第三章 失われた測位術
カルトグラフ辺境伯家の城は、スラント村から馬車で半日ほどの距離にあった。
道中、測はリーネから様々な話を聞いた。辺境伯家は代々「地図師」の家系として知られ、この地域の地図作成を担ってきた。だが、正確な測量ができないため、その地図は概略的なものでしかない。山の形、川の流れ、町と町の位置関係——それらは描かれているが、距離や方角は不正確だ。
「一日歩けば着くと思って出発したのに、二日かかったり、逆に半日で着いたり」
リーネは苦笑した。
「私たちの地図は、目安にしかならないの」
「そうならざるを得ないだろう。座標系が歪んでいては、正確な測量は不可能だ」
「でも、昔は違ったのよ」
リーネは窓の外を見つめた。馬車の窓から見える風景——緩やかな丘陵と、その向こうに霞む山脈——がゆっくりと流れていく。
「私たちの家には、千年前の記録が残っている。その時代には、完璧な地図があったと書かれているわ。距離も方角も正確で、地図を見れば確実に目的地に着けた。城は高く、橋は長く、運河は設計通りに水を運んだ」
「その記録を、見せてもらえるか」
「もちろん。そのために来てもらったんだから」
城が見えてきたのは、太陽が西に傾き始めた頃だった。
堅固な石造りの城郭。高い塔が四隅に立ち、周囲を堀が取り囲んでいる。だが、ここにも歪みの影響は及んでいた。城壁は微妙に傾き、塔の一つは明らかに設計位置からずれている。
「父は留守よ」
リーネは言った。
「王都に行っている。だから、古文書庫を自由に見せられるの。普段は部外者立ち入り禁止だから」
城門をくぐり、中庭を通って本館へ。
石畳の中庭には、日時計が置かれていた。だが、その影が示す時刻は、太陽の位置と合っていない。
「あの日時計、狂っているな」
測は歩きながら指摘した。
「え? どうしてわかるの?」
「太陽の高度と方位から計算すると、今は大体午後四時半くらいだ。だが、あの日時計は三時を指している」
リーネは日時計を見て、それから太陽を見上げた。
「……本当だわ。気づかなかった。ずっとああだったから」
「日時計は、設置場所の緯度に合わせて文字盤の角度を調整する必要がある。座標系が歪んでいれば、正確に調整することは不可能だ」
「つまり、この世界では日時計すら正確に作れないということ?」
「そういうことだ」
リーネは複雑な表情を浮かべた。慣れ親しんだ世界の「当たり前」が、実は異常なのだと知ることは、心地よいものではないだろう。
本館の奥、地下へと続く階段を降りていく。石壁に囲まれた細い通路。燭台に火を灯しながら、リーネが先導する。
「古文書庫は、城の基礎部分にあるの。千年前から変わらない場所」
階段の先に、重厚な鉄の扉があった。リーネが首から下げていた鍵を取り出し、解錠する。
扉が開いた。
そこには——
「これは……」
測は息を呑んだ。
広大な地下空間が広がっていた。天井は高く、石柱が等間隔に並んでいる。そしてその空間を埋め尽くすように、棚が並んでいた。棚には巻物、書籍、羊皮紙の束——膨大な量の文書が収められている。
だが、測の目を引いたのは文書ではなかった。
部屋の中央に、巨大な——
「地球儀……いや、違う」
それは球体だった。直径三メートルほどの、金属製の球。表面には無数の線と点が刻まれている。
「これは、この世界の模型よ」
リーネが説明した。
「千年前に作られたと伝えられているわ。『世界を測った者たち』が、自分たちの成果を形にしたもの」
測は球体に近づいた。
表面に刻まれた線は、緯線と経線だった。そして点は——基準点の位置だ。何百という点が、規則的に配置されている。
「これが、かつての座標系か」
「そう。でも今は、ただの飾りよ。刻まれた座標と、実際の場所が全く対応していないから」
