ツッコミ 81 〜復路へ〜
翌日。船長に機関室に調査させてほしいと頼んだものの、規則により機関室に立ち入れるのは港に着岸した時だけだと断られてしまった。それならその時に、と話をつけて、ボク達は束の間の船旅を楽しむ。
そしてさらに翌日。船は無事、と言っていいのかは分からないが、港へと到着した。
機関室の調査が許されたのは、船を降りる人たちの身体調査に普段より時間をかける必要があったため、機関室の設備に時間を割けることができたのが大きかった。その増やした時間で、存分に調査をしてくれて構わない。そう言ってくれた船長、そしてイベント責任者の船員を伴って、ボク達は機関室へと向う。
「やっぱりだ。港か、陸地に近づくほど変な感じが強くなっていったんだよ。この部屋、あるぜ」
ルートが強く反応を示しているということは、その先にあるものに大方の予想は付く。シュラナを先頭にして、その扉を開けた。
果たして、それはあった。色鮮やかに輝く幾つかの魔法陣に紛れるように、鮮やかな赤色をした花弁を上に載せた魔法陣が。
そっと近寄り、それに触れてみる。
「これ、機能していないと思う。何となくだけど分かる」
ルートに視線を向けると、彼も首を横に振った。
「反応が消えた。扉を開けたら」
何故だろう、と考える。
「もしかしたら、密閉されている必要があるのでは?」
カナネの推察に、ボクはハッとする。
確かに、北の大山で見つけた魔法陣は、特殊な方法でしか入ることの出来ない場所にあった。とすれば、カナネのその考えは見事に当てはまっているのではないか。
試しにと、ボクとカナネを残して扉を閉めてもらうことにした。
部屋の中は、色とりどりに輝く魔法陣のお陰で暗くはならない。その中に、また別の光が混ざったのが見えた。
再び扉が開き、ルートが駆け込んでくる。
「違和感があった! 起動しただろ?」
「した」
「ちょっと待ってくれないか、その魔法陣は一体どんなものなんだ? 危険なものなのか?」
船長の問い掛けに、ボク達はどう答えるべきか、と頭を悩ませた。
北の大山の魔法陣は、その上にあった土地の植物を巨大化させていたらしい、とまでは分かっている。果たして、この魔法陣にはどんな効果があるのか。
それに、この置かれている花弁。これはあの時見たものとは違い、そこまで劣化はしていないように思う。茎からきり離されたばかりの瑞々しさは残っていないが、それほど時間が経ったとは思えない。
「正直、分かりません。けれど、密閉しなければ起動しないのなら、危険はないと思います」
「運行に問題はない、か。このフロアの見張りを強化する手間はあるが……」
「このフロアには、やはり限られた人物しか入ることはできないのですか?」シュラナの問い。
「ここで行われるメンテナンス等は、全て船長である私の立ち会いによって行われる」
「なるほど、だからフロアの境界に見張りがいる。機関室の前ではなく」
考え込むシュラナを他所に、船長は独り言を呟きながら今後の展開を思案している。
「……しかし、今から出航を止めることは出来ないか」
そして、このまま運行を続ける判断を下したようだ。そこでカナネの待ったをかける。
「運行を続けるのなら、新たな乗客は乗せないほうが良いかもしれません」
「何故だ?」
「北の大山にもこの魔法陣があるのです。その調査団が向かっているため、ワンキタの街に戻れば、この船も彼等の調査対象となるはずですから」
「そうなれば、今度こそ出航は出来ないな。この港に留まることは?」
「騎士団への連絡は必要でしょうが、やはり、調査団が北へ向かっていることを考えると、この船も北へ運んだほうがいいかと思います」
「調査の手間は省けるな。分かった、そうしよう」
機関室から出て、船長は報告のために船を降りていった。入れ替わるように、一人の船員がやってくる。
「すみません、客室の清掃を担当したものなのですけど、頼まれていたものを一応、持ってきました」
それは、紙袋に入った何枚かの紙だった。カナネはそれを受け取ると、一枚ずつ目を通していく。
「一つ、繋がりました」
そうして、一枚の紙をボク達に差し出した。
「これらは、フロロからの手紙です」




