表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐に取り憑かれた偽りの勇者は、もふもふ大精霊様に癒される。  作者: 赤金武蔵
第二章 偽りの勇者は助けたい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

第十六話 人助けが趣味

 ツンとしたポックルだが、シスターへ向ける鋭い眼光は変わらない。敵意に満ちていた。



「どうしたんだよ、ポックル?」

『……小僧、気をつけよ。あの女から香る匂い、路地でも漂っていたぞ』

「あの甘い匂いか? 路地でそんな匂いしたっけ」

『……これだから人間は。しばらく余は黙る。何かあったら、己で対処しろ』



 そんな呆れられても。

 ただ教会の近所に住んでいるから、たまに祈りに来てるんだろう。それで匂いが移ったとか。


 二人について行き、俺たちも教会の中に入る。

 外見と同じで、中も結構古い。床の板は軋むし、壁画も所々掠れている。

 けど正面のステンドグラスは綺麗だ。

 日光が差しこみ、正面に祀られている神像が煌びやかに輝く。

 数名の人が長椅子に座り、手を組んで祈りを捧げていた。



「神像とステンドグラスは、やたら綺麗ですね」

「ええ。神は天から、私たちを見守ってくださっています。毎日のお掃除と手入れは欠かせません」



 それで綺麗なのか……? それにしては、足元の色だけが異様に剥げているけど……。


 神像の横を通り、奥へ通じる小扉を開ける。

 先は廊下になっていて、一気に生活感が出た。どうやらここから先が、孤児院のような施設になっているっぽいな。


 廊下を進むと、奥の方から香ばしく甘い匂いが漂ってきた。

 これは……クッキーか?



「いい匂いですね」

「三日後の建国祭用に準備をしていまして、私たちの露店ではクッキーを売るんです。少しでも、孤児院の運営の足しにできればと」



 キッチンらしいところを覗くと、二人のシスターさんたちが試作品を作っているみたいだった。

 さっきシスターから漂った匂い、これかなと思ったけど……違う。もっと変な甘さを感じた。なんだったんだ……?


 更に奥へ進み、『応接室』と書かれた部屋に通された。

 机と椅子、暖炉、子供たちが作った木細工が飾られていて、質素な感じだった。見たところ、運営に苦労しているみたいだな。

 木の人形を手に、扉の前に立っていたシスターへ振り返る。



「ネイ以外の子や他のシスターは、建国祭の準備ですか?」

「はい。大通りに露店を出すので、結構忙しくて……私はここでお留守番です。少々お待ちください、今お茶を淹れてきます」



 シスターは頭を下げ、部屋を出ていく ネイもお手伝いで、彼女について行った。

 すると、今まで黙っていたポックルが急に動き、俺の顔面をパンチしてきた。



『おい小僧。出るぞ』

「え? なんでだよ」

『ここは好かん。吐き気がする』



 さっきから、執拗に鼻を触ってるな……そんなに匂いが気になるのか?



