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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
新しいお荷物、回収の章
18/84

業務用笑顔が続くことは稀。

ハル・サイドです。


とりあえず、領主さんを懲らしめておくことにしましょう(笑)



それでは、本文をどうぞ!

Side Hal. ~ハル・サイド~


「れっ、レイくん!?」


 と、僕が叫ぶ前に隣にいた藍色の影が飛び出した。


「待って!」


 制止する間もなくセラフィーナはレイの腕にしがみついた。レイは一瞬驚きの表情を浮かべたが、頭を振って溜め息を吐いた。そして僕を睨み付けてきた。


「セイルスに戻れと言ったはずだが」

「あー……いや、僕じゃなくてシノラインがさぁ」


 忘れていた、なんて言えない……。


「もういい。どうせ俺の忠告なんて頭に残らなかったんだろ」

「うぐっ」


 思わず漏れた声にレイは、心底呆れたという顔をした。いいいまはそんな場合じゃないでしょ!


「見張りに出てた衛兵は全員、首を掻かれて死んでた。あんたがやったんでしょ」


 鋭くセラフィーナが問う。

 そうだった。僕達は誰に咎められることなく屋敷内に侵入することができた。なぜなら、首無しの死体にしか出会わなかったから。

 レイは吐き捨てるように言う。


「ああ。ああいう輩は死ねばいい。そう思わねぇか? 金のあるヤツに尾を振ることしか能のない人間。いや、人間かどうかも怪しいな」

「それで、どうするつもりだったの?」

「悪党は一人残さず罰するつもりだったが……やりにくくなったな。だが俺はこいつらを許したくはない。…………はぁ、めんどくせぇな。協力しろ、お前ら」




 レイは領主の居る執務室の扉をノックする。そして返事も待たず中へ。


「失礼いたします」

「なっ、なんだ!? 何者だ!」

「初めまして、リディス領主様。(わたくし)は旅の商人でございます。依頼の品をお届けに参りました」


 レイが目で合図する。指示通り僕とセラフィーナが執務室内に入る。

 そのとたん、領主の顔が驚愕に染まる。


「セラ! お前、どこに行っていたんだ!」


 領主に駆け寄ろうと(するフリを)するセラフィーナだが、彼女は僕の握っている紐で腕を縛られている。領主ははっとしたように僕たちに謝辞を述べる。


「ありがとうございます。この謝礼は弾ませていただきますから」

「それはこちらとしてもありがたいのですが……」


 レイが顔を曇らせるフリをした。


「実はお嬢さん、私たちの全財産を窃盗……しましてね」

「なにっ!? 本当なのかね」


 セラフィーナは俯いて肩を震わせている。もちろん泣き真似だ……いや、声を殺して笑っている?


「なっ……なんてことを!」

「それに、意図はなかったとはいえ、我々の仕入れた売り物も損傷してしまいまして」


 領主はぶるぶると震えながらセラフィーナを睨み付けている。親がする目付きとは思えない。


「つきましては……報酬とは別に、弁償金と慰謝料を用意していただきたいのですが。私たち、生きる糧を失ってしまいましたので」

「そ……それは無茶な」

「まあ……私も鬼ではないので、そうですね、代わりに娘さんを譲っていただけませんか? こちらも人手不足でして。損失分は働いて返して頂ければ構いません」

「そうですか。い、いやっ、困ります……。そ、そうだ、数日後には金が入ります。それまで待って頂ければ」


―――――娘を売り飛ばすからですか?


 領主は目をくわっ!! と見開いた。鬼も驚く形相。僕は腰が引けた。


「誰がそんなことを……。そんなこと、するわけ無いじゃないか!」


 レイは息を吐く。業務用の笑顔はとっくに掻き消えている。


「はあ……。知ってんだよ。あんたが“影”と繋がってんのを」

「影とはなんだ!? 私は知らない!」

「子供を買い漁って高く売り飛ばしてんだろ」

「あっ、あれは向こうが焚きつけてきたんだ!」




 お?


「そうか。お前のせいじゃないのか?」


 言葉とは裏腹に、レイは領主の喉元寸前にダガーを突き付けていた。ひゅっ、と領主の喉が鳴る。


「テメェみたいな下衆な輩に敬語使うなんざ反吐が出る」


 領主は酸素が回らないのか、口をぱかぱかと開く。言葉は出てこない。


「もう、いいんじゃない?」


 なんだかかわいそうになってきて、僕はレイに声をかけた。レイはダガーを降ろす。

 安心感からか、領主はずるずるとへたりこんだ。


「た、助けてくれセラフィーナ、そこの君!」


 え、僕? でもその人は悪い人じゃ……って、さっきもやったような。


「さて――」


 レイはいたぶるように領主をねめつけてから口を開いた―――。



次回で、この章は完結します。


お楽しみに! ………していただけると嬉しいです。



それではっ(^^)ノシ

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