表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
拝まれ未知数少女の章
23/84

閉じこめられました。マル。

面倒事、カモン♪

という回です。


今回、チェス用語が軽く出てきますが、気にしないでください。


それでは、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 ……………絶望しかない。なんだ、この宿。入った途端に閉じ込められましたが?


 だぁぁ!! ざっけんな!! なにが目的だ姿現せやブン殴るぞオイっ!!!




 祈祷師や呪術師的な存在が牛耳る陰気な町、フィナレア。

 そこの町人に、唯一あるとして勧められたこの宿。ボロいのは外装だけで、中はしっかりと造り込まれ、魔力の残滓の感じからして耐久度が底上げされる魔法をかけられているようだ。

 そこに俺たち三人が入った途端、扉の鍵は閉まり、開けることなど不可能な状態になったり。

 俺の使える魔法で、壊せないことはない。だが…。


「こんなトコであんな魔法ブチかませば、そりゃ俺たちもこの宿に押しつぶされるのと同義ってか」


 溜め息しか出ない。ついでに、さっきから聞こえないフリしてるが、セラフィの喚く声がいい加減うるさい。


「ちょっとレイ! 聞いてんの?! 早く出られるようにしなさいよ!!」

「うっせぇ!! 今考えてんだ!! 静かにしなっ!!!」

「こ、こういう時こそ落ち着くべきじゃ…」

「「ヘタレは黙れ!!」」

「うぅ……」


 ふぅ、恒例行事(笑)を終えたところで、現在の状況を確認しておこう。


 この宿、外観からも分かる通り、おそろしく狭い。一階部分は全てロビーとなっているが、それは通常の宿の二分の一程と言えるだけの広さしかない。二階部分は四部屋だけ、客室のようなモノが並んでいた。

 そして、目ぼしい道具や食料の類は……ない。


 …………………これ、勝ち目なくね?


 なんどチェックをかけられれば気が済むのやら。


 あ? “チェック”の意味が分からねぇ? てめぇはチェスを学べ!

 それとついでに言っとくが、まだチェックメイトではないからな?


「ねぇ、さっきからレイくんは何をぶつぶつ言ってるの? ………少し怖いよ?」


 …………いつの間にか、思考を口に出していたようだ。つかハル、そんなコトいちいちツッコんでくんなよ。


「というより、壊れた?」

「うっせぇ! 声に出した方が考えやすいんだよ!! ってか、俺にばっかり頼ってねぇで自分も考えろ、アホ女!!!」

「アホとはなによ! あんたよりよっぽど色々学んできてるのよ!!」

「だからケンカは…」

「「うっさい!!」」


 調子が狂う。こんな短時間に同じネタをやらせるな。さすがに飽きるわ。


「さて、気を取り直して…」

「いや、僕の扱いなんか酷くない?!」

「うるせぇ。一応、三人寄れば文殊の知恵作戦(前回失敗)を試すんだ、静かにしろ」


 俺の言葉に従い、皆が口を閉じて考え始める。そして論議し、状況を纏め、解決策をだしゃなんとかなるかな。閉じ込められた理由とかも気になるっちゃ気になるが、今は脱出が先決だ。








……………考えた。考えて考えて、考えた。


つまり考えただけ。成果はゼロ。没になる案どころか、案そのものが出ない。そんな状況、コレ如何に?


「おい、セラフィ。なんか喋れ。部屋の空気がすげぇ陰鬱になってるぞ」

「うるさいわねぇ。あんたが喋りなさいよ」


 セラフィに話しかけたのが間違いだった。


「おい、ハル。お前、なんか芸やって場を盛り上げろ」

「うぇえっ?! ぼ、僕ぅ??! そっ、そんなの今すぐは思いつかないよっ」

「使えねぇな」

「酷い!!?」


 あぁ~、ふざけても全然テンション上がんねぇな、おい。

………もう、魔法ぶっ放すか? 上空に放って、瓦礫やらまで全て吹き飛ばせばいけそうな気がしないでもない。

だが、その場合は俺の魔力はほぼゼロ。俺らを閉じ込めようとしたヤツが、こちらに襲い掛かってきた場合に大きな痛手となる。


 ………………もしかしたら、もう既にチェックメイトなのかもしれない。


 いや、俺のコートにある四次元ポケット(笑)から、『何かないか何かないか』ってやれば、もしかしたらイイモノが見つかるかもしれない。

 そう考え、俺はロングコートの懐に手を突っ込む。

 みつかるのは、ダガー、ナイフ、起爆札、鋼糸、長剣、盾、メイス、鎖鎌、暗殺用の針etc.etc.etc.……。他には、食料や衣類などの日用品が詰め込まれている。

 まぁ、どこぞの青狸のように万能な四次元ポケットというわけでもなく、そこまでたくさんのモノが入るわけではないんだが。


一見使えそうなのは起爆札。ダガーにたくさん貼り付け、魔力を込めて天井に投げ、爆発。俺の魔力反射によって上空に跳び、逃げ去る…と。

 だが、結局は魔力消費が激しいことに変わりない。セラフィに魔力を込めさせるにしても、そんなことすりゃ白狼の呼び出しが不可能になる……。


「レイ~、やっぱなんにも考えつかないよ~」


 うっせぇ、ヘタレ。今、考えてる途中だろうがよ。………って、ハルが魔法使ったトコなんて見てねぇが、コイツって魔法使えねぇのか?


「おい、ハル。お前、魔法使えるか?」

「え? あ、あぁ、うん。ちょっとだけなら?」


 ビンゴ。………コイツ(裏)の戦闘スタイルは、基本ダイナミックでアクロバットな剣技が中心であり、それ以外の能力には期待していない。

 つまり、コイツの魔力がどんだけ減ろうが、戦闘に及ぼされる影響はほぼゼロってわけだ。


「どこまで使える?」

「えと、ちょっとした回復……だけかな?」


 ……………少し心もとないが、まぁなんとかなるだろう。少しでも魔法が使えんなら、魔力の注入を行うほどの魔力操作は可能だろうし。


「あんた、さっきから何が言いたいわけ?」

「あぁ、今からこのヘタレに魔力を起爆札へ込めさせて、天井を破壊しようと思ってな」

「なんで天井? というより、あんたが自分で魔力込めればいいじゃない」


 …………一々説明がめんどくさいが、とりあえず答えてやろう。


「天井を爆破する理由は、壁を壊せば支えがなくなり、天井が落ちてくる危険性を秘めているから。俺が魔力を込めないのは、ココに閉じ込めてきたヤツが攻めてきた場合、俺の魔力が足りないと戦力的に困る」

「あんた、魔力がないとなにも出来ないわけ?」

「別に。最善の状況で抜けだしたいだけだっての。魔力操作と魔法反射による“影走り”やらなんやらは、俺の優位なポイントで、戦闘において役に立つわけ。それを失った状態で戦って、死にたくはねぇだろ?」


 確かに……と、そう思ったのか、セラフィは意外にも素直に引き下がってくれた。……まぁ、説明が長くなってしまったが。それに、戦うことが決まったってわけでもねぇし。


 さて、さっさと抜け出す計画を実行するか。


「よし、ハル。用意はいいな?」

「えっと、たぶん?」


 ……………やはり、コイツには期待できない、と思ったのは俺だけじゃないハズだ。


 それでも、優位な状態でココから抜けだすにはこれしかない。三人で二階に上がり、ダガーを一本と、起爆札を数枚取り出し、ダガーに装備……そして構える。


「ハル、起爆札に書いてある小さな魔方陣、あるだろ?」

「うん、そこに魔力を込めればいいの?」

「ああ。ありったけ込めろ」


 セラフィが珍しく無言で見守る中、ハルが起爆札に手をかざす。

 純白の魔力光が起爆札にどんどん流しこまれている感覚を受け、そろそろ爆発の兆しが見えてきた。


「よし、ハル、もういい」


 ハルがかざしていた手を離した瞬間、俺はダガーを天井に向かって投擲した。


 ヒュンッという鋭い音を聞きながら三人で床に伏せ………激しい爆発音が鳴り響いた。




 天井には、非常に大きな穴があいた。雲の合間からのぞく太陽が眩しい。

 そして、下から騒ぎ声と共に、何人もの人が侵入してきた。…………何故に?


「なんだ! なにをやらかした、余所者!!」


 いや、閉じ込めやがったのそっちじゃん。


「せっかく迎えにきてやったというのに!」


 随分、高慢な方々のようで。


「おい、旅の者よ! 私たちのあがめる祈祷師様と謁見しろ。それまで、逃げ出さぬようにここに入れたと言うのに……逃げ出そうとするとは」


 唐突に、理不尽に閉じこめられたら、普通は逃げようとする。………そう思うのは俺だけじゃないハズだ。


「とにかく、今、フィナレアは未曾有の危機に陥っているのだ。旅人ども、協力のために祈祷師様の神殿まで、来てもらおうか」

「なんであたしたちが…」


 反論しようとセラフィが口を開くが、俺はその口を押さえて、耳元で忠告する。


「この数相手に、殺さずに逃げるなんて無理だ。ここのヤツらも少し困ってるようだし、とりあえず今は大人しくしとけ」


 …………別に、お人好しってわけじゃねぇからな。ただ少し、困ってるなら助けてやりたいと思っただけだ。町民の全員がコイツらのようなヤツってわけでもねぇだろうし。

 ってか、なんでコイツは顔赤くしてるわけ? そんなに怒り心頭ってか? 意味分かんねぇよ。


 とにかく、その後は特に反論もなく(当然、ここで反論できないのが、ヘタレがヘタレ足る所以だ)、俺たちは祈祷師様(笑)がいるらしき神殿へと連行されるのだった。

 とりあえず、ここから安全に抜け出すために。そして何より、ここの町民たちを助けてやるために。


 あ! 今、お人好しとか言ったヤツ誰だ、オイっ!! 俺は好きでこんな性格になったわけじゃねぇからな?! よく覚えとけっ!!!



結局は、お人好しさんのようです(笑)




ここで、一応“チェック”について説明を。


チェックとは、将棋で言う王手という状態、つまり“ここで逃げなきゃ負ける”という状況ですね。

逃げ道がないワケではないけど、軽くピンチ~的ニュアンスでいいと思います。

そして“チェックメイト”は詰みですので、簡単に言えば“打つ手無し”でしょうか。


ちなみに、レイがよくチェックやらチェックメイトやら言うのは、彼がチェス大好きって設定があったりするからです。

…………まぁ、レイがチェスをやっている場面を書くかどうかは分かりませんが(笑)



それではっ(^^)ノシ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://enq-maker.com/htYrz82
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