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Story of one every two people ~二人で一つの物語~  作者: 柚雨&シノ
飛竜討伐の章
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“魔の宿りし至高水”

レイ・サイド、彼の飛竜討伐の秘策とは…?



さて、本文をどうぞ!

Side Ray. ~レイ・サイド~


 うん、ヤバイ。あいつ、バカじゃねぇの? あんなトコに剣を突きたてれば、そりゃ突き刺さって取れなくもなるだろうよ。

 せっかく(トラップ)にかけて一網打尽にするつもりだったというのに、時間稼ぎすらしてくれないのか。やはり、一人で狩りに来た方が効率は良かったのかもしれない。………激しく後悔。


 今もチャラけた目で見てくる裏のカーストウッドを、俺は助けることが出来るのだろうか? 飛竜が物理攻撃を仕掛けるようなら、諦めよう。俺には防ぎようがない。完全にお手上げだ。自分でなんとかしな。……だが、魔法ならば…!


 飛竜は口を開く。その巨大で鋭利な牙の隙間から見える、真っ赤な喉。そしてその奥から覘くさらに真っ赤なチロチロと光る熱。………魔力を元にしたブレスを吐くつもりらしい。それならいける…!


 俺は走る。文字通りの全速力で。全く動こうとしない裏カーストウッドに呆れつつも(いや、ヘタレが言うには裏の魂は剣に宿っているらしい。……つまり、今のヤツはただのヘタレか?)、飛竜は俺になんとか出来る攻撃を放ってくれるのだ。助けないわけにはいかない。


 開かれる巨大な口。目の前で呆然とするヘタレ。そこには、深紅の炎が突き進んでいた。

 その炎がヘタレにぶち当たる瞬間のコト。俺は二者の間に躍り出た。


―――――《魔法反射(マジック・カウンター)》―――――


 それが、俺の持つ異能だった。魔力を主体とするモノ全てを反射する能力。完全に……とはいえないが、最下級の飛竜が放つブレス程度なら、余裕で反射出来る。………物理攻撃ではお手上げ、救いようがなかったが、魔法攻撃なら防げる。そのカラクリは、つまりそういうコトだったわけだ。……………これだけ言うと万能に聞こえるが、弱点だってある。だがまぁ、それは追々説明しよう。


 俺にブチ当たったブレスは、俺にほとんど衝撃を伝えることなく、それを放った飛竜の方へ爆進する。もちろん、ヤツが放ったブレスであり、その属性はヤツの得意とする火属性。…………ダメージなんて、あるハズもなかった。

 当然だろう。通常、飛竜の鱗はおそろしく硬い。ただの剣では傷一つ負わない硬度を持ち、今までの俺たちによる攻撃が通じていたのは、異常以外のナニモノでもない。………つまり、俺のダガーとヘタレの剣の切れ味は、ハンパなく鋭かったわけだが…。


「あの巨体だ。ダメージなんて、ほぼゼロと見ていいだろうな」


後ろのヘタレに、言い聞かすように言葉を放った。そう、今までの攻撃など、まるで効いていないハズ。むしろ、効いていたなら上位クエストでもなんでもない。ただのザコモンスターその一だ。

だが、ヘタレには驚愕の事実だったようで…。


「えぇ?! あれだけやって、ダメージゼロなのぉ??!」


 激しい驚きと動揺を見せてくれた。

 跳ね返したブレスにより、飛竜が行動できない今がチャンスだというのに、まるで使えない。………やはり、あの剣に“シノライン”という別人格の魂が入っているという妄言は、本当のことなのだろうか。

 だとしたら、すぐにでも取り返さなければ。………ヘタレのコイツは、恐ろしく使えねぇ。


 俺はヘタレを草陰に放り投げてから、全速力で走る。足の裏に魔力球を作り、異能によって反射させ、絶大な速度を得る。

 俺の魔力の色は黒だ。それが全てを闇に溶け込ませる。


―――――影走り。


 まさにそう呼ぶに相応しいスピードで、平静を取り戻しながらも怒りに溢れた飛竜の視界のアウトレンジへ。

 突如消えたように見えるであろう俺の動きに、飛竜の目がついてくることなど不可能。ついでに、俺は起爆札装備のダガーを明後日の方へ投げる。………もちろん、魔力は込めた。

 激しく爆発。案の定、爆風がヤツの身体に傷をつけることはない。しかし、その爆発は十二分(じゅうにぶん)に陽動の役割を果たす。………つまり、飛竜は爆発の方へ身体の向きを変えたのだ。


 チャンス。長い尾の間合いからは外れ、突き刺さったシノラインと呼ばれる剣が見える位置。そこに到達したのだ。幸い、ヤツの意識は未だ爆発の方へ向いている。……チャンスとしか言いようがなかった。

 前方に薄い魔力の壁を創って反射させ、スピードを殺す。そして俺は飛竜の側面……剣の突き立つトコロへ、到着したわけだ。

 感謝しろよ、ヘタレ。お前の得物、返してやるよ。存分に使いなっ!


