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偶像勇者 〜復讐に取り憑かれた偽りの勇者は、もふもふ大精霊様に癒される。〜  作者: 赤金武蔵
第三章 偽りの勇者は英雄の道を進む

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第二十九話 あの子より優しいからね

「まったく……待ちなさいと言ったら、待ちなさい。犬でもできるわよ、馬鹿」



 呆れながら、爆弾を手で転がす。

 それに関しては、本当に面目ない……けど、おかげで助かった。


 リビアが手を振るう。風が吹き、黒煙が霧散した。

 さっきの爆発で地面は深く破損。

 アレルドは片脚と顔の半分が欠損し、血と火傷でボロボロになっていた。



「おっ……ガッ……」



 けど、まだあれで立てるのか。生命力まで人外だな。



「状況は?」

「薬の原料は子供。奴らは牙。カルミアは向こうの扉から逃げた。あいつはサクリファクトっていう緑色の錠剤を飲んだ姿だ」

「……想像以上のゴミクズね」



 嫌悪感丸出しの表情で、爆弾をもう一つ手に持つ。

 軽く跳躍すると、まだ生きているギドーの口に爆弾を押し込み、火の魔石を導火線に近付けた。



「ライゼル、あんたはカルミアを追いなさい。ここは私に任せて」

「……わかった、頼む」



 人質っていうのは気に入らないけど……今はそんなことを言っていられない。

 動けないアレルドを無視し、扉を破壊して更に奥へ進んだ。

 カルミア、絶対逃がさないぞ……!



   ◆リビア◆



 ライゼルを送り出し、もう一度男を見た。


 今の爆発で、死んでもおかしくないダメージを受けたはず。

 それなのに、死ぬ気配がない。


 さっき言っていた、サクリファクトって薬の効果なのかもね。

 本当に人間なのかしら。とんでもない化け物よ、こいつ。



「神妙にしなさい、『黒の牙』。大人しくするなら、殺さないでおいてあげる。私はあの子より優しいからね」

「おボッ……え、ヒャ……」



 声にならない声で、首をがくがく動かす。


 死への恐怖……という感じじゃないわね。

 こいつの体から聞こえてくる音も、人のものとは違うし……薬かしら。身体能力の限界を超えるものを飲んだみたいね。



「そんなに動かしたら、お仲間の導火線に火が点くわよ」



 レイピアを抜き、肩を突き刺す。

 一瞬身を捩るが、血を流しすぎているからか逃げようとしていない。



「ああ……あアあ……あアアああアああアアアあッ!」



 ――消えた……いや、移動した。



「右横後方」



 首を傾けると、私の首があった所を剣が通過した。


 私は避けられたけど……その拍子に、人質にしていた大男の首が刎ねられた。

 チッ、仲間まで見境なし、ね。


 その場から離れレイピアを構えて耳を澄ます。



「左下前方」



 斬り上げを紙一重で躱す。次。



「おああアアアあアああああアアアああアアあアああッ!!」

「右上。後方。左横。右。右。上。前方正面」



 軸足をずらさず、ただ体を傾けて避け続ける。


 なるほど。スピードは一級品ね。

 パワーも相当なものだし、ライゼルが手こずるのもわかるわ。


 けど残念。相手が悪かったわね。私、耳がいいの。こんな考えなしの攻撃じゃあ、いくらやっても一緒よ。



「ゲボッ、がッ、ひょオおオオオおおおオオおオおおお!!」



 力任せで、真上からの斬り落とし。

 確かにこの攻撃を、非力な私が受けるのは難しい……けどね、やり方は色々あるのよ。


 レイピアの先端を、男の剣先に這わせる。


 レイピア特有の弾力、力加減、タイミング。全てを合わせ……弾く。


 剣の軌道がずれ、私の真横に剛剣が落ちる。

 同時に奴の剣が耐え切れず、粉々に砕けた。



「フッ……!」

「ギャぼッ!?」



 体を捻り、回転と共に蹴りは弾き出す。

 遠心力が足先に乗り、男のこめかみを深々と貫いた。



「言い忘れていたわ。……私肉弾戦では、ライゼルに負けたことないの」



 まあ、接近戦とか滅多にしないけどね。だって怖いもの。


 頭を押さえ、よろめく男。かなり効いているみたい。良かった、人間と同じ弱点みたいで。

 レイピアを構え、狙いを定める。



「両肩」



 ピュッ。一つの風切り音で、男の両肩から血が噴き出す。



「~~ッ!?」



 神経を一撃で断ち、腕がぶらりと下がった。


 もうこれで、腕は使えない。

 片脚も吹っ飛んでいるし、頭も片側が無い。ここまでダメージがあれば、反撃もない……ッ!?


 音による事前予知と直感で、体を傾かせる。


 欠損した方の脚が、私の体を掠めた。

 危なかった……もし脚があったら、避けきれず食らってたわね。


 瞬時にレイピアで、奴の腹部を貫く。



「ギイイィッ!?」



 心臓と肺以外の臓器を一瞬で突くと、激痛によって口から泡を噴いた。


 サクリファクト……身体能力の向上と引き換えに理性を失くし、痛みすら消すってところかしら。

 これも、騎士団に報告しないといけないわね。


 けど、これくらいダメージを与えれば、さすがのこいつでも……。



「ゔっ、ゔゔヴヴヴゔゔヴゔゔゔゔヴっ!!」

「ちょ……な、何?」



 今度は頭をぶんぶん振り回し始めた。

 奇声を上げ、壁や床のあちこちに頭をぶつけている。



「やめなさい! それ以上やると、本当に死んじゃ……!」

「アアアあアああああアアあアアアアアアああああああアあああ!!」



 ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンッ!!


 狂ったように吠え、どれだけ血が飛び散り、頭蓋骨が砕けようと、止まらない。


 さすがに危なすぎて、私でも近付けない。

 きっとどこを刺しても、今のこいつを止められそうになかった。


 返り血が掛からないよう、距離を取る。


 暴走した男は近くの筒や機械へ、手当たり次第に頭突きしていく。


 噴き出したどす黒い血が、壁、天井、床を汚す。

 とんでもない異臭で、気持ち悪くなってきた。


 直後、ぴたりと動きが止まった。微塵も動かず、痙攣一つしていない。


 そして……頭から、ボロボロと崩れていく。体の形を保てなくなったみたいに。


 瞬きも呼吸も忘れて見つめていると、遂には人間だった形跡は一つも無くなり、跡形もなく崩れ去った。



「飲んだ者の精神と肉体を壊す薬……奴ら、とことん狂ってるわね」



 でも用心深いから、奴らは今まで捕まってこなかったんでしょうけど。


 レイピアについた血液を振り払い、鞘に納める。

 急いで、ライゼルの所に向かわなきゃ。

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