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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
のんびり気ままな旅の章
30/84

裏のあのヒト、過去のハナシ。

今回は、潔くシノライン様(笑)視点でお送りしますw


しかし、結構シリアスのようですよ。



それでは、本文をどうぞ!

Side Shinorain. ~シノライン・サイド~


 どうも、寝れねえな。ハルはもう寝ちまったみたいだが。外ではぱちぱちと焚き火のはぜる音と、時折動くレイの影。俺はハルに気付かれないようにその身体を借用してテントから出でる。


「あ? どうした……って、裏かおまえ」

「裏じゃねえって言っただろー。シノラインでもハッカーでもどっちでもいいから名前で呼べよな」


 俺はレイの隣にどっかりと腰を下ろす。


「今起きといて四時間後の見張りはどうすんだよ。疲れて寝るとか言ったら……」

「寝ねぇーよ。器用に四時間寝るより徹夜の方が簡単だからな。俺はハルが動いているときに休めばいい」

「便利な構造してんな」


 俺とレイの間に沈黙の帳が降りる。俺、こういう時間苦手なんだよなあ。じゃあなんでレイに絡んできたんだってはなしだが……。癖で自分髪をくしゃっと掻く。


「あー……っと、くだらねえ話でもどうだ?」

「暇潰しになるんなら、聴いてやっても構わねぇよ」


 レイの許可も出たところで、夜長の暇潰しに与太話をひとつ。








 ある一人の男がいた。そいつは南部地方で生まれ、凛々しく育っていった。やがてお前らぐらいの年齢になったそいつは、故郷を出てたった一本の剣でその身の生計を立てていった。体格とセンスに恵まれたのか、田舎を出てから無敗記録を連ねていった。


 賞金首から手始めに、ばったばったと切り裂いていった。国への反乱分子を一掃したこともあった。だが……気付いたら自分が賞金首にされてたのさ。男はむやみに剣を振るいすぎた。そうと知ってからは、逃げて逃げて、逃げ倒した。そして、とある女性に出会った。彼女はエルフだった。


 エルフっつーのは、無駄に長生きで、なかなか不思議な生き物なんだな。人を殺したと言っても賞金首だと言っても驚きやしねえ。まあ、エルフの世界に賞金首なんかいないんだろうが。


 とにかく、そのエルフに匿ってもらって、しばらくの時を過ごした。彼女は男に協力的だったし、男も彼女に好意を抱いていた。

 さっさと彼女のもとを離れていけばよかったんだがな、彼女は人間とツルんでるという理由でエルフのコミュニティからハブられてしまった。仲間も家族も彼女から離れていった。それでも、彼女は俺に微笑んでくれた。


 だが悪いことは重なるな、俺は正義を名乗る輩に襲撃された。賞金首だったからな。俺に怪我はなかったが、傷つけられたのは彼女だった。ざっくり、腹をやられていた。まあ、エルフっつーのは、生命力も寿命も常人を遥かに凌駕するんだが、そんなことはどうでもよかった。俺のせいで彼女が傷つけられた、そのことで頭がいっぱいになった。


 俺は怒り狂い奴らを消した。殺すだけでは足りない、と思うくらい、彼女を愛して愛して愛し倒していたんだな。自分でも気付かないうちに。だから、傷つけた奴を許せなかった。奴らが息絶えてもなお、俺は剣を振り続けた。俺の女神になんてことをするんだ、ってな。


 奴らを始末し終えたら、俺は彼女に謝ろうと思った。俺のせいで怪我をさせてしまった、本当にすまない、と。彼女はいつものように俺に、微笑みを投げ掛けてくれると思っていた。


 そんなことはなかった。彼女の恐怖におののく顔がそこにあった。そりゃ、そうだよな。この男のせいで自分は仲間を失い、腹を裂かれ、挙げ句の果てに男は自分の名前をつぶやきながら人を殺しているんだから。これほど怖いこともないわな。


 俺は瞬時に思った、終わった、ってな。同時に俺が彼女を縛り付けてることを知った。俺は彼女の枷でしかなかったんだ。


 彼女はすぐに笑顔を取り繕った。見上げた根性だぜ。自分の感情よりも俺のことを心配してくれた。多分、俺はそれほど酷い顔をしてたんだな。


 彼女の無理な笑顔を見て、おれは死のうと決意した。はっ、極端だよな。愛されなかったから死ぬ。でも、あの時は人生を懸けて彼女を愛し、守りたかった。そしてあの時は、俺が死ぬことこそ、彼女を愛し、守る術だと思った。まさに人生を懸けていたんだ。


 彼女は止めたさ。だが俺は止まらない。今すぐ死ぬつもりだった。あの時の俺は狂っていた。しばらくして彼女は言った、私が殺してあげる、と。


 彼女が殺してくれるなら本望だ。俺は喜んだ。何度も言うがあの時は狂っていた。でも、彼女は俺を殺さなかった。当然といえば、当然だよな。俺を殺すはずはなかった。


 彼女は俺の魂を抜き取り、剣に封刻した。凄い技だぜ。並みの魔術師では確実にできない禁忌だ。俺を殺すことはしなかったが、俺は死ねなくなったんだな。彼女は俺を封印した剣を川に流した。


 そして剣は人の手に拾われ、転々と渡っていった。そんな状態のまま百年は過ぎていった。


 俺は……いや、その男は一人の女を深く愛することはなくなった。そして人を殺すことにためらいを持つようになった。どちらも、嫌われたくないがための行動さ。








「その男は今も、自分にかけられた呪いを解いて死ぬ術を探してさまよってるんだとよ」

「その死に損ないは元気か?」

「今はとあるヘタレの下で従事してるらしいぜ」


 レイは焚き火を掻く。俺は空を見上げた。冷たい風が星をさらに輝かせている。


「つまらねぇ話だったな。詫びといっては難だが、お前はもう休め。あとは俺が番をする……遠い思い出に浸りながらな」


シノラインさん……あんた、呪いが解けたら死ぬつもりですかい?



それではっ(^^)ノシ

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