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ツッコミ 78 〜不可解な消失〜

 手の空いていた船員を通じて、イベント責任者である船員の女性を呼び出した。リティの部屋のバルコニーに置かれていたケースが、フロロが使用するものかどうかを確認するためだ。


「いえ、これはイベント用のものではないはずです。私も使用するケースは事前に見せられていたのですが、ケースは一つきりのはずですから」

「じゃあ、これは完全に不審物だと思っていいんだね」


 問い掛けると、戸惑いからか泳ぐ視線を向けられる。


「ええ、おそらく」

「力任せに壊すか?」


 シュラナの提案は却下して、ボクがピッキングを試みることにした。カナネが大まかに調べた所、特に仕掛けはなさそうであるが、万が一何かあった場合、モンスターである自分ならば対処が可能なのではないかとの考えからだ。


 安全のため、バルコニーには一人だけ。フロロが使用したジュラルミンケースとは、少しデザインが異なっており、シリンダー錠はしっかりと施錠されている。葉っぱを錠に押し当てて、粘土のように変化させる。形を取ったら硬化させ、ひねる。


「いえーい。開いた」


 簡単に開けられたのは、これを置いた人物の思惑に沿うものなのか。まだ何らかの仕掛けが発動する恐れがあるため、慎重にケースを開いていく。


 中に入っていたのは、一枚の紙切れだった。


 部屋の中に戻っていた人たちを呼び寄せ、その紙を提示する。それぞれが、その紙に書かれた文字を目で追っている。そこにはこう書かれていた。


『夫の生命が惜しければ、このケースに金を入れて指定された場所に置け。金額は、彼への想いを表してほしい』


 裏面には、ケースを置くべき場所が記されている。


「そんな、どうしてあの人が……」


 青褪めてへたり込むリティを、カナネが介抱する。彼女にも、この展開は予想外のものだったらしい。それはイベント責任者にとっても同じものだったようで、しきりに視線をリティへ紙へと往復させていた。


「これを誘拐だとして、犯人は貴女達が金を持っていると知っていた訳ですね。リティさん、金は用意できますか?」


 シュラナの問い掛けに、彼女は首を振る。


「いえ、そういうものは、すべて夫が管理していました。私はいま、殆ど金銭を持っていません」

「この部屋に、金庫はあります?」ボクの問い掛けに首を縦に振っているが、「もしかして、開けられない?」


 再び縦に振られる首。金庫の鍵は、彼女では外せないらしい。部屋に戻って金庫を確認すると、鍵は暗証番号を揃えるダイヤル式のものだった。


「キア、開けられる?」

「解錠した経験がないから、暗証番号の当たりの感覚が分からないと思う。ちょっと難しいかな」


 これでは身代金の額は相当に少ないものとなるだろう。果たして、それで犯人の気が済むのかどうか。


「どうしましょう、いったいどうしたら」

「ひとまず、どうやってケースが置かれたのかを調べたほうがいいかもしれません。犯人を見つけ出せれば、身代金は必要ありませんから。手の空いている船員に、リティさんから詳しく話を聞くようにしてもらってください」


 カナネの勧めに従って、イベント責任者である船員も動き出す。ちょうど伝言を頼んだ船員の手が空いていたため、夫が消えてから今までの部屋の様子を聞いてもらうように頼んでおく。


 そうして、ボク達は部屋を出る。バルコニーにケースが置かれていたということは、フロロと同じように、上の階から降ろした可能性もある。それに、下の階で何かが船外で落下していくのを見た、という証言も気にかかる。


「おっと、こんな所にいたのか」


 部屋を出ると、この部屋に用があったらしい船長と遭遇した。


「あぁ、船長。人が攫われた可能性があるのです。身代金が要求されて」

「攫われた? いつ?」

「いつかは、判りません。けれど、いま、身代金を要求するメモが見つかりました」

「……おかしいな。乗客の無事は、この部屋の御婦人以外は確認されている。リティさん、だったかな? 彼女の無事さえ確認できれば、この船からいなくなったものは存在しないんだ」

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