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ツッコミ 72 〜エンカウント〜

 食事が終わり、ボクは一人で部屋に戻ろうと通路を歩いていた。


 鍵を預かっているシュラナは先に戻ったし、カナネはルートの様子を見に行くと言っていた。三人別々に行動をするのは、フロロを見つけよう、という魂胆もあってのことだ。そのため、少し寄り道して三階を歩いている。階段は等間隔で設置されているため、どちらかと言うと回り道、なのかもしれない。


 ランプの暖かな光が照らす通路を、お腹をさすりながらのんびりと歩いていく。結局、揚げ物ばかりを食べてしまったけれど、この満足感があれば後悔など直ぐに消し飛ばしてくれるだろう。


 バルコニーにいたティアマトは、部屋に戻っているだろうか。料理の持ち出しは行われていなかったので、一階にある売店で何かを買っていこうか。ランプを眺めながら、ぼんやりとそんなことを考える。


「こんばんは」

「あ、こんばんは」


 前方からやって来た赤い服を着た女性に声を掛けられて、慌てて視線を向ける。上下ともに真っ赤な服がとても目立っていた。ジャケットにスカート。フォーマルだ。足元の真っ赤なハイヒールが目を引いた。覗く素肌は……。


 その光景に目を見開いたボクに向かって、彼女は刀を振り上げた。


 背後に跳んで距離を取れたのは、その素肌から嫌な予感がした所為だろうか。いや、肌というものではない。あれは、もっと見覚えのあるもの。それも、ごく最近まで、自身がそうだったもの。


「蔓を使って足みたいにするとか、なんなの? 貴女同類さん?」

「ふふっ、察しがよくて何よりですわ。(わたくし)の計画を潰してくださった方が、間抜けではあんまりですもの」


 よく見れば、彼女が持つ刀だって見覚えのあるものだ。胸元に手を突っ込んで葉っぱを毟り取ると、自分も同じように刀を作り出す。


「ふぅん。同じ事ができるのですわね。でも、どうもおかしな存在になってしまっていますわ。それは何故か、私、とても興味があります」

「ボクとしても興味があるね。その服、花弁でしょ? あのでっかい花がそんなスタイリッシュになるなんて、不思議でならないんだけど」

「あら、花はいずれ散るのだから、こうなるのも当たり前ですのに。おかしなことを仰るのね」

「植物の観点から言われても、ね」

「……そう。どこでそうなったのかは分かりませんが、貴女の意識はそちら側なのですね」


 会話は通じる。もう少し話を引き延ばせれば、なにか有益な情報が得られるだろうか。


「そちら側がどちら側なのか分からないけど、同じ船に乗っているんだし、感性は似てない?」

「あら、船旅がお好きなの? 私は様々な場所を旅したのですが、海より空のほうが好きですわね」

「飛行船、なんてあるの?」

「この星にはありませんわね。ふふっ、自分のことを何も知らないのですわね。だから、聞き出したいのかしら。でも、今日はここまでにしましょうか」


 その言葉の直後、彼女は着ていたジャケットを開いた。


「――嘘だろっ!?」


 覗いたのは、見たこともない近代的な砲塔だった。砲身ではない、砲塔だ。そこから伸びる無数な砲身が、全てこちらを向いている。


「ホーミングレーザー、とでも言えばいいかしら」


 それが、一斉に放たれる。彼女の言葉が確かならば、避けるなんてのは全く意味のない行為だ。素早く刀を盾へと変化させて、全てを受け切ろうと腰を落とす。勿論、背後へとステップを踏み、壁を背に背負いながらだ。レーザーが背後に回り込んでしまったら、洒落にならない。


 無数の軽い衝撃が腕に伝わる。盾の隅では、通路の奥へと走り去る後ろ姿が見えていた。まだ追える。レーザーの雨を受け切ると、ボクはすぐに盾を刀に戻して後を追った。


「待てっ!」


 船尾のバルコニーで追いつく。


「ふふっ。追ってきてくれなかったら、どうしようかと思いましたわ。御覧なさい、私の大事な大事なこの方を」


 そこに居たのは、暗い海から伸びる巨大な柱――、いや、違う。それを更に見上げた先、遥か頭上に、ボク達を見下ろす巨大な瞳が見えた。


「……巨人?」

「これを知らないというのが、私達の決定的な違いですわ。次にお会いすることもあれば、思い出してくれていたらいいのですけど」


 呆気にとられたボクは、差し伸べられた巨大の手に飛び乗る彼女を、見送るしかなかった。

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