測は球体の表面を指でなぞった。冷たい金属の感触。だが、その下から微かな振動を感じる——スラント村の塔で感じたのと同じ、かすかな鼓動。
「生きている」
「え?」
「この球体は、まだ生きている。エネルギーを持っている」
リーネは不思議そうな顔をした。
「私には何も感じないわ」
「私にはわかる。この球体は——かつての座標系の『器』だったんだ。基準点の位置情報を保存し、世界中の測量士がアクセスできるようにするための」
現代で言えばGNSSの衛星群のようなものか。いや、それとも違う。物理的な装置ではなく、魔法的な——
「記録を見たい」
測は言った。
「千年前に何が起きたのか。なぜ座標系が崩壊したのか。それを知る必要がある」
リーネは頷き、棚の一つから古い巻物を取り出した。
「これが最も古い記録よ。『大崩壊』について書かれている」
羊皮紙は茶色く変色し、所々虫食いがあった。だが、文字は読める——少なくとも、リーネには。
「読んでくれ」
測は言った。
リーネは巻物を広げ、ゆっくりと読み始めた。
「『暦の八百七十三年、夏至の日——』」
────
記録によれば、「大崩壊」はこのように起きた。
かつて、この世界には「測位師」と呼ばれる職能集団が存在した。彼らは「始原の五石」と呼ばれる五つの大基準点を管理し、世界中の座標系を維持していた。五石は世界の五大陸にそれぞれ設置され、互いに連動して座標情報を共有していた。
測位師たちは神官のように敬われ、各国の王侯に仕え、建設、測量、地図作成のあらゆる分野で不可欠な存在だった。
しかし、暦の八百七十三年、夏至の日に異変が起きた。
五石の一つが——記録には「沈みし大陸の石」と書かれている——突然消失した。
消失と同時に、残りの四石も異常を起こした。刻まれていた座標値が狂い、互いの連携が断たれた。世界中の座標系が一斉に崩壊し、測位師たちはパニックに陥った。
復旧を試みた者もいた。だが、五石の一つが失われた状態で座標系を再構築することは不可能だった。五つ揃って初めて、世界全体を正しく測ることができる仕組みだったからだ。
やがて、測位師たちは散り散りになった。一部は隠遁し、一部は新しい職業に転じ、一部は絶望して命を絶った。数世代のうちに、測位術の知識は失われ、残ったのは曖昧な伝説と、機能しなくなった古い器具だけになった。
「そして千年が経った」
リーネは巻物を閉じた。
「私たちの家は、測位師の末裔だと言われているわ。だから古文書を守り、地図師として生き延びてきた。でも、測位術そのものは復活させられなかった」
測は沈黙していた。
五つの大基準点。そのうち一つが失われ、座標系が崩壊した。
残りの四つは、まだ存在しているのか。存在しているとして、座標系を復活させることは可能なのか。
「『沈みし大陸の石』というのは」
測は尋ねた。
「何を指している?」
「海に沈んだ大陸のことよ。大崩壊と同時に、五番目の大陸が海底に没したと伝えられているわ。そこにあった大基準点も一緒に」
海に沈んだ——
「他の四つは、どこにある」
「正確な場所はわからないわ。ただ、各大陸に一つずつあったということと、それぞれに『守り手』の一族がいたということは記録されている」
「この大陸の基準点は?」
「『竜骨山脈の石』と呼ばれているわ。竜骨山脈のどこかにあるはずだけれど——」
リーネは首を振った。
「千年の間に、場所は完全に忘れられてしまった」
測は考え込んだ。
スラント村の塔にあった石碑は、大基準点ではなく、その下位の基準点だったのだろう。千年前の測位師たちが構築した基準点網の一部。大基準点から座標情報を受け取り、周囲に中継する役割を持っていたはずだ。
大基準点が機能しなくなったため、小基準点も狂った。しかし、完全に死んではいない——まだ微かな鼓動を感じる。
もし大基準点を復活させることができれば——
五つのうち四つを復活させれば——
