第二十五話 くっさぁ
するとペンダントが光り、ポックルが出てきた。
『小僧。リビアの言う通りじゃ。あの雌は、最初からどうも怪しいと思っていたのじゃ。気色悪いほど甘い匂いを垂れ流していたしのぅ』
「そういえば、そんなこと言ってたな」
……待てよ、甘い匂いって……。
目を見開き、リビアを見る。
彼女も同じことを考えたのか、急いでカバンから小袋を取り出した。
「ポックル様。その甘い匂いって、もしやこれの事ですか?」
袋越しに匂いを嗅ぐ。
カッと目と口を開いて、嫌そうな顔で袋を遠ざけた。
『これじゃ、間違いない。くっさぁ』
リビアと顔を見合わせる。
そうか……カルミアさんから漂ってきた甘い匂いは、エルビス・ティアラのものだったのか。
沸き立つ怒りを抑えこむように、拳を握る。
「……行こう。ここから先は、カルミアさんに直接聞かないと」
「ええ。私も、もう気持ち悪いとか言っていられないわね」
二人並んで、教会の扉を開く。
礼拝堂には誰もいない。
明日の準備をするって言っていたのに、気味が悪いくらい静かだった。
「ライゼル、カルミアが敵と確定した場合、問答無用だからね」
「ああ、わかってる」
剣の柄に手を掛け、礼拝堂から孤児院として運営している裏手へ向かう。
甘い匂い……けどこれは、クッキーの匂いだ。明日の準備の為に、焼いていたんだろう。
リビアに視線を送ると、耳を澄まして食堂の中を確認する。
「誰か、寝てる……いや、倒れてる……?」
「ッ……!」
リビアの言葉に、反射的に扉を開けた。
食堂にみんな集まっている。
けど……誰一人動いていなかった。
みんなとろけたような笑顔で、ぼーっとしている。
「みんな、大丈夫かッ?」
一人ずつ脈を確認する。
少し乱れを感じるが、生きてはいるみたいだ。
この症状、裏路地にいた住人と同じ、エルビス・ティアラのものと見て間違いないな。
「ライゼル。ここのクッキー、食べちゃ駄目よ」
「クッキー?」
よく見ると、みんなクッキーを手にしていた。それぞれかじった跡がある。
もしかして……エルビス・ティアラが練り込まれてたのか……!?
ポックルも鼻を前足で押さえ、気持ち悪そうに頷いた。
『間違いない。この部屋、甘ったるい匂いが充満しておるぞ』
「恐らく、これを明日売ろうとしていたみたいね。王都の機能を麻痺させて、国全体を潰すつもりだったんだわ」
カルミアッ……そんなにクソ最低な奴だったのか……!
ぶつける当てのない怒りを抑えるように、歯を食いしばる。
怒りは憎悪になり、苦しみに変わり、苛立ちでおかしくなりそうだ。
「ライゼル。私、町の医者を呼んでくるわ。絶対に一人で後を追わないこと。いいわね」
リビアが窓から飛び出し、町へ向かって走る。
……悪い、リビア。
その約束、守れそうにない。
「カルミアあああああああああああああッ!! どこだあああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」
咆哮と怒号で、部屋が震える。
これだけ大きな声を出しても、誰も反応しない。
幸福という名の悪夢の檻に囚われているんだ。
椅子に座って今にも崩れ落ちそうなみんなを、床に横たわらせる。
こっちの方が、体も楽だろうから。
食堂の扉を蹴り開け、教会内を探す。
が、どこにもカルミアの姿はない。やっぱり、逃げ出したか。
『小僧、落ち着け』
「落ち着いていられるかッ。あいつは俺の手でぶちのめす!」
『馬鹿者。無闇に探し回って、見つかる相手ではない。奴らはずっと、闇に潜伏していたのだからな』
じゃあどうしろってんだ! 直ぐ目の前に、家族の敵がいるのかもしれないんだぞ!
むしゃくしゃして髪を掻きむしる。
もう外に出たか? でもそれなら、リビアが耳で察知してるはず。
まだ教会内にいるはずだが……でもどこにいやがるんだ。
ポックルはやれやれという風に鼻息をつき、俺の顔面を肉球で叩いてきた。
『まだ探していない場所があるぞ、小僧』
「え……ど、どこだ?」
『礼拝堂じゃ』
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