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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
のんびり気ままな旅の章
33/84

今回は、ただのお人好しじゃねぇよ

面倒事を利用して、距離を稼ぎましょう(笑)



それでは、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 こんにちは、面倒事。歓迎しますよ。……………ええ、ホント、マジで歓迎してますって。


 だぁぁぁぁ!! またか!! またなのか??! どんだけ面倒事に好かれてんですかぁぁ??? 面倒事を引き寄せてるのは誰だよっ!!! ハルか、セラフィか、ルナールかっ!!? …………分かってる、俺だろ? ああ、認めてやるさ。




 とりあえず、俺はシノラインが表層に出ているハルに目配せし、セラフィを抱えてから道を外れる。そして、道の脇にある草むらに隠れた。俺の意図を察したようで、ヤツも俺についてきた。


「ちょ…!」


 抱えられたことにより、またもや顔を真っ赤にするセラフィの口を塞ぎ、耳元で話しかける。


「さっきの。見なかったのか? 未だ遠かったが、十字路の向こうから馬車がものすごいスピードで動いていた」


 言いながら、セラフィを草むらに降ろす。


「だからなんだってのよ」

「はぁ、これだからお前は……いや、まあいい。シノライン・ハッカー、お前、説明しろ」


 なんかめんどくさくなり、俺は裏ハルに説明を促した。あと、よろしく。


「はっ、フルネームで呼ぶな、気持ち悪ぃ。………で、説明だったか? 女の子と喋れんなら、別に構わねーよ。その代わり、俺がセラちゃんを取っても文句言うなよ、レイ?」

「…………冗談言ってねぇで、早く説明してやれ」


 なんで俺に確認を取ろうとすんだよ。セラフィをオトしたいなら、勝手にやってろ。俺は止めねぇよ。


「へーいへい。んで、セラちゃん。あの馬車、なんかおかしいと思わない?」


 コイツ、女性との会話では口調変わるよなぁ。


「はるじゃない人、たぶんあの馬車は速すぎるとおもう」


 いつの間にか起きていたルナールが、全く反応を示さないセラフィの代わりに答えた。


「おう、俺はシノライン様な。んで、ばっちし正解。じゃあ、なんであんなに速いんだと思う?」

「えと、なにかに追われてる?」


 またもや、答えるのはルナール。………セラフィ、お前は会話についていけてるのか?


