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ツッコミ 71 〜ビュッフェ〜

 神様が転生をさせるのは、自身を見ることが出来る者だったのではないか。そんな疑いが頭の中を過ったものの、カナネの解説を聞きながら大きな湾を眺めたり、船内を散策している内に深く考えることもなくなってしまった。


 今重要なことと言えば……。


「ディナーはビュッフェだって。誰が一番綺麗に盛れるか、勝負しない?」

「焼きそばとパスタとラーメンを食べたい僕に勝機はあるのか?」


 ないので、勝負はせずに普通に楽しむことにした。


 レストランといった趣の室内は、豪華なシャンデリアがキラキラと輝いている。右側が一面窓となっており、その向こう側にはテラスのように、テーブルが並べられている。左側には厨房があるようで、ステーキを焼いている姿を観ることが出来た。


 焼かれる部位が変わるからか、肉自体も変わったのか。調理するシェフも交代されたようで、綺麗なサシが入った肉が鉄板に載せられていく。今なら焼きたてが食べられそうだ。


「カナネは何を食べる?」

「サラダと、ステーキは絶対に食べたいですね。パンにしようかご飯にしようか。あ、カレーがあるならご飯ですかね」

「でも、ビーフシチューもあるからパンという選択肢も捨てがたいよね」

「キア様は揚げ物祭りにしないんですか?」

「折角のビュッフェだもの。揚げ物のみならず、色んなものを食べたいの」

「それなら、おすすめはラーメンだよ。タレとスープを自分で選べるようになっているみたいだから、いつまでも楽しめると思う」


 折角の船旅をラーメンだけで終わらせる気なのだろうか。そう呆れながらも、各々好きなものを皿に盛ってテーブルへ向かった。


「で、一通り船内を回ってみたけど、特に怪しいところはなかったよね」


 ビュッフェが始まっているということもあり、今はもう、どっぷりと日も沈んでいる。テラスに出れば、綺麗な星明かりに照らされるだろう。


「ルートも真面