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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
のんびり気ままな旅の章
34/84

“ハル”という基準

行商人のセインさんの馬車に乗せてもらい、トレスフィニアとミアルカンドの国境線に向かいます。

その先、目指すはミアルカンドの学術都市・エレドニアです。


……まぁ、それまでにいろいろ紆余曲折ある感じですが。



それでは、本文をどうぞ!

Side Hal. ~ハル・サイド~


「あー、商品を仕入れたばかりなので荷車の中狭いかも知れませんが……皆さん入れます?」

「無理だな」


 馬車には最初にレイと共にセラフィーナが乗り込み、さらに小柄なルナールが入るとそれだけで馬車の中は空間がなくなった。僕の座る余地、なし。え、僕どうするの?


「よし、ハル。お前だけ徒歩な」

「そっ、そんなああ!」


 レイの無情な発言にセインが軽く笑う。そして馬車の前方を手で示す。


「すみませんハルさん。御者台でもかまいませんか?」

「はい……乗せてくれるならどこでもいいですよ」


 すると突然ルナールがぴょんと荷車から飛び降りた。


「はるといっしょのとこがいい」

「御者台に来るの? でも座れないかもよ」

「え? ああ、大丈夫ですよ。少し窮屈かもしれませんけど」


 馬の様子を見ていたセインは振り返ってにっこり笑った。なんか、すきだなあ……この人が笑うと、ホッとする感じ。素敵だなー。と、まあそういうことで僕とルナールは御者台に乗り込んだ。レイとセラフィーナは荷台の中だ。一応言うけど、ふたりっきりで。


「あ、でもレイとセラちゃんが喧嘩しちゃうかもだよ?」


 僕の不安になぜかセインが答える。


「ふたりっきりの方が仲良くなれることもあるんですよ?」

「え、そうなんですか?」

「ふふ、そういうものだと思いますよ」






 御者台は前後二段に別れていて、前には馬の綱を引いたセインが、後ろの段には僕とルナールが座ることになった。

 ぱしーん。セインが二頭の馬に鞭を振るい、馬車が動き出す。


「名前なんていうの?」


 唐突にルナールが質問する。僕は何のことかわからなかったけど、セインは普通に答えた。


「ああ、この馬たちですか? 右の子がアンディくんで、左の子がラスティちゃんです。姉弟なんですよ。あ、お二人も……?」

「あっ、いいえ。僕達は、ついこの間、知り合ったお友達ですよ。ね?」

「うん。でもはるはお荷物で、わたしマスコットなんだよ」

「ルナールちゃああん……」


 さりげに傷つくよソレ言われると。気にしてるんだからね? 脱・お荷物を目指してるんだからね、僕!


「はる、うるさい」

「はいごめんなさい。えっ、テレパシー!? ……って、これレイのネタじゃん!」


 ネタではないと思うけどね。このやりとりを聞いていたセインがくすくす笑う。


「本当に仲が良いんですね、皆さんは。こんなに楽しいのは久しぶりですよ」


 本当に楽しそうだな。確かに僕達にぎやかだしね。喜んでくれてるからいっか。


「セインさんはどんなものを売ってお仕事してるんですか?」

「町で仕入れたものを他の町で売ったりすることもありますが、主に故郷の特産物を売り回ってますね」


 そう言ってセインは右腕を掲げる。そこには、鮮やかな色の糸で織られた腕輪が嵌めてあった。


「はる、あれきれい。作って?」

「え、えぇー、無理だよ」

「私の村は染め糸や機織りがさかんでして。商業のお守りとして、頂きました」


 てことは、綺麗な糸とか模様織りした布とかを売ってるのかな? だったら高く売れるよなあ。質の良い素材や織り模様だと衣服にもなるし。


「いつからこのお仕事を?」

「何時頃か……父の仕事を手伝っていたのでいつから始めたというのは覚えてませんね。でもかなり長いですよ」

「すごいねー。はるよりすごい。ずっとひとり寂しくないの?」


 ルナールの質問にうーん、とセインは考え込む仕草をした。っていうか、ハルよりすごいってなんすかルナールさん。基準値が僕なんですか。


「そうですねぇ。話し相手が居ないとつまらないですよ。独り言が増えたり、暇すぎて一人で歌唄ったりしますし」

「歌、ききたい」


 ルナールの無茶ぶりに苦笑するセイン。そして少し馬の速度を落とした。





 一人は空を駈け、一人は力を従える

 一人は闇を裂き、一人は剣を振るう


 湖に咲く花は道標 瞬く星は羅針盤のように

 いつも彼らを見守り ときに惑わす

 しかし 迷い見失ってはならない

 いつも 女神の加護があらんことを


 貴方の旅が太陽のように激しく 月のように静かな物語となりますよう……





 セインは恥ずかしそうに笑った。


「どうでしょう? 即興ですのでたいしたものでなくてすみません。皆さんをテーマにしてみました」

「かっ、かっこいいですね! すごいです!」

「はるよりかっこいい」


 まっ、負けた……って、その僕基準なに? なんか、僕が劣ってるみたい。いや、勝ってるわけではないんだけど。セインの方がかっこいいしさ、うん。


「ふふっ、ありがとうございます。褒められるのは嬉しいですね。あ、もうすぐ国境ですよ」


 さすが馬車だと早くて、セインはそう言って前方を指差した。




次回は“二人っきり”状態のレイとセラフィの会話が大部分を占めます、ご注意(?)くださいw



それではっ(^^)ノシ

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