第十八話 今の方が大変お似合いですよ
そっとため息をつき、飯を食いながらリビアの相手をしつつ、零さないようにお世話をする。くそ面倒くさい。
深くため息をついた、その時。後ろの席にいた二人の男が立ち上がり、こっちに近付いてきた。
「おーおー、姉ちゃんスーパー美人じゃん。そんなガキほっといて、俺らと飲もうぜ?」
「楽しく飲もうよぉ。ねぇ?」
あ、まずい。
「二人とも、今はまずい。逃げな」
「は? 何言って……はうっ!?」
「あぎゃっ!?」
遅かったか……。
リビアの渾身の蹴り上げが、二人の男の股間にクリーンヒット。泡吹いて倒れた。
「人がせっかくいい気分なのに、茶々入れてんじゃないわよ」
そう。リビアは酒に弱いくせに、かなり悪酔いするのだ。
しかも見ず知らずの男相手には容赦がない。こいつの被害者も、もう何人も見てきたことか。
店員のお姉さんはあらまあという顔で、男たちの襟首を掴み上げた。
いや、力強いな、この人も。
「すみません、ご迷惑をおかけして……」
「いいんですよ。こういうこと、しょっちゅうですから」
ケタケタ笑いながら、気絶した男たちを表通りに放る。
可哀想だけど、今のリビアに話しかけた君たちが悪い。安らかに眠りな。
料理を食べ終えて眠くなったのか、リビアは船を漕ぎ始めた。そろそろ、上に運ぶかな……っと、その前に。
「そうだ、お姉さん。最近この町で、人攫いが起きてるんですよね。何か知ってることってありますか?」
「知ってること? 子供が興味本位で首を突っ込むことじゃないですよ」
「まあ否定はしませんが……ちょっと知り合いが巻き込まれたみたいで、行方を知りたいんですよ」
事情を知ったお姉さんは周りを見渡すと、そっとため息をついて前のめりになった。
「関係があるかわかりませんけど……最近、怪しいイケメンが、貴族様の家に出入りしているんですよ」
「怪しいイケメン? 見たことあります?」
「もちろん。結構な美形でしたよ。でも、『女神いいいい!』って叫んでいました」
うわ、確かに怪しい。てか気持ち悪い。この世に、ウルトみたいな奴が他にもいたのか。
……あいつ、確かに顔立ちはイケメンだけど、相対的に見て男前ではないからなぁ、きっと別人だろう 。
「ありがとうございます、助かりました」
お姉さんに感謝の印として、お金を多めに渡すと、リビアをおんぶする。
部屋に戻る前、急にお姉さんが俺を呼び留めた。
「失礼ですが、お客さん。お二人って、本当に姉弟?」
「え? あー、その……」
突然のことで、思わず言い淀んでしまった。
それで察したのか、お姉さんはニコニコ微笑んで手を振った。
「ふふ、やっぱりね。姉弟にしては似ていないですから」
失礼な。悪かったね、美形じゃなくて。リビアが異常に美人なんだよ。中身はビビりのド畜生だけどな。
けどお姉さんは首を横に振ると、両手の人差し指と中指でハートを作った。
「姉弟よりも、今の方が大変お似合いですよ」
「……からかわないでください」
頭を下げ、階段を上がる。
お似合い? 俺とリビアが? やれやれ、そんな訳ないだろう。俺みたいなクソガキ、リビアとは釣り合わないって。
階段を上がる揺れが嫌だったのか、眠そうに目を開けて不満そうに口を尖らせた。
「んうぅ……まだ食べたい……」
「今日はもう駄目。寝なさい」
部屋に戻り、ベッドに寝かせる。
酒のせいで暑いのか、胸元を少しはだけさせた。
外から月明かりで照らされ、火照ったリビアの体がぼんやりと浮かび上がる。
薄い布地のワンピース型の寝間着。その下に浮かぶ、艶やかな女性のライン。
月明かりを反射する白銀の髪と、クールで整った容姿も、酔っているせいでどこか色気を感じて……あれ、リビアってこんなんだったっけ?
いつもはもっと怖がりで、戦う時はどんな手段も選ばない女だぞ。なんで俺、こんなドギマギしてんだ?
妙な色気に、思わず固まってしまった。
「……? ライゼル……心音、うるさいわよ」
「ご、ごめ……」
待て、落ち着け、俺。
リビアのことは昔から知っている。俺のことを弟のように扱い、俺も姉のように慕ってきたんだぞ。これも全部、お姉さんが変なことを言うからだ。
それに、イタズラをしてカノンに怒られたところも、おねしょをして泣いていたことも、マッチョの男にアームレスリングで勝ったところも見てきた。
子供っぽくて、どこか男勝りな姉のような人に……色気を感じる……?
「……俺、病気かも」
「何を考えていたのか知らないけど、あんたの心音から、ものすごく失礼なことなのはわかったわ」
ひたいに青筋を浮かばせ、起き上がろうとするリビア。
ずるいぞ、自分ばかりそんな特殊能力を持って……!
けど俺の方には来ず、そのままベッドに横たわった。
なんとなく、互いに見つめ合う。
気まずい。なんでこんな空気になってんだ。相手はリビアだぞ。
昔は、よく一緒の布団で寝ていた。今は同じ部屋でも、違うベッドだ。気にすることはない。
「ね、寝る。おやすみ」
「一緒に寝ないの? お姉ちゃん、淋しいな」
「黙って寝ろ、酔っ払い」
俺もベッドに入り、なるべく意識をしないように、リビアとは反対を向く。
けど……駄目だ。眠れそうにない。
さっきまでは疲れのせいで眠かったのに、リビアを意識しちゃってから心臓がうるさかった。
リビアも同じなのか、もぞもぞと動く度にベッドが軋む。
落ち着け、何も考えるな。ただ眠ればいいんだ。
目を閉じて、ゆっくり深呼吸をして……。
「ライゼル。心音うるさい」
「し、仕方ないだろ。お前が……」
色っぽいから、だなんて言えない。
これを口にしたら、越えてはならない一線を越えてしまいそうだから。
「……私が、何よ」
「……なんでもない」
「変なライゼル」
お前のせいだよ。
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