「辛いなら、ペンダントの中入ってろよ。俺、もう少しシスターに話を聞く。拉致事件のことも、何か知ってるかもしれないし」

『……ふん。勝手にせい』



 光の玉となり、ポックルはペンダントに入っていった。

 こいつが警戒するなんて、いつものことだからな。特に気にすることはないだろ。


 暖炉の上に飾られている木細工を見ていると、ネイとシスターが戻ってきた。

 おぼんにはお茶と、焼きたてのクッキーが乗せられている。



「お待たせしました。すみません、こんなものしか用意できず……」

「あ、いえ。お構いなく」



 むしろ勝手に押し掛けたのに、丁寧に迎えてくれるとは思ってもなかった。



「こちら、建国祭で出すクッキーです。お口に合うといいのですが……どうぞ召し上がってください」



 机の上に乗せられたクッキーは、出来立てなのかまだ少し湯気が立っていた。見るからに美味そうだ。

 おぼんを置いたネイが、何かを探すようにキョロキョロと周りを見た。



「ライゼルおにーちゃん、ぽっちゃんは?」

「ぽっちゃん? あぁ、ポックルか。少し散歩するって、出て行っちゃった。ごめんな」

「んーん、だいじょーぶ。まいごにならないかなーって、しんぱいになっただけ」



 君がそれを言うか。

 俺とシスターが、同時に苦笑いを浮かべる。子供ってこういう所があるよなぁ。


 椅子に座り、お茶の匂いを嗅ぐ。

 芳醇でふくよかな香りに、思わず顔を上げた。



「いい紅茶ですね。香りでわかる」

「私の故郷の茶葉に、ビルサオール王国原産の茶葉をブレンドしたものです」

「自分で茶葉を混ぜているんですか。凄いですね」

「趣味に毛が生えたようなものですよ」



 シスターは小さく微笑み、自身のカップに口を付ける。

 ネイも満面の笑みで、クッキーを食べていた。


 俺も唇の先に紅茶をつける。

 別に毒を疑っているつもりはないけど、クルス教官から「見知らぬ相手から出されたものは、相手が子供だろうと警戒しろ」って体に叩きこまれたからな。習慣だ。


 少し落ち着いたからか、シスターは柔和に微笑み、頭を下げた。



「申し遅れました。私、カルミアと申します。聖ベルミアーノ教会のシスターで、ネイや他の子への教育を主に担当しています」

「カルミアさんですね。俺はライゼル。改めて、よろしくお願いします」

「ライゼル様ですか。とても勇ましいお名前ですね。素敵です」



 にこりと微笑むカルミアさん。

 くっ、可愛い……その上名前まで褒められた。女性免疫が少ないから、緊張しちゃうぞ。


 ん? 騎士団の女性たち?

 リビアは姉。カノンは母。クルス教官は雌ゴリラだから、女性と言われると違うだろう。


 脳内で三人にボコられ身震いしていると、部屋の扉がノックされ、一人のシスターが入って来た。



「お客様、申し訳ありません。シスターカルミア、ちょっと」

「はい。失礼します、ライゼル様」



 カルミアさんが部屋を出て行き、部屋の前で何か話している。

 扉越しであまり聞こえないけど、建国祭について話しているみたいだ。このままじゃ間に合わないとか、なんとか。


 話を終えて戻ってきたカルミアさんの顔は、少し暗い。

 駄目だよ、俺の前でそんな顔をしたら。……助けたくなっちゃうじゃないか。



「カルミアさん。もしかして建国祭の準備が間に合わないんですか?」

「ええ……人手が足りなくて、屋台の準備がどうしても……」

「もしよろしければ、手伝いますよ」



 思わぬ申し出だったからか、目を見開いて呆けるカルミアさん。慌てた顔で、手をぶんぶん振る。



「そ、そんなっ。会ったばかりの方に、いきなりそんなことをお願いするなんて、できませんよ……!」

「安心してください。俺はゆ……ひ、人助けが趣味なんです。困っている人を見たら、放っておけないんですよ」



 危ない。また勇者って言っちゃうところだった。



「ライゼルおにーちゃん、てつだってくれるの……⁉」

「ああ。お兄ちゃんに任せとけ」



 ネイの頭を撫でると、花が咲いたような笑顔を向けてきた。

 可愛いなぁ。妹も、よくこんな表情をしていたっけ。

 昔のことを思い出してちょっとしんみりしていると、カルミアさんは心配そうな表情を浮かべた。



「本当にいいのですか? ライゼル様は、王都の人ではありませんよね。観光で訪れた方なのに……」

「気にしなくても大丈夫です。俺が手伝いたいんですよ」



 カルミアさんはどうするか悩んでいるが、ネイの笑顔を見て……小さく頷いた。



「……それでは、お願いします。明日の朝、また教会にいらしてください」

「わかりました」



 席を立ち、二人に頭を下げて教会を出る。

 振り返ると、俺が見えなくなるまで、二人で手を振ってくれていた。

 さて……まずは一人、説得しないとなぁ。

続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