 俺は心の中でそう思いながら、剣を引き抜く。引き抜き、間髪入れずにその剣をヘタレを隠れさせた草むらの方へ投擲。………もちろん、あいつに突き刺さらないようにコントロールはした。


「使え! カーストウッド! お前がいつまでも役立たずじゃ、俺の策も台無しなんだよ!」


 その声に応えるように、草むらの方から殺気が漏れ出す。濃密な殺気は、飛竜の意識を捉えるのに充分な役割を果たしてくれた。


「はっ! 結局、俺が出てなきゃなにも出来ねぇってか? いいぜ、やってやるよ!!」


舌なめずりでもしていそうな、裏カーストウッドの声。…………やはり、性格の差がありすぎる。二重人格は、どこまでいっても二重人格か。


 さて、裏のヤツはやる気(この場合は殺る気、か?)に満ち溢れているようで、先程の戦闘とは比べ物にならない激しさと力強さを持つ太刀筋で、易々と比較的硬度の低い竜の腹を切り裂く。

 これで殺せるなんて甘いことはねぇだろうが、最下級の竜程度の知能だ、俺の存在は完全に記憶のカナタにあることだろう。俺は、存分に(トラップ)作りに専念できるわけだな。

 …………いや、本当は午前中に(トラップ)を仕掛けるつもりだったんだが、どこかの誰かさん(・・・・・・・・)朝寝坊をして(・・・・・・)いらっしゃった(・・・・・・・)ようで、今から仕掛けることしか出来ない。


朝寝坊の分、しっかり働きな。


 前方で飛竜との激しい戦いを繰り広げている裏カーストウッドを尻目に、俺は盆地から離れ、魔方陣の創造に取り掛かる。


―――――俺の策は、魔方陣によって完成する。


 午前中に(トラップ)を仕掛け、飛竜が狩りから自身の巣に戻ってくる正午過ぎを狙って相対し、裏カーストウッドの暴虐と言えるまでの激しい剣撃でヤツの注意を引きつつ、(トラップ)である魔方陣へ誘導。…………そして、俺が武器屋で手に入れた奥の手“魔の宿りし至高水”を魔方陣へ垂らす。


その威力、推して知るべし。


地に描かれた巨大な魔方陣に、至高とまで言えるほどに濃縮された魔力の篭った水滴を垂らす………。それは、壮絶な……それこそ、飛竜ですら瀕死に追いやるほどの威力を有する。随分高ぇ買い物だったしなぁ。俺の一ヶ月分の生活費がパァだよ。


 …………まぁ、誰かさん(・・・・)朝寝坊(・・・)のせいで、午前中に魔方陣を描くことは出来なかったわけだが。

 その分、しっかりと時間稼ぎしてもらうぞ、裏カーストウッド。………名前、長ぇな。


「おらおらおらぁぁ!! どうした、飛竜っ!! そんなんで俺に傷を付けられるとでも思ってんのか、ゴラァ!!!」


 ……………まあ、引き付け役という自身の役割をよく理解している、と言った所だろう。うん、そういうことにしといてやる。


 俺は、五分ほどかけてようやくその魔方陣を完成させた。ヤツらの戦闘音は未だ鳴り響き、まあまあ実力は拮抗しているらしい。………本気になった裏カーストウッドは、なかなかに手練(てだれ)のようだ。通常の俺ではあそこまで激しい攻撃をしかけることは出来ない。………まあ、人間相手の不意討ちや暗殺には、特化した能力を持っていたりするのだが。


 だが、現在はそんなコト関係ない。魔方陣が完成したのだ。ヤツを潰す手筈は整った。


「おい、カーストウッド!」

「だから俺はハルじゃねえっての!!」

「どっちでもいい! それより、こっちに誘導しやがれ!!」


 ヤツが返事をする前に、飛竜の太い尾がヤツを襲う。身を低くしながら斜め後ろへ後退し、かろうじて避けながら、文句一言。


「戦闘の途中に話しかけんな! 死ぬだろうがっ!」

「さっさとトドメささねぇと、どっちにしろ負けんだよ! いいからコッチ来い!!」

「ちっ、わぁーったよ! 行きゃあいいんだろ?」


 飛竜の鋭い爪の攻撃をバックステップで華麗にかわしつつ、裏のヤツはこちらに向かってくる。………いいぞ、その調子だ。

……むっ、尾が邪魔だな………ダガーを投擲、竜を怯ませ、さらに裏カーストウッドをこちらへ近づけさせる。ヤツはたまに剣を振り切って竜に軽くダメージを与えながら、ついに俺の横に到着した。


「よし、あと少し……………おい、飛竜の意識をお前に引き付けろ」


 飛竜は、魔方陣まであと数メートルの位置にいる。本当にあと少しだ。


「けっ、しょうがねえなぁ」


 瞬間、ヤツは濃密な殺気をより色濃く、そして収束させて竜へと放った。

 低級のモンスターならば怯えて逃げ出すような殺気も、飛竜相手にはちょうどいい挑発になる。


さて、俺はこの間に上空に跳ばせてもらうとしよう。


足の裏に大きめの魔力球を創り、純粋に俺を上へ反射させる。………鬱蒼とした木々に包まれた視界が開け、綺麗な空が顔を出す。また、巨大な竜の姿を見失うことはないため、ここはタイミングを計るのに適していた。


 あと五秒。………四……三…二、一。


―――――ゼロ。


 “魔の宿りし至高水”の入った小壜をそのまま斜め下の魔方陣へ投擲する。

 そして魔方陣の上で砕けた瞬間に……飛竜は魔方陣の真上にいた。


「名前も知らねぇ飛竜…! これで、チェックメイトだ……!!」


 俺は薄い魔力の壁をいくつか創り、魔法反射による抵抗を用いてスピードを殺すことで危なげなく着地し、魔方陣から上がる強大な光の柱を隣の裏カーストウッドと共に眺めていた。



 …………非常に疲れたが……これで飛竜討伐完了、だな。




あれ? 魔法反射(マジック・カウンター)とか、レイくんチート?


いえ、違います! 確かにすごい能力ですけど、どうしようもない欠点があったりするんで!


まぁ、本文にあるように、そのことについてはまた追々説明することになりますが。



さて、次回もよろしくお願いしますね?


それではっ(^^)ノシ

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