さて、主要メンバーは揃った。
これで、ハルとレイのパーティは完全に揃います。
まぁ、某竜的クエストと同じ四人編成のパーティですね。
それでは、本文をどうぞ!
Side Hal. ~ハル・サイド~
「―――――。どうする?」
「いく」
ルナールは即答だった。え、そんなに即決してしまっていいの? なんか……故郷に未練とか、愛着とかないのかなぁ。しばらく家族と離れ離れになるのに。一緒に旅ができるのは、楽しいし嬉しからいいんだけど。
「皆さんのお役に立つことができるか?」
ピーターがルナールの顔を覗き込む。兄妹の、別れの素敵な場面だ。ピーターはぐっとルナールを抱きしめる。なんとも絵になる二人。と、それを眺める冒険者三人(うち二人は素人だが)。
「うん」
ルナールはこっくりと頷く。なんだか、幼い子の返事みたいだな? 可愛らしい仕草だからかまわないけどさ。
さっきから見ていて思ったが、ルナールは普通の女の子とは少し、違う気がする。悪い意味ではなくて、小動物的な動きをするということ。歩く音も、とてとて、ぺたぺた、が似合うような。人間離れしているといえば(その魔力も含めて)、そう言えるんだよな。 ピーターは、僕達に向き直った。
「ルナールを、お願いします」
大事な妹を手放すというのはどんな気分なんだろう。大切なのに……あ、大切だからこそ、なのかな。かわいい子には旅をさせよ、みたいな?
「ねっ、ねっ、そう言ってるんだから、連れてってあげなさいよ!」
「いちいちうるせえな! お前に言われなくてもわかってんだよ! それで、ルナール。俺たちは危険とやっかいごとが付き纏う旅をしてるんだが……戦闘は出来るか?」
「うん。ほんとのお母さんに教えてもらった」
……先ほどのサンドマンの力から見て、相当な腕のお母さんだったんだなぁ。
精霊というのは、魔法や召喚獣などとは違う。むしろ、その二つの中間といっていいだろう。
そもそも、精霊とは異世界にいるのではなく、僕達と同じ空間に生きている。ただ単に、その姿は見えないだけで。契約を結び、絶対的な力で召喚獣そのものを行使する召喚士などと違い(もちろん例外もいるが)、精霊はその能力だけを借りることで力を得る。
また、魔法とは、世界に普遍的に存在する力―――マナを呪文により構築し、具体化させることにより様々なことができるのだ。
そういうことで、魔法や召喚士とはちょっと違う種類の能力者、精霊使いが存在するのである。
って、こないだシノラインに教えてもらった受け売りなんだけどね。
「なんか、一緒に行こうって誘っておきながら、こうもあっさり了承されると反応に困るわね」
セラフィーナがため息をつく。でもその顔は笑っていて僕も嬉しくなる。それでも、ちょっと不安。
「ねぇ、ルナールちゃん。お兄さん達と離れ離れになるけどいいの? 多分、安全な旅行にはならない気がするんだけど」
ルナールは僕の顔をまじまじと見る。こうもガッチリ目を合わせられると緊張するな。
「……だいじょぶ。外のせかいでほんとのお母さんさがすから」
さっきも、ほんとのお母さんって言ったし、ピーターもルナールを拾った的なこと言ってたような。肉親を探すために世の中に出る、か。目的があるってすごいなあ。
「魔法は使えるな?」
「……うん。精霊も呼べるよ」
「あの、本当によろしいんでしょうか?」
ピーターが済まなそうに言う。
「その、ルナールは、たまに力の制御を誤って……さっきだって聞いた話によると、サンドマンの力を異常行使したとか」
「大丈夫ですよっ! いざとなったらレイがなんとかしてくれるし! でしょ?」
バシーン! うっ、脳天がっ! 僕の頭を全力で叩いたにも関わらずレイは平然とピーターに答える。
「まあ、こいつの言うとおりじゃないが、要するに暴走させなければいいだけだろ。こいつが責任を取る」
「ええ、僕!? ……がんばります」
自信はないけど。それよりも彼女と一緒に旅がしたいと思う。ピーターも軽く笑いながら頭を下げた。これにて、レイと愉快な仲間たち完全結成!
明日の早朝にこの町を立つことになった。
ルナールのお兄さんであるピーターは言う。
「朝早いうちに町人たちに見つからないように行ってください。みつかったら町
の外に出してもらえないでしょうし……大丈夫、彼らには私から上手く言ってお
きますよ」
この言葉通り、屋敷の数室を借りて今日は早く休むことにした。
「うわ。こんな広い部屋一人で使っちゃっていいのかな? あ、ねぇ、シノライン?」
呼び掛けてみたが、シノラインからの返事がない。
「シノライン……?」
『は? あぁ、なんだ?』
「どうかした?」
またも彼から返答がない。え、もしかして寝てる? と思ったが、なにやら悩んでいるようだった。
『あの子に会った気がするんだが……俺がー、こうなる前に』
こうなるって、剣に封印される前? それって百年も前の話じゃないの? え、そんなに長生きには見えないよ、ルナール。
『だから、悩んでんだよ。会ったことがあるっつーか、似てるんだよなー』
誰に似てるの? と訊く前に、ノックの音がした。レイかな?
「はーい? 開いてますよー」
「……はる?」
驚いたことに、僕らが話していたルナールが部屋に入ってきた。何の用だろう?
「うん、僕ハルだよ。それとー……」
『やめとけ。初対面の男にんなこと言われてもわけわかんねえだろ』
シノラインの紹介をしようとして止められた。うーん、ルナールならわかってくれる気がするんだけどな。
「わかるよ」
「え?」『は?』
「はるじゃない人がいる。よくわかんないけど、わかる」
それはー……どゆこと? シノラインの存在が見えるってこと?
「その人に言っといて。私あなたのこと知ってる、って」
それだけ言うと、ルナールはぱたんと部屋から出ていってしまった。本当に用事はそれだけらしかった。
「……シノライン」
『どうやら、俺はルナちゃんに何か握られてるらしいぞ?』
翌朝、太陽が昇る少し前、レイが爆睡中の僕を手荒く起こしにきた。具体的にどうなったかというと、昨日たたかれた頭がまた痛みだしたわけだ。
支度を整え屋敷の玄関ホールに降りると、すでに全員集合していた。もちろん、ルナールも。彼女は初めて会った時と同様に黒く大きなポンチョをかぶっていた。
「ごめんー」
「早く行くぞ」
屋敷から出るとほぼ同時に太陽が昇りはじめ、周囲を金色に染め上げていく。素敵な旅立ちだ。そして僕ら四人は、太陽に向かって歩き始めた――――。
あ! 結局、僕たちが“もたらしたモノ”ってなんだったんだろう? ルナールちゃんの予言では、はっきりしてなかったみたいだけど…。
でも、もたらしたモノがルナールちゃんの幸せだったら嬉しいなぁー………なんてね♪
次回、新章です。
よろしくお願いします!