表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
測量士×異世界転生_異世界で丁張りを立てたら、世界を救う設計図になりました  〜測量士は今日も座標を刻む〜  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/22

第十九章 五番目の大陸

結婚式は、座標院の中庭で行われた。


世界中から祝福の使者が訪れた。機械帝国からはグスタフが、アクアダクト王国からは宰相が、北東の大陸からはガルドとミーシャが——そして、辺境伯家の人々が。


「ハカル殿」


辺境伯——リーネの父——が、測に声をかけた。


「娘を——頼みます」


「お任せください」


測は深々と頭を下げた。


式は、簡素だが温かいものだった。派手な演出はなく、大勢の参列者が二人を祝福するだけ。だが、その祝福は——心からのものだった。


「これで——私たち、家族ね」


リーネは測の隣に座りながら言った。


「ああ。家族だ」


「……嬉しいわ」


「俺も、嬉しい」


二人は微笑み合った。


その夜、測は窓の外を見つめていた。


空には二つの月が浮かんでいる。オレンジ色の大きな月と、青い小さな月。この世界に来て最初に見た光景だ。


「どうしたの?」


リーネが傍に来た。


「……考えていた」


「何を?」


「この世界に来て——何が変わったのか」


測は月を見つめ続けた。


「俺は——元の世界では、ただの測量士だった。地味な仕事を、黙々と続けていた。誰にも注目されず、特別な存在でもなかった」


「今は違うの?」


「今は——」


測は考えた。


「今は——まだ測量士だ。地味な仕事を続けている。でも——」


「でも?」


「仲間がいる。生徒がいる。家族がいる。俺の仕事を、誰かが必要としてくれている」


測はリーネを見た。


「それが——変わったことだと思う」


リーネは微笑んだ。


「あなたは——最初から特別だったわ。ただ、気づいていなかっただけよ」


「そうか?」


「そうよ。測量士としての誠実さ、技術への情熱、人を思いやる心——全部、特別よ」


「……ありがとう」


測は照れくさそうに視線を逸らした。


「さあ、寝ましょう。明日も——仕事があるでしょう?」


「ああ。明日は——新入生の入学式だ」


「楽しみね」


二人は並んで、寝室へ向かった。


────


入学式の日。


座標院の講堂には、三十人の新入生が集まっていた。各地から——辺境伯領だけでなく、隣国からも、遠い大陸からも——測量を学びに来た若者たちだ。


「皆さん、入学おめでとう」


測は壇上に立ち、挨拶を始めた。


「私は、座標院の校長——いや、名誉校長だ。今は、教えるのは主に卒業生たちがやっている」


学生たちが笑った。


「でも、今日は——私から、一つだけ伝えたいことがある」


測は学生たちを見回した。


「測量とは何か。それは——世界に座標を刻むことだ」


「座標があるから——人は迷わず目的地に着ける」


「座標があるから——建物は正しく建つ」


「座標があるから——国と国は正確な境界を持てる」


測は言葉を切った。


「でも、もっと大切なことがある」


学生たちは、真剣な表情で聞いている。


「測量は——真実を知ることだ」


「世界がどうなっているか。どこに何があるか。それを正確に知ること。それが、測量の本質だ」


「真実を知ることは——時に辛いこともある。でも、真実から逃げても、問題は解決しない」


「だから——測量士は、真実を恐れてはいけない。どんなに辛くても、目を逸らさず、正確に測り続ける。それが、測量士の役目だ」


測は微笑んだ。


「皆さんは、これから測量の技術を学ぶ。でも、技術だけじゃなく——この心も、忘れないでほしい」


「以上だ。皆さんの入学を、心から歓迎する」


学生たちが拍手した。


測は壇上を降りながら、思った。


——これが、俺の役目だ。


技術を教え、心を伝える。測量士としての誇りを、次の世代に継承する。


スキルを失っても——この役目は、変わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