彼の頭の中は、お花畑で出来ている。
ハルくん、あなたはとうとう壊れましたか? いや、もともとか(笑) という回?です。
少し短めですが、本文をどうぞ!
Side Hal. ~ハル・サイド~
ふっふふんふふっふっふーん! あ、笑ってるんです。
だって相棒だなんてしかもレイくんの相棒なんてー! ……“馬車馬”っていうのが気になるけど。でもお別れしなくてすむからいいやー!
「ねっ、ねっ、宿から荷物持ってくるから、待ってて! 先に行ったりしないでよ!」
「貴重な労働力を置いてったりしねぇよ」
「え?」
「早く行ってこい」
ま、いっか! 心なしか対応が優しいし。
僕は今までにない素早さで宿に戻り、荷物をまとめ(たいした持ち物は無いが)、部屋の鍵と代金を受付に置き、走って酒場に帰る。
走っている途中、宙返りでも決めたい気分だったが、手首が折れるかもしれないので止めた。でも、空を飛べるくらい嬉しかったのは本当。きっと今は自由に空も飛べるはず~♪
浮かれすぎていたのか、シノラインが諌めてきた。
『お前、調子に乗って後転飛びなんかすんなよ。足なんか折ったら暴れらんねーぞ』
「跳ばないよお。ただ、嬉しいだけだよ! だってレイくんが僕を必要としてくれたんだしー」
なぜかはわからないが、シノラインは大きく溜め息をついた。なんで?
『そりゃ、おめでたいというか、おめーの頭がおめでたいというか……。よかったな』
「僕すごいがんばるからね。シノラインも手伝ってね!」
『レイが求めてる仕事の大半は、俺のだと思うんだがな……。ま、戦えるんなら文句は言わねえぜ。頑張れよ』
「うんー!」
酒場の前にはすでにレイが待っていた。たどり着くなり今回のクエスト概要を教えてくれた。
「クエスト内容はある程度聞いておいた。依頼主は過保護な父親、獲物は家出娘。この町にくる途中で迷ったらしい」
隣の町に来ることにすら迷うなんて、かなり方向音痴なんだな。僕も人のこと言えないけど……。実はセイルスに来るまでずっとシノラインに道案内してもらっていた。それでどうにか迷わずたどり着いたのだけど、やはり一人だとキツいのかも。
「女の子が、一人で? 平気なのかな」
「行方不明になったのが昨日の晩、ギルドに依頼を出したのが今朝。緊急クエストだから、それほど大事な一人娘ってことなんだろーな」
そうなのか。確か、隣町の領主の娘さんだとか言ってたような。家出するほど嫌なことでもあったのだろうか。それとも、外の世界に出たかったとか。やっぱりイイ家柄の人は大変なんだな。
……って、僕もこないだまでは貴族の端くれだったよ! すっかり忘れてたな。今はそんな要素なんてどこっにもないけれど。逆にそれがせつないなあ。はぁ、そうだったよ……。
「迷子探しは任せた、カーストウッド」
「あ、うん! ……ってえ? レイくんはやんないの?」
「捜索はカーストウッド。俺は護衛。完璧な役割分担ってやつだ」
うっうーん……。僕のが大変な気がしない? まあ、レイくんが言うならいっか。
リディスまでは馬で丸一日かかるという。徒歩ならば尚のこと時間がかかるだろう。日の沈む前に、野営のしやすい川辺に到達すべく、セイルスの町をでた、レイと僕……と、シノライン。
シノラインは僕が一人の時にしか話してこなくなった。まあ、僕も話し掛けられたら答えてしまうし、周囲に変な目で見られるのも、ちょっと嫌だった。戦いの時に頑張ってくれれば、それでいっか、と思っている。
「おーい、ええーっと……?」
「セラフィーナ・アーヴィン。これだけ言っても覚えられないのかよ、低知能」
「わっ今バカにしたでしょ! 僕が覚えられないんじゃなくて、名前が覚えにくい……だけ、だよ。そんなことよりっ、セラフィーナさーん! 迎えに来ましたよー?」
さっきからずっと呼びながら歩くも返事は無く。ちなみに名前を叫んでいるのは捜索係である僕だけ。喉が渇くな。
やや傾いた日差しは周囲を薄く金色に染め上げている。真っ暗になるまでそう時間はかからないだろう。
「レイくん……喉痛いよ。水…」
「川の音がするな。日も暮れる前に今日は休むか。めんどくさいし」
「あーまためんどくさいって言った」
「あ? 俺がいつ、めんどくさいなんて言った。……っと、何だ?」
レイが急にあらぬ方向を見る。つられて僕もそっちを向くと――。
おっと、またもや面倒事の予感のようですw
レイの視線の先にあるものは、なんなのでしょうか……まぁ、それが面倒事を運ぶことは分かりきっているんですが(笑)
さて、また次回もよろしくお願いします!
それではっ(^^)ノシ