表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
測量士×異世界転生_異世界で丁張りを立てたら、世界を救う設計図になりました  〜測量士は今日も座標を刻む〜  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/22

第十一章 大基準点の復活

帝国政府への交渉は、難航した。


最初の数日間は、門前払いの連続だった。外国人の測量師が、帝国の重要施設について口出しするなど、あり得ないという態度だった。


だが、技術者ギルドの支援と、リーネの外交手腕が、少しずつ道を開いていった。


「宰相閣下との面会が許可されました」


リーネが報告した。出発から一週間後のことだった。


「よくやった」


「私の家——カルトグラフ家の名前が、少しは役に立ったわ。地図師の家系として、帝国にも取引相手がいたの」


宰相との面会は、帝国の政庁で行われた。


巨大な建物——鋼鉄と煉瓦でできた、権威を象徴する構造物——の奥深くに、宰相の執務室はあった。


「西方の測量師か」


宰相は、五十代の鋭い目をした男だった。名をシュテルンという。


「座標院の校長、ハカル殿。そして、カルトグラフ家のリーネ嬢。お二人の来訪、歓迎いたします」


言葉は丁寧だが、目は冷たい。明らかに、警戒している。


「本日は、帝国にとって重要な提案をしに参りました」


測は単刀直入に切り出した。


「首都の地下に眠る——大基準点について」


シュテルンの表情が、わずかに強張った。


「……続けたまえ」


「帝国は、大基準点を『動力源』として利用している。だが、その本来の機能——座標系の基準としての役割——は封印されたままだ。これを復活させることを、提案する」


「理由は?」


「世界全体の座標系を安定させるため。大基準点は五つある。全てを復活させれば、座標系は完全に安定し、歪曲公の攻撃を無効化できる」


「歪曲公……」


シュテルンの目が、一瞬だけ揺れた。


「その存在を、知っているのですか」


「もちろん知っている。帝国の敵だ」


「敵……ですか」


測は違和感を覚えた。宰相の反応が、どこかおかしい。


「宰相閣下。大基準点の復活に、何か問題があるのですか」


「問題? いいえ、問題はありません」


シュテルンは微笑んだ。だが、その微笑みには、何か不穏なものが含まれていた。


「ただ——大基準点は、帝国の重要な資産です。外国人に——特に、西方の者に——その管理を任せることはできません」


「管理を任せるのではありません。復活させるのです。その後は、帝国が管理すればいい」


「復活させた後、その技術を持ち帰るのではないのですか?」


「持ち帰りません。座標の技術は、世界全体の公共財です。特定の国が独占するものではない」


「公共財……」


シュテルンは椅子の背にもたれた。


「美しい理想ですな。だが、現実の世界は——理想通りにはいかない」


「何が言いたいのですか」


「ハカル殿。あなたは、西方の座標院を率いている。その技術で、各国に影響力を持っている。あなたが『世界のため』と言っても——帝国は、簡単には信じられない」


「では、どうすれば信じてもらえるのですか」


シュテルンは考え込むような表情を浮かべた。やがて、言った。


「一つ、提案があります」


「何ですか」


「大基準点の復活を許可する。ただし、条件がある」


「条件?」


「復活後、座標の技術を——帝国に独占的に提供すること」


測は絶句した。


「それは——できません」


「なぜですか」


「座標の技術は、世界全体のものだと言った。帝国だけに独占させることはできない」


「では、交渉は決裂ですな」


シュテルンは立ち上がった。


「お引き取りください。帝国は、大基準点の復活を許可しません」


────


政庁を出た後、測とリーネは沈黙したまま宿に戻った。


「失敗、ね」


リーネが呟いた。


「ああ」


「どうする?」


「……わからない」


測は考え込んだ。


正攻法では、帝国政府は動かない。だが、大基準点を復活させなければ、世界の座標系は安定しない。


「別の方法を探す必要がある」


「別の方法?」


「帝国政府を通さずに、大基準点にアクセスする方法だ」


「それは——違法行為になるわ」


「わかっている」


測は窓の外を見た。帝国の首都は、夜になっても活動を止めない。工場の煙突から煙が上がり、街灯が通りを照らしている。


「でも、他に方法がないなら——やるしかない」


その夜、測のもとに訪問者があった。


「グスタフ殿?」


技術者ギルドの長が、宿の部屋に現れた。


「ハカル殿。宰相との交渉は、失敗したそうですな」


「どうして知っている」


「ギルドには、情報網がある。そして——」


グスタフは声を潜めた。


「宰相の正体を、お教えしよう」


「正体?」


「シュテルンは——歪曲公の協力者だ」


測は息を呑んだ。


「何だと?」


「帝国政府の中に、歪曲公と繋がっている者がいる。宰相もその一人だ。彼らは、大基準点を封印したまま維持することで——歪曲公の支配を助けている」


「なぜ——」


「権力だ。座標系が歪んでいれば、帝国は技術的な優位を保てる。他国よりも正確な建設ができ、他国よりも強い軍隊を持てる。歪曲公は、それを利用している」


なるほど、と測は理解した。


歪曲公は、単に世界を歪めているだけではない。その歪みを利用して、各国の権力者を操っているのだ。


「どうすればいい」


「ギルドが協力する。地下への秘密の道がある。大基準点に、直接アクセスできる」


「本当か」


「本当だ。だが、危険を伴う。政府に見つかれば——処刑される」


測は少し考え、そして頷いた。


「やる。案内してくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