「そう、その通りだよ。ルナちゃんは賢い!」


 裏ハルは、背中に負ぶっているルナールに向けて、笑みを一つこぼした。

 ………そして俺は、この言葉を受けてセラフィにそっと耳打ちする。


「………暗に、お前は賢くないって言ってるようなもんだな」

「う、うるさいわね! あんたが結論をさっさと言えば済むハナシでしょ?!」

「だってよ、レイ。言ってやれって………愛しのセラちゃんに♪」

「「黙れ、ヘタレもどき!!」」


 さっきから、裏ハルはタチが悪い。いい加減、止めてくれ。………朝のことは、忘れろ。


「おぉ、息ぴったり。こいつら、相性最高なんじゃね? なぁ、ルナちゃんもそう思うよね?」

「うん。レイとセラ、けっこん、しそうだね」


 ……………さりげなく、この子もタチが悪い。なんだよ、なぜか耳が熱い。


「しねぇよ」


 俺はそう返すのが精一杯だった。


「おうおう、二人して顔真っ赤じゃねーか。初心(うぶ)だねぇ、ひひっ!」

「…………冗談が過ぎると……殺るぞ?」


 正真正銘、毒塗りのダガー。少しでもひっかけば、それで事切れる。それを首元にそっと差し出した。


「全く、冗談のつもりでもねーんだけどなー」


 そう言って、ヤツは下を向く。そして裏ハル特有の刺々しい気配が失せ、ヘタレが表層まで浮上してきた。


「れれれ、レイ。と、とりあえずそれ、しまおう? ね? ね??!」

「………命拾いしたな、シノライン・ハッカー」


 ギロリと冷たい視線で金の瞳のその奥を睨み、俺は毒塗りダガーに覆いを被せ、懐にしまった。


「さて、話の続きだ。………あの追われてる馬車、助けるぞ」

「お人好し………悪い意味で」

「レイ、意外とやさしいね」

「はっ、今回ばかりはお人好しだってだけじゃねぇ。………助けて恩を売り、あの馬車に乗せてもらおう。そうすれば、一気に距離を稼げるぞ」


 ふふふ……無償で働くのはもう終わりだ。これからは、助けには見返りを求める時代が来る!!


「………あんた、やっぱ性格悪いわ」

「そんなに、やさしくなかったね」


 …………なんか、気分悪ぃ。なにコレ。俺、間違ったことは言ってねぇよな? 乗せてもらってる間は、護衛も出来るワケだし? そしてハル。お前は未だにさっきの脅しでガクブルしてんじゃねぇ。ヘタレの鑑といえる行動を、今ここですんな。


「うっせ。そろそろ馬車が目の前を通る。通り過ぎたら、後ろを追う魔獣を気付かれること無く潰してやる。……その間、この草むらに隠れててくれ」


 …………さて、今回使う武器は何にしようか。やはり、起爆札で蹴散らしとくかね。









「いやぁ、本当に助かりました。いやはや、あれだけの魔獣を一瞬で葬ってしまうとは。かなりの手練でいらっしゃる」


 目の前でしきりに感謝の意を示し、頭を下げているのは、スラっとした印象を受ける商人風の………というか商人の男。


「いえ、そんなことはありませんよ。私は道具に恵まれているだけです」


 俺は結局、魔獣の群れを、起爆札を爆発させて一気に潰し、馬車に乗ってる商人を助けた。

 …………そして、乗せてもらうために猫かぶりをしてみたりしているワケだ。


「はる、なんでレイはいつもと違うしゃべりかたなの?」

「えっと………なんで?」

「猫かぶりでしょ?」


 セラフィは、よく分かっているようで。………それを言ったら意味ねぇけどなぁ!!


「猫かぶり? なんのことやら、私にはさっぱりですね。きちんと、的を射た言葉を吐きやがれこの野郎……です」

「あの………旅人さん。口調、崩してくださっても結構ですよ?」


 商人の男は、苦笑いを浮かべて俺に話しかけてきた。

 そんなコト言うんなら、いつもの口調に戻してやる。意味なく敬語使い続けるなんてバカらしい。


「…………はぁ、じゃあ率直に。俺たちをミアルカンドまで乗せてってくれねぇか?」

「意味ないなら、最初から敬語なんて使わないでよね。気持ち悪いわよ」

「……………出来れば、学術都市・エレドニアまで乗せてくれるとありがたい」

「あ、無視しないでよね。意味ないことするなって、あんたも言いそうなことじゃないのよ」

「…………なぁ、商人。無理か?」


 俺はある一方から聞こえる雑音を完全に無視し、商人に向かって問いかけた。


「えぇっと……お連れさんに応えてあげなくてもよろしいので?」

「連れ? いやいや、コイツは俺のお荷物Bだ」

「じゃあ、僕がお荷物A??!」

「おう、よく分かったな、ヘタレ」


 ハルにしては、察しがいいじゃねぇか。


「じゃあ、わたしは?」

「ルナールか? ……ふむ、まぁマスコットとかでいいだろ」

「やった。わたし、マスコットだって、はる」

「うん、よかったね! 確かに、ルナールちゃんはマスコットだよね」


 まぁ、能力的にもお荷物でないことは確かだ。


「なによ、なんであたしはお荷物とか言われて、この子はマスコットなのよ。………いいわよ、どうせあんたも大人しい娘のがいいんでしょ?」

「別に? 活発な娘も悪くねぇよ。いや、むしろある程度活発な方がいい」

「え? じゃあ…」

「まあ、お前はありえねぇけどな」


 よし、ナイスコンボ。……………まぁ、実際はありえないこともないけど。いや、その“絶対”なんてものは、ほとんどないって思ってるからこそ、絶対にあいつを好きになることはない、とは言えないだろうというだけであって、別に他意はない、うん。


「むきぃぃ!! あたしだってあんただけは絶対にないわよ!! 大ッ嫌い!!!」

「言ってろ!! まぁ、俺のがお前のコト嫌いだけどなぁ!!!」

「あたしのが嫌いよ!!」

「俺だ!!」

「あたし!!」


 何、この不毛な争い。でも、止まらない。


「嫌い嫌いも好きのうち?」

「「ヘタレぇ!! 殺すっ!!!」」

「ひぃっ」


 ……あぁ~…疲れた。ハルも怯えすぎだっての。そしてセラフィ。なにコレくらいで息切れし始めてんの? てか、ハンパなさすぎるほど、はぁはぁ言ってんじゃねぇか。ホントにお前、大丈夫かよ?

 そんなことを思っていると、不意に軽やかな笑い声が聞こえてきた。


「ふふっ、おもしろい方々ですね。そういう風に気兼ねなく怒鳴り合える関係……私はとても素敵だと思いますよ」

「そうでもねぇよ。疲れるだけだ。……で、どうだ? 乗せてもらえねぇかな。もちろん、その間の護衛はするぞ」

「ええ。分かりました。命の恩人の頼み、喜んで受けさせていただきますよ。………それに、皆さんと一緒にいれば楽しそうですし」


 はぁ? 楽しい? うるさい、の間違いだろうよ。


「一人旅、というものは寂しいものでしてね。少しうるさいくらいが楽しく感じるのですよ」

「俺ぁ、一人旅のが気楽でいいけどな」

「でも、言い合いをしている時、あなたの表情はとても楽しそうでしたよ?」


 …………………そうでもねぇよ。そうでもねぇ、うん。絶対に、一人旅のが気楽だった。お荷物は要らない。……たとえ、今が楽しくても、要らない。

 あ、楽しいって認めちまった。


「そう見えたんなら、あんたの目は節穴だな」

「ふふっ、じゃあそういうことにしておきましょう」


 余裕持ちやがって。俺、なんかコイツは苦手かも。


「おっと、私としたことがまだ自己紹介もしていませんでしたね。……私の名前はセイン・エイムズといいます。乗せていけるのはミアルカンドとの国境までですが、よろしくお願いしますね」

「おう、そこまで乗せてくれりゃ充分だ。俺は、レイ。よろしく」

「僕は、ハル・カーストウッドだよ。よろしくお願いします」

「……はぁ……はぁ…セラフィーナ……アーヴィン……。よろしく…」

「ルナール・ラグシェンカだよ。よろしくね、商人さん」


 …………四番目に自己紹介したコイツ、ホントに大丈夫かよ。体力なさすぎ。言い争いだけで息切れるって、どんなだよ。

 そう思いながらも、俺は背中をさすってやることにした。…………そう、あれだ。息切れさせたのは俺にも責任があるワケだし、これぐらいの行動は普通なハズだ。



―――――だからハル。そしてセイン・エイムズ。そんなにニヤニヤするのは止めてくれ。



 途中で止めるわけにもいかず、俺はセラフィの背中をさすってやりながら彼女の動きを促し、助けた商人のセインが操る馬車に乗り込むのだった。……乗れとも言われてないのに、勝手に。


レイとセラフィには、ニヤニヤ出来る関係を求めています(笑)



これで、場所によって距離を稼ぐことが出来そうですね。


しかし、学術都市・エレドニアはまだまだ遠く、気ままな旅はゆったりと続いていきそうな予感です。


よろしくお願いしますね。




それでは(^^)ノシ

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