座標系を再構築できる可能性がある。
「竜骨山脈」
測は言った。
「そこに行きたい」
リーネは驚いた顔をした。
「竜骨山脈は遠いわ。ここから北へ一ヶ月以上かかる」
「それでも行く。この世界の座標を正すためには、大基準点を見つけて復活させる必要がある」
「復活させられるの?」
「わからない。だが、やってみなければわからない」
測はリーネを見つめた。
「協力してほしい。君は千年前の記録を読める。測位師の知識を持っている。私には——この世界で生きていくための常識が欠けている」
リーネは数秒間、測を見つめ返した。
「一つ聞いてもいい?」
「何だ」
「あなた、本当はどこから来たの? 『遠い国』なんて曖昧な答えじゃなくて、本当のことを」
測は迷った。
異世界から来た、と言って信じてもらえるだろうか。いや、この世界には魔法が存在する。転生という概念も、もしかしたらあるのかもしれない。
「信じてもらえるかわからない」
測は正直に言った。
「だが、本当のことを言う。私は——別の世界から来た」
「別の世界?」
「ああ。私がいた世界では、測量技術は高度に発達していた。座標系は完全に確立されていて、世界中のどこでも正確な位置を知ることができた。私は、その世界で測量士として働いていた」
リーネは黙って聞いていた。疑いの色は——不思議なことに——見えなかった。
「事故で死んだ。そして、気づいたらこの世界にいた。脳内に声が響いて、『絶対座標認識』というスキルを得たと告げられた」
「スキル……」
「何かを強く念じると、座標が見える。この世界の歪みも見える。だから、直せると思った」
測は言葉を切り、リーネの反応を待った。
リーネは長い間沈黙していた。やがて、小さく息を吐いた。
「信じるわ」
「本当か?」
「嘘をついている顔じゃないもの。それに——」
リーネは微笑んだ。
「千年前の伝説に、似たような話があるの。『別世界から来た測位師』の話。彼は不思議な能力を持っていて、世界に秩序をもたらしたと」
「それは——」
「もしかしたら、あなたと同じような存在だったのかもしれない。転生者」
測は驚いた。この世界にも、転生者の伝承があるのか。
「だから私は信じる。あなたが別の世界から来た測量士で、この世界を救えるかもしれないということを」
リーネは手を差し出した。
「協力するわ。私にできることなら、何でも」
測はその手を握った。
「ありがとう」
────
それから数日、測はカルトグラフ家の古文書庫に籠もって記録を調査した。
リーネが古代語を読み解き、測が測量学の観点から内容を分析する。二人の共同作業により、少しずつ全体像が見えてきた。
五つの大基準点は、「始原の五石」と呼ばれていた。それぞれに名前がある。
「竜骨山脈の石」——この大陸の北部、竜骨山脈のどこか。
「灼熱砂漠の石」——南西の大陸、砂漠地帯。
「永久凍土の石」——北東の大陸、極寒の地。
「機械仕掛けの石」——東の大陸、かつて高度な技術文明があったとされる場所。
「沈みし大陸の石」——大崩壊と共に海底に沈んだ第五の大陸。
「機械仕掛け……?」
測は首を傾げた。
「この世界に、機械文明があるのか」
「あったらしいわ。今は衰退しているけれど、蒸気機関や歯車を使った技術が発達していた地域があると」
興味深い。魔法だけでなく、技術も発達していた世界。しかし、座標系の崩壊により、その技術も正確さを失ったのかもしれない。
「復活させる方法は書かれていないか」
「断片的な記述はあるわ。『正しき座標を与えれば、石は目覚める』と」
「正しき座標……」
それは、測がスラント村の塔で考えたことと同じだった。基準点に正確な座標を入力すれば、復活させられる。
だが、問題は「正しい座標」をどうやって知るかだ。
「もう一つ、重要な記述があるわ」
リーネは別の巻物を開いた。
