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復讐に取り憑かれた偽りの勇者は、もふもふ大精霊様に癒される。  作者: 赤金武蔵
第一章 偽りの勇者は諦めない

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第六話 実に好い蹴りだった……♡

「何故も何も、リビアと仕事してきたんだよ」

「ま、また女神と一緒に任務……⁉ ズルいぞ、このへなちょこ勇者め!」



 はぁ……またか。こいつ、リビアと一緒にいる俺を、いつも目の敵にしてきやがるんだ。正直、面倒くさい。



「ウルト、そんな怒るな。ほうれい線目立ってるぞ」

「きさ……! 僕の方が年上なんだぞッ。年配者には敬意を払え!」

「俺の方が騎士歴長いんだ。先輩は敬うもんだぞ、後輩くん」

「きいぃぃ!」



 ウルトは顔を真っ赤にして、睨みつけてくる。

 でもそれだけで、武器を取り出そうとはしなかった。


 何があろうと、騎士団員同士の戦闘はご法度だ。

 破ったら鬼の教官に半殺しにされかねない。それがわかっているから、ウルトも無闇に得物を抜かないんだ。


 火花バチバチで睨み合う俺たちの間に、リビアが割って入る。

 手を叩き、一触即発の空気を散らした。



「はいはい、二人ともストップ。ウルト、お仕事ご苦労様」

「はい、麗しの女神」



 本当こいつ、リビアの言うことだけは聞くんだよな。尊敬なのか敬愛なのか……まあそのせいで、いつも一緒にいる俺に面倒な因縁を付けてくるんだけど。


 ウルトは「ところで」とリビアの手を取り、キラキラスマイルを至近距離で向けた。やめろ、それ。腹立つ。



「報告の後、お食事でもいかがでしょうか?」

「お断り」

「ふっ……連れないあなたも素敵だ」



 うわぁ……俺が言えたことじゃないけど、こいつ、めちゃくちゃポジティブだな。


 ……ん? こいつの持ってるの、任務書か。

 今報告を終えたばかりなのに、もう他の任務に出るのか……仕事熱心だな。

 リビアも気付いたのか、不思議そうにウルトを見た。



「あなた、もう次の依頼? 大変ね」

「いえっ、そのようなことは……! ただの情報収集ですよ。僕はどっかのへなちょこと違って、潜入に向いているので」



 おい、へなちょこって誰のことだ。

 ウルトはリビアに恭しく頭を下げ、最後に俺を睨みつけると、そのまま神殿を後にした。最後まで嫌な奴だなぁ。


 もうウルトには興味ないのか、神殿の階段を登っていくリビア。俺も後に続く。

 かなりの長さだが、この騎士団に所属している人間は、この程度の階段では音を上げない。鍛え方が違うのだ。



「ライゼル、疲れたわ。おんぶして」

「蹴落とすぞ」






 結局リビアをおんぶして、休みなく登って数十分。ようやく最上階に辿り着いた。



「アリガトウ、勇者サマ」

「テメェ……感謝してるならもっと気持ちを込めろ」

「キャーステキー」



 こいつ、いつか泣かす。

 困ってる人を放っておけないっていう、俺の善意を利用しやがって。まあ、ある意味いい修行になったから、いいけどさ。


 最上階には一つだけ、大きく古びた石の扉がある。

 片方は風化していてわからないが、もう片方には剣と星が刻まれている。

 何を意味しているのかわからない。空中都市レディアの謎の一つだ。


 リビアが軽くノックをする。しばらく待つと、重々しい音を響かせながら、左右に扉が動いた。

 扉の先には、天井高くまで積まれている書類と本の山。魔法でバランスを取っているのか、どうして倒れないんだって角度で傾いている。


 山と山の間を、書類と本が飛び回っている。

 自動整頓の魔法だけど、まったく追いついていないみたいだ。組織のトップの仕事も、大変だなぁ……。


 正面にある壁一面の窓ガラスの先には、世界を見渡せるほどの大絶景が広がっている。

 遥か向こうに、輪を描いて飛んでいる龍の姿も見えた。


 そんな神話のような絶景と、今にも崩壊寸前の書類の中……俺たちが用のある人が、床に転がっていた。

 死ん……ではないな。この人、しぶといし。過労で死ぬような人じゃない。タフネスだけで見ると、騎士団随一だもん。


 俺とリビアが、床でぶっ倒れている女性に近付く。

 シャツのボタンは全開。バキバキの腹筋は今日も割れている。加えてズボンも穿いていないから、下着が丸見え。目のやり場に困る。

 リビアに睨まれ、顔を逸らす。はいはい、見ませんよ。


 ……それにしても、酷いクマだった。昔からだけど、もう何日も寝てないんだろう……それを抜きにしても、かなりの美人だが。

 起こすのも忍びないけど……俺たちも報告しなきゃならない。仕事だからな。


 リビアが女性に近付き、肩を揺すった。



「団長。……カノン団長」

「……フガッ……んぉ……?」



 リビアに起こされ、もぞもぞと目を開けた。

 切る暇がないのか、雑に伸びた金髪が陽光に照らされ、眩しく輝いている。


 カノン・アルゼノウ。『国境なき騎士団』の設立メンバーで、二代目団長。俺を助けてくれた命の恩人にして、母親代わりの人だ。


 ……と言っても、見ての通りクソずぼらなので、生活のほとんどはリビアに頼っている。料理や家事も、リビアに教わったし。


 まだ覚醒していないのか、完全に寝不足の目で、リビアを見上げている。現実と夢の区別がついていない感じだ。

 こんなカノンもいつも通り。リビアは気にせず、彼女の肩を大きく揺する。



「カノン団長、起きてください。大丈夫ですか?」



 ようやく目の焦点があったカノンが、リビアを見つめ……小さく口を開いた。



「……い……」

「はい?」

「……君のおっぱい吸わせてくれたら、元気出るかも……ほべっ!」



 ワォ、無言のトーッキック。今のは痛い。……けど。



「ふふ……ふふふ……好い。実に好い蹴りだった……♡」



 この人に、そういうのはご褒美なんだよなぁ。まあ、これのお陰で常人よりタフなのは間違いないが。


 ドン引きしているリビアが、俺の背に隠れる。

 気持ちはわからなくもないが、年下の背中に隠れる師匠っていうのも、いかがなものかと思う。

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