。


「そうか……リヒトが死んだか。そうなのか………」


 悲しそうにしている店主を見ていると、師匠が息を引き取った時の映像が脳裏に浮かんでくる。師匠(リヒト・アルフォード)は、確かに俺の(リヒト)であり、最悪な人生をプラスに引っ張ってくれた人物だ。そして、浮かんでくる映像は……ベッドに横たわる師匠の最期………。ツラくなんかねぇよ。だから、視界が霞むのは目にゴミが入ったってだけだ。

 ……………はぁ、やっぱ、セラフィを連れてこなくてよかったな。




 やがて、過去の師匠との思い出に浸り終えたのか、店主が俺に話しかけてきた。


「………なぁ、つまりてめぇはリヒトの忘れ形見ってワケだな。なら、やはりてめぇは自由に武器を見てってくれ」

「だから、師匠の威光にすがるのは嫌だっつってんだろ? 実力を示して、認められなきゃ俺は買うつもりはねぇよ」


 ハルたちを待たせている。それでも、この爺に認められて武器を購入したい。そう思った。理由なんてねぇけど、強いて言うなら師匠との繋がりを持っていた人物に認められたかったのかもしれない。


「そうは言っても、なぁ。実を言やぁ俺が定めた年齢に達してないヤツには、相手にどんな実力があっても売らねぇことにしてんだ。だから、試験なんてコレっぽっちも用意してねぇ」


 む、それは困った。ってか、年齢制限とか意味あんの? ………そう思うのと、店の扉が開くのは同時だった。


「おい、爺! 今日こそは売ってもらうぞ!!」


 見た目、俺と同じくらいの年齢の青年。金色の髪をツンツンに尖らせ、ピアスをたくさん着けた不良ルックの青年。だが…………その目つきは全く鋭くない。自分では鋭いつもりだろうし、周りからもそう思われているのかもしれないが、眼光というかなんというか…そういう迫力に欠けた瞳だった。


「またてめぇか。売らねぇっつってんだろ? 出直せ」

「じゃあ、そこの黒髪黒服で真っ黒なコイツはどうなんだよ!」

「コイツは馴染みのヤツの縁者だからな、いんだよ」

「はぁ!? 贔屓すんじゃねぇ!!」


 どうやら、なんどもココで武器を買おうとしてきたヤツらしいが、一度も買えていないようだ。

 ここで俺は、一つの案を思いついた。


「なぁ、爺。俺から一つ、提案がある」

「あん?」


 鋭い眼光で、俺に目を向ける。………迫力だけで言やぁ、この青年よりも圧倒的に上だな。


「俺と、コイツが、闘う。んで、勝った方に武器を売る。………ついでに、年齢制限じゃなくて実力制限に変えてみるってのはどうだ?」

「……………確かに、実力と人柄が信用出来んなら、売ってやってもいいな」

「なら、それで決まりだ。文句ねぇな、そこのお前も」

「ここで買えるんだろ? 文句なんてねぇ! すぐにでも始めようぜ!」


 おう、始めてやろう。


「剣を抜け」


 俺の言葉を受けて、青年は腰に下げていた剣をスラリと抜き去り、構える。………………そして、すぐに恐怖で震えることになった。


「チェックメイト。………剣を抜いた瞬間から、戦いってのは始まってんだよ」


 ヤツの剣を、自身の長剣で真っ二つに断ち切ってやり、返す刀でそのまま首に叩きつけ…………寸止め。


「ほぅ……てめぇ、見事な剣技だな。まるで、リヒト……いや、少し剣筋がブレていたし、剣速もまだまだ、か」


 店主は、恐怖で気絶した青年を尻目に、俺に話しかけてきた。


「ああ、まだ越えてねぇっつってんだろ? それに、剣技に関しては完コピに挑戦しただけで、味気ねぇ。……俺の一番の得物はダガーと鋼糸だしな」


 この二つは師匠から教わっただけでなく、俺なりに改良を加えている。それなりに使えるつもりだ。


「ふむ……扱いの難しい鋼糸まで使いこなすのか? …………うし、決めた。てめぇには、特別製の武器を造ってやる。出来上がるまでこの町に滞在しやがれ」


 ……………決めるのは勝手だが、こっちの予定まで制限しないで欲しい。


 とはいえ、この偏屈爺が造る武器には興味があった。別に急ぐ旅でもねぇし、ここで新しい武器を手に入れておいてもいいかもしれない。


「なら、俺の仲間にも造れ。………それで、この町に滞在してやる」

「はっはっ! なかなかに生意気なガキだ。だが、てめぇのことは気に入った。明日、そいつらを連れてきな」


 結構気前がいいじゃないか。それなら、遠慮なく。………だが、少しはギルドで依頼を受けておかなきゃ、金額がマズイことになりそうな予感。ただでさえパーティは四人に膨れ上がったワケだし、セラフィとルナールもギルドに登録して、正式にパーティを編成しておこうか。


「了解した。んじゃ、とりあえず俺は宿に戻る。………あと、起爆札が切れかけてんだ。用意しといてくれ」

「おう、魔力操作も可能ってか。意外と万能じゃねぇか! 待ってるぜ!」


 万能っつっても、器用貧乏になりかけてる気もしないでもない。………まぁ、中距離型のオールラウンダーとしては丁度いいのかもしれねぇけど。

 そう思いながら、俺は武器屋を出た。


 …………途中、てっぺんが金色の粗大ゴミを踏みつけ、『グエッ』という声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。


 あ、そういや、粗大ゴミ(笑)の名前はどうでもいいけど、爺の名前も訊き忘れてたな。……まぁ、明日にでも訊いとくか。






宿屋に着いた。カウンターにて、チビども三人の行方を訊いた。そのうち、ヘタレでチビな茶髪が…………目の前で泥酔している。


 ………………なにコレ? 一杯で気絶? ないないない。止めてくれ、そういう冗談。


「つか、さっさと起きやがれヘタレぇぇぇええぁぁあ!!!」


呆れた俺は、とりあえずハルを地面に叩きつけておいた。




 後に、吐きそうな表情で引きずられる茶髪金眼の少年と、鬼の形相でそれを引きずる黒髪蒼眼の青年の噂が宿内で騒がれることになったんだが、それは誰のことだったんだろうな? くくくっ!



文中、光と書いてリヒトと読んでますが、ドイツ語では“光”は“リヒト”らしいですよ。


まぁ、レイにとってはリヒト・アルフォードという師匠が最初の“(リヒト)”ですので、そのような名前にしました。



さて、次回はハルくんがとある決心をするようですよ?


お楽しみに! ………していただけると、光栄です!



それではっ(^^)ノシ

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