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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
のんびり気ままな旅の章
31/84

徹夜は身体によくないと、そう思うワケだ、うん。

徹夜明けのレイくんが軽く暴走します(笑)



それでは、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 “遠い思い出に浸りながら”………そうは言ったもの、俺の過去はそんなにいいもんじゃない。

 持ちたくもない属性の魔力を持ち、“闇”による自身の狂気に恐怖し、両親に捨てられるってだけ。聞いて欲しいと思うこともないし、よくよく考えれば思い出す気にもなれなかった。

 ただ、伝えたかったのかもしれない。“遠い思い出”というキーワードによって、つらい記憶を持つのはお前だけじゃない、と。それは、てめぇで乗り越えるもんだ、と。………それでも、いつでも頼ってくれ、と。

 呪いが解けて自分勝手に死にやがったら、生き返らせてもう一回殺してやるよ。……だから、勝手に死ぬんじゃねぇ。

 仲間のためなら、ひねくれた俺だって少しは頑張ってやらねぇとな。非常にめんどくせぇけど。


 そういうわけで、俺が過去を思い出すことなんてない。

 もし、そのような時があるとすれば……こんな星空の下、闇の中で煌く星たちを眺めながら、セラフィ辺りにでも語るのかもな。


 ………………って、何故にセラフィ? 一番、性格が嫌いなあいつに? 俺の思考も、とうとう腐ったか?

 がぁぁぁ、なんであいつの顔が浮かんでくんだよぉぉ! 鬱陶しい、引っ込んでろ!!


―――――こうして、俺の夜は悶々と更けていった。


 徹夜の上に、この精神状況は………結構キツイものがある。






 次の日の朝……というより早朝。

 目覚ましのために軽くいつもの修練の流れを順に潰していき、全員が起きてくるのを待った。

 とはいえ、未だに時間は早朝。すぐに起きてくることなんてあるはずもなく、俺は近くにある川で軽く汗と汚れを落すことにした。野宿ありの旅の中、俺たちが汚れを落す機会はあまりない。睡魔を追い払う意味でも、それは中々に有意義かもしれない。

 俺は張り巡らせていた鋼糸による罠を解き、川へ向かった。



 手早く水浴びを済ませ、持参したタオルで身体を拭いて、すぐに衣服で身を包む。

 ……………で、目が合った。おい、なにまじまじと見てんだ。


 し か も ! 何故にハル? 固まるな、キモイわ。


「おい、ヘタレ。どうかしたかよ」

「へ? いやぁ、鍛えてるんだなぁって」


 そりゃ一応、腹筋が割れるくらいには鍛えてるし、戦闘に役立つような筋肉はつけようとしているからなぁ。


「お前がひ弱でチビでヘタレなだけだ」

「いや、チビとヘタレは関係ないよね?!」


 ツッコミ、お疲れ。つーか、朝からコイツの相手なんてしたくねぇんだけど? ………昨日のシノライン・ハッカーのこともあるし、妙に接しづらい感じもする気がする。どうせなら、セラフィでも……って、昨日から俺の思考は腐ってる、おかしい。やはり、徹夜は思考能力を低下させんのな。


そう考えていると、ヤツは今思いついたかのように、俺に声をかけてきた。


「ねぇ、レイ」

「あ?」

「僕、どうしたら強くなれるかな?」


 いや、知らねぇよ。鍛えれば? それに、突然そんなこと聞かれても気持ち悪ぃよ。

 そう思いつつも、俺は一応、真面目に応えてやることにした。


「お前は……強くなりたいのか?」

「そりゃ……うん。ルナールちゃんやセラちゃんみたいな女の子も仲間になったわけだし、いつもレイばかりに頼るのはどうかなぁって」

「なに言ってんだ。セラフィの白狼……名前は“リア”だったかな。リアは充分戦力だし、ルナールの魔力は相当なモンだ。お前だって、シノライン・ハッカーを表層に出せば俺よりも強い場面はたくさんある」


 実際、その通り。一対一の戦闘で負ける気はねぇが、多対一の戦闘では、コイツらの方が向いている。なんせ、白狼ほど長くハイスピードを保てるワケでもなく、大規模な魔法を何発も使うだけの魔力を持ち合わせているワケでもなく、剣術を極めていたり体力にかなりの自信があるワケでもないから。


「え、でもレイはいつも余裕持ってて、なんでも出来るように見えるよ? ………正直、カッコいい。憧れるよ」

「憧れ? 俺なんかに憧れてるようじゃ、お前の成長はここまでだな」

「え~、そんなことないと思うけどなぁ」

「言ってろ。………強くなりてぇんなら、とりあえずその姿勢をもっと見せ付けてみな。いざという時でもヘタレてるようじゃ、俺はお前を鍛えてやる気にはなれねぇよ」


 ハルがなにか言おうと口を開くが、俺は完全に無視してテントの方へ戻っていった。

 そろそろ、セラフィたちも起きるだろうし。






 俺たちが戻ると、ちょうどよくセラフィたちも起きてきた。すでに着替えなどは済ませているらしい。水浴びなどしているはずもないのに、二人とも清潔感に溢れていた。………もしや、ルナールの魔法で身を清めたか?


