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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
のんびり気ままな旅の章
35/84

今が楽しけりゃそれでいい。

この二人は……勝手に話を進めていきやがる(笑)



………どの二人がって? それは、本文でどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 うっわー………ちょー気まずい。このパータンは想像してなかったわぁ。……って、“パータン”ってなんだよ! “パターン”だろうが!!

 うん、動揺してますよ、そりゃ。なにか問題でも?


「ねぇ、レイ。ここちょっと狭くない?」


 確かに、ここは狭い。先程、一瞬はルナールも何とか入り込むことも出来たが、実を言えば俺とセラフィだけで結構ギリギリだったりする。………そのためか、たまに肘やら膝やらがぶつかり、異様にドキドキしたり………って、なんでだよ。イライラしてんだって。肘も膝もぶつけてくんなアホ女。

 そう思いつつも、そんなことを言えばケンカになり、さらに気まずくなるので、普通に返すことにした。


「ああ、狭いな。……一体、どんだけの荷物を運ぶつもりだよってハナシ」

「でも、商人ならこれが普通なのかもしれないわね」

「ああ、そうだな」


 …………………………………沈黙。

 会話が途切れた。やはり、気まずい。

 つーか、なんで俺はコイツに気ぃ遣ってんだ? 別に、一人旅で商人の護衛クエストを受けた時みたいに、無言で魔獣を警戒してればいいだけじゃねぇか。気まずいなんて思う必要はない。うん、そうしよう。魔獣の警戒を始め…。


「ねぇ、レイ…」


 始めよう、と思った矢先、セラフィが話しかけてきた。


「あ?」

「レイはさぁ、なんであたしまで連れてってくれるの?」


 『別についてきたくて一緒にいるわけじゃない』………そう言ったのはお前じゃねぇか。なんで今頃そんなことを訊く?


「そりゃ………なんでだろうな」

「はっきり、してよね」


 そんなこと言われても、ホントに分からない。………確かに、容姿は好みだが、性格は最悪。俺と一番波長が合わないタイプ。本当なら連れていくなんて考えることはない。あとは勝手に生きてくれって思うハズだ。だが、そうはしなかった。それはなぜだろうか。分からないが、あえて言うならば……。


「気になったのかもな」


 そう。気になった。それが一番正しいのかもしれない。


「気になった…って?」

「そのままの意味さ。……性格最悪で俺には絶対に合わない。しかも言い争いばかりになるお前だが………何故か気にかけなきゃいけない気がしてな。理由は、訊くなよ?」


 理由なんて、たいしたものでもないから。………ただ、親に捨てられたっていう経験が、俺と同じ境遇だったからってだけ。聞くにも(あたい)しない。


「そんなこと言われたら、訊きたくなるわね」


 ニヤリと。セラフィは笑う。……そんな笑みでも、普通に可愛いから不思議だ。

 これで性格も良ければ、最高なんだがなぁ。


「訊くなっての。………言いたくねぇし」


 だって、理由を言うには俺の過去まで語らないといけないから。………まだ、言いたくないんだ。


「えぇ~、気になるぅ~」


 と言うわけで、お願いだから上目遣いは止めてくれないか? 話しちゃいそうになるじゃねぇか。


「……じゃあ、一つだけヒントを」

「なになに?」


 身を乗り出して。左手を俺の右手の上にそっと乗せて。コイツは俺に迫ってきた。………そんなに聞きたいのか? そうだとしても、これは他の誰かが見たら誤解するんじゃねぇか?

 そう思いつつ、俺は何故か注意する気にはなれなかった。


「俺は、そんなにいい人生を送っていない。………それがヒント」


 過去に、親に捨てられた。それは、いい人生と言えるか?


「………さっきの話との関連性を見つけられないんだけど?」

「お前の頭の回転が遅いだけなんじゃねぇか? アホ女」

「今のはレイのヒントが適当すぎたのよ! この適当男!」


 このノリ。うん、こっちの方が俺たちらしい。こんなガキみたいな言い争いが、なんか楽しいんだ。ケンカしたら気まずくなると思ったが、こっちの方がずっと楽しいじゃねぇかよ。

 今は、それだけでいい。今もコイツと一緒に行動する理由なんて、それだけで充分だ。


「適当で結構。俺は、今を楽しめればそれでいいんだよ!」

「じゃあ、今は楽しいわけ?」

「お前はどうなんだ?」

「質問に質問で返すのはマナー違反よ!」

「知るか!」


 しばらく睨み合って………セラフィは不意に俺から離れた。


 ……………………ん? 離れた? 離れるスペースが……あった?


「おい、なんかいきなり広くなったぞ。なんでだ」

「え? いいい、いや、あの、別にあんたの方につめてたわけじゃないんだからね! 近づいていたいなんて、これっぽっちも思ってないんだから!!」


 顔を真っ赤にして怒る。そりゃもう、烈火の如く。………でも、俺の耳もたぶん真っ赤になってる。こいつがどう言い訳しようとも、わざと俺の方に寄ってきていたのは事実だから。

 だからって、俺がそれを態度に出すなんて有り得ない。


「仮に、お前が意識的に寄ってきてたとしても、俺からしてみれば暑苦しいだけだね!」

「な、なによ! わざとじゃないって言ってるでしょ?」

「だから関係ねぇって。どっちにしたって俺には迷惑。…そう言ってんだよ!」

「だ、だからって、言わなくても……いいじゃない…」


 あ、やべ。言い過ぎたか?


「わ、悪ぃ。言い過ぎたな。一応、お前は美少女なわけだし、嫌だとは思わないさ、うん」

「そんなこと言って、ホントは嫌なんでしょ? 知ってるんだから、あんたがあたしを嫌ってることくらい」


 セラフィは、拗ねたように下を向く。泣く? ………俺はその姿に、必要以上に動揺してしまう。クールが売りなハズだったのに…。


「い、嫌じゃねぇって。あの、その、あれだ、うん。とにかく、嫌じゃねぇよ、信じろ」


 何も答えず、セラフィは本格的に身体を震わせ、涙を堪えているような感じになってきた。…………あぁ、コレ、相当やべぇわ。

 そして、セラフィは行動を起こす。もちろん泣き…。


「ぷっ! あっはっははは!! レイも動揺するのね!! おもしろ~い!!」


泣き始めず、笑い始めた。……………おい、お前、俺を、ハメタ、な?


「う゛ぉぉぉい!!! ざけてんじゃねぇぞぉぉ!!!」

「だって、おもしろいんだも~ん♪」


 ぐっ……可愛いじゃねぇか。笑顔としては、百点満点だよこのヤロー。


「うっせぇ! 今すぐ笑いを止めやがれボケェ!」

「ボケって言う方がボケでバカなのよ~」

「じゃあ、お前はボケでバカでアホでドジだ、間抜け女!!」

「なっ! じゃああんたは適当でめんどくさがりで真っ黒で目つき悪くて冷たくて最悪よ!!」

「言ったなアホ女! じゃあお前は性格悪くて偉そうで………」

「むぅ~! あんた最悪!! だいたいあんたは………」


 こうして、馬車が国境に到着するまでの時間、悪口を言い合うことになった。………それでも。


―――――コイツと一緒にいる“今”が楽しいのか。


 もちろん、この思いは誰にも話さない。それでも、今が楽しいんだ。それだけで、コイツを連れてきたかいがあった。そう思えるよ。






 やがて、馬車は国境に到着した。

 ほとんど喋ることもなかったが、商人のセインとはこれでお別れだろう。ハルとルナールはそれなりに会話していたようで、残念そうにしている。


「別に、これで死に別れるわけじゃねぇだろ? そのうち会えるさ」

「そうですね。私は、世界中を旅している商人です。旅人であるあなた方とばったり他国で出くわす、なんてこともあるやもしれませんよ」

「ほんとう? ねぇ、ほんとう? はる」

「え? あ、うん。そうだと思う…よ?」


 はっきりしろよ、ハル。そんなんだと、ルナールに愛想尽かされんぞ?


「あえないの?」

「ほら、ハル。ちゃんと断言してあげなさいよ」


 セラフィもなんだかもどかしくなったのか、ハルに声をかけた。


「えっと、うん、そうだね! 会える、会えるよ! きっと」

「そっか、ならだいじょぶ。じゃあね、商人さん」

「はい。さようなら、ルナールさん。またどこかで会いましょうね」

「うん。またね」


 こっくりと、頷くルナール。本当に、子供らしい。………でも、ルナールって何歳だろう? 見た目は13~14ぐらいだが、喋り方とかは10歳前後な感じだ。


「では、皆さんもさようなら。縁が在れば、また……いえ、縁があるはずですので、また会いましょう」

「縁は信じねぇ。……だが、そのうち見つけだして会いに行ってやるさ」

「今度は、あたしたちともお話してよね」

「はい。次会う時は、二人の間でどんな進展があったかお聞かせください」


 ふわりと微笑みながら、しかし充分に俺たちをからかうような視線を向けて、セインは言った。…………おい、商人。その一言が最後を台無しにするわボケ。


 俺の心の文句を察したように、セインは馬車の御者台に乗り込んでしまった。


「それでは皆さん、また会う日まで!」

「またあう日まで!」

「また、会いましょう!」


 セインは手を振って、そしてハルとルナールが振り返して………そして俺たちが無反応なコトの理由を察して、微笑をたたえながら、ヤツは馬に鞭を打つ。

 そして、セインは遠くへ行ってしまった。……どうも、ヤツは苦手だ。悪いヤツじゃねぇんだけどな。なんかヤツの方が優位に立ってる感がムカツク。




 ………さて、国境には関所がある。俺とハルの身分は傭兵のギルドカードで保証されるが、セラフィとルナールはどうやって証明しようか。まぁ、それも衛兵を適当に騙くらかしときゃいいか。

 俺はそう考え、関所の方へ歩き始めるのだった。



軽く甘い(?)展開ですw


いえ、タダのケンカですね、分かります。



さて、やっとのことでミアルカンドに到着したどたばた四人組(笑)


しかし、おそらく学術都市・エレドニアは未だ遠いでしょう。


あたたかく見守っていただければ幸いです。



それではっ(^^)ノシ

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