「『五石は連なりて世界を支える。一石欠ければ全てが揺らぐ。されど、四石揃えば仮初めの秩序は保たれん』」
「四石で……仮初めの秩序」
「つまり、沈んだ大陸の石がなくても、残りの四つを復活させれば、座標系をある程度は回復できるということじゃないかしら」
それは希望だった。
五つ全ては無理でも、四つなら可能性がある。四つの大基準点を見つけ、復活させる。そうすれば、この世界の歪みは——完全ではなくとも——大幅に改善するはずだ。
「よし」
測は決断した。
「まずは『竜骨山脈の石』を探す。この大陸の大基準点だ。それを復活させることから始めよう」
「すぐに出発するの?」
「いや、準備が必要だ」
測は立ち上がり、窓の外を見た。城の中庭が見える。日時計の影が、やはり間違った時刻を指している。
「まず、測量機器を作る。私のスキルだけでは精度が足りない。物理的な道具が必要だ」
「道具……どんなもの?」
「角度を測る器具。水平を見る器具。距離を測る道具。どれも原理は単純だ。この世界の技術でも作れるはずだ」
「職人を紹介するわ。城のお抱えの金属職人がいる」
「助かる」
測はリーネを振り返った。
「もう一つ、人手がいる。測量は一人ではできない。ポールを持つ者、記録を取る者、見張りをする者——少なくとも三、四人のチームが必要だ」
「心当たりはあるわ」
リーネは考え込むような顔をした。
「私の従者を一人と——スラント村に、元傭兵がいたでしょう? ボルガという名の」
「ああ、いた。あの男か」
「体力があって、戦闘にも長けている。竜骨山脈への旅には、そういう人材も必要よ」
確かに、未知の土地を旅するのだ。野盗や魔物——この世界にそういうものがいるかは知らないが——への対策は必要だろう。
「わかった。ボルガを誘ってみる」
「他にも——」
リーネは言いかけて、言葉を切った。
「どうした」
「いえ……一人、思い当たる人物がいるの。でも、変わり者で」
「変わり者?」
「森に住むエルフよ。ミーシャという名前。古代の記憶を——断片的にだけど——持っていると言われているわ」
古代の記憶。
それは、千年前の測位術について知っている可能性があるということだ。
「会いたい」
「紹介するわ。でも、警告しておく。彼女、本当に変わっているから」
リーネの表情には、苦笑が混じっていた。
────
数日後、測はスラント村に戻っていた。
目的は二つ。一つは、ボルガを探索隊に誘うこと。もう一つは——
「本当に作れるのか」
測は、村の鍛冶場で黙々と金属を加工するドワーフを見つめていた。
クロード。白髪交じりの髭を蓄えた、六十代と思しき老ドワーフ。かつて石工ギルドの棟梁を務め、今は隠居してスラント村で細々と鍛冶仕事を続けている——とリーネから聞いた。
「三脚、か」
クロードは渡された設計図——測が簡単に描いたスケッチ——を睨んでいた。
「三本の脚を、中央で連結させる。脚の長さは調整可能にする。頂部には水平な台座を載せる。単純な構造だが……」
「何か問題が?」
「いや、問題はない。こんな依頼は初めてだが、作れないことはない」
クロードは金属の棒を取り、炉にくべた。
「お前さん、測り師なのか」
「そう呼ばれることもある」
「そうか」
クロードは火吹き棒で炎を煽りながら、ぽつりと言った。
「わしも昔、測り師について聞いたことがある。わしの爺さんの爺さんが、測り師の道具を見たことがあると言っておった」
「どんな道具だった」
「詳しくは聞いておらん。ただ、その道具を使えば、何もかもがまっすぐに建てられると。嘘みたいな話だと思っておったが」
クロードは金属を引き出し、ハンマーで叩き始めた。火花が散る。
「お前さんは、本当に測れるのか。まっすぐに建てられるのか」
「ああ」
「……なら、わしも手伝おう」
その言葉に、測は驚いた。
「手伝う?」
「石工として生きてきた。城を建て、橋を架け、壁を積んできた。だが、どんなに気を付けても、傾く。歪む。数年経てば修繕が必要になる。それがこの世界の宿命だと、諦めておった」
クロードはハンマーを振り下ろしながら続けた。
「もしお前さんが本当に歪みを正せるなら——わしの残りの人生、それに賭けても惜しくはない」
「……ありがとう」
「礼は要らん。作るのは仕事だ。だが、三脚以外にも必要なものがあれば言ってくれ。できる限り作ってやる」
測は頷いた。
測量機器のリストを頭の中で整理する。三脚。水準器。簡易的な経緯儀。測量ポール。距離測定用の鎖または紐。どれも、クロードの技術があれば製作可能なはずだ。
「一つ訊いていいか」
クロードが言った。
「何だ」
「お前さん、スラント村の塔に入ったそうだな」
「ああ」
「あの塔の下には、何があった」
測は少し考えてから、正直に答えた。
「基準点があった。この世界を測るための、座標が刻まれた石碑だ」
「基準点……」
「その石碑が狂っているから、この村は歪んでいる」
「直せるのか」
「大基準点——『竜骨山脈の石』を復活させれば、おそらく。だから、そこを探しに行く」
クロードは手を止め、測を見つめた。
「竜骨山脈、か。遠いな」
「一ヶ月以上かかるそうだ」
「わしも行けるか」
また予想外の申し出だった。
「行きたいのか」
「道具を作るだけでは足りん。使い方も学びたい。それに——」
クロードは窓の外を見た。傾いた家々が見える。
「この歪んだ世界を、わしの目で見てみたい。そして、それが正されるのを見届けたい」
測は頷いた。
「わかった。歓迎する」
チームが一人増えた。
クロード——金属職人で、測量機器の製作者。
次は、ボルガだ。
────
ボルガは、村外れの小屋に住んでいた。
元傭兵だというが、今は村の雑用をこなして生計を立てているらしい。薪割り、井戸掘り、建物の修繕——力仕事なら何でもやる。
「また来たのか」
ボルガは小屋の前で薪を割りながら、測を見た。
「話がある」
「何だ」
「俺と一緒に旅をしないか」
斧を振り下ろす手が止まった。
「旅?」
「竜骨山脈に行く。この世界の歪みを正すための旅だ」
ボルガは訝しげな顔をした。
「前に言っていたやつか。基準点がどうとか」
「ああ。竜骨山脈のどこかに、大基準点がある。それを見つけて復活させたい」
「復活させたら、何が変わる」
「座標系が正常に戻る。建物がまっすぐ建つ。井戸がまっすぐ掘れる。地図が正確になる。この世界の全てが、正しくなる」
ボルガは薪割り斧を肩に担ぎ、測を見つめた。
「お前は本気で、そんなことができると思っているのか」
「思っている」
「根拠は」
「俺は測量士だ。測量は俺の人生だ。この世界の歪みを見過ごすことはできない」
ボルガは無言で測を見つめ続けた。
やがて、ふっと笑った。
「変なやつだな」
「前にも言われた」
「だが、嫌いじゃない」
ボルガは斧を地面に突き立てた。
「いいだろう、行ってやる。どうせこの村にいても退屈だ。久しぶりに冒険でもするか」
「ありがとう」
「で、俺は何をすればいい」
「ポールを持ってくれ」
「ポール?」
「測量用の棒だ。俺が角度と距離を測る間、目標地点にポールを立てて保持する役だ」
ボルガは眉をひそめた。
「棒を持つだけか?」
「『だけ』と思うなよ。ポールが傾けば、測定値は狂う。垂直に保持し続けることが、どれだけ難しいか——やってみればわかる」
「……ふん」
ボルガは不服そうだったが、反論はしなかった。
「護衛も兼ねる」
「当然だ。未知の土地だ。危険もあるだろう」
「なら、いい。戦いは得意だからな」
チームがまた一人増えた。
ボルガ——元傭兵、ポールマン兼護衛。
残るは——
「エルフのミーシャ、か」
測は呟いた。
森に住むエルフ。古代の記憶を持つ者。
果たして、協力してくれるだろうか。