「あら? 二人してドコ行ってたの?」

「軽く訓練」

「そう」


 おはよう……なんて挨拶はせず、疑問に思ったことを率直に聞いてきた。それに対して、俺は一言で簡潔に返す。はぁ、挨拶ぐらいしようぜ。


「あ、ルナールちゃん、おはよう。セラちゃんも」

「…はる、おはよう」

「おはよ! 今日は寝坊しなかったのね」


 ………挨拶ぐらい、しようぜ? こういう場合って、俺からするべきなんだろうか。


「えぇ、僕だっていつも寝坊してるワケじゃないよー」

「ははっ、そうね。でも、あんたは寝坊が似合うわよ?」


 ……………このモヤモヤ、なんだろう。超イライライライラすんだけど?

 まっ、きっと寝不足のせいだな。まったく、一回の徹夜でここまで精神状態に異常を来たすとは。俺もまだまだだな。

 そんなことを考えていると、唐突にセラフィが深い藍色の髪をふわりと揺らしながら俺の方に向き、ソプラノの声を響かせる。


「ねぇ、レイっ! まだ挨拶、してなかったわよね。おはよっ♪」


 笑顔一つ。スマイル0(ゴールド)。ありがとうございました。


「あぁ、おう。おはよう、セラフィ」


 …………………………………………………………。


 なにコレ。すげぇ嬉しいんだけど? なんかコイツ、俺の時だけ笑顔で来たんだけど?


「そういえば、僕も言ってなかったよね。おはよう!」

「わたしも。……おはよう」


 ハルはいつも通り、ヘタレた笑みで。ルナールは、何故か深~く頭を下げて。挨拶をしてきた。


「ああ」


 それに対して、俺は軽く手を上げて、声を発するだけ。………俺って、やっぱり結構無愛想なのな。


「なんか、セラちゃんの時よりテンション低くない?」

「……うん、つめたい」


 そこ、ハルとルナール! こそこそしてるっぽく、それでいて聞こえるように会話してんじゃねぇ。なんかイラつくわ。


「変わんねぇよ」

「変わってるよ」


 ヘタレが調子こくな、ボケ。


「それはともかく、さっさとメシにすんぞ」

「あ、逃げた! 逃げたよね、ルナールちゃん!」

「にげたにげた。にげるの、よくないと思うよ」


 ルナールも、軽くどついてやろうか? もちろん、ハルは耳の穴から脳みそを掻き出してやる。………いや、気持ち悪いからやめとこう。


「よく考えたら、セラちゃんもレイの時だけテンション高かったよね」

「たかかった。どう見ても、うれしそうだったよ」

「なっ、なにを言ってんのよ! 朝からこいつと会ったって、気分が悪くなるだけよ!! ………う、ウソじゃないんだからね!!」

 

 いや、ウソでもウソじゃなくても、どっちでもいいし? ただ、気分悪いって言われるのがすごくイラつく。…………気分悪いのはこっちだ、ボケっ!


「なによ! そんなこと言うからさらに気分悪くなるんじゃない!」

「テレパシー?! って、このネタじゃなくて、また口に出してたか?」

「ええ、思いっきり! やっぱあんたって最低ね! 幻滅したわ」

「知らねぇよ! 勝手に幻滅しとけ!」


 ホント、どうでもいい。…………ただ、こういう言い合いをしてると、テンションが上がってくるのは何故だろう。


「あっ! ひどぉい!! 女の子に言う言葉じゃないわよ!! 冷たすぎ!!」

「ほぅ、自分が“レディ”という高尚な存在ではなく、“女の子”という子供であることは認めたんだな」

「なっ! あんたはいつもいつもこっちの神経を逆撫でするようなコトばっか言って!!」

「俺は事実しか言ってねぇよ!!」


 おっと、セラフィが怒って突進してきやがった。そんな大振りの拳、当たんねぇよ。

 それに、くくっ………そんなコトしたら、そのまま身動きとれねぇようにしてやるぜ?


「なぁっ!!?」


 セラフィから、驚きと困惑の声が上がる。耳まで真っ赤にして、必死に俺になにかを訴えようとしてきたが………無駄だ、絶対に離してやんね。


 ………………………………………ん?


 セラフィ、俺の腕の中。俺、腕を強く締めて引き寄せる。

 ………………コレって、抱きしめてることになっちゃったりします?


「うぉう!!」


 すぐに離した。今までで一番早く動けたかもしれない。

 俺は大きく咳払いをして、もう一度言葉をはく。


「……さて、メシを食おうか」


 もう、いろいろと台無しだ。



―――――やっぱ、徹夜って身体によくないと、そう思った。




レイくん大胆~w


次回、このネタを使って、珍しくハルくんたちがいじる側に……なるやもしれません(笑)


お楽しみに♪



それではっ(^^)ノシ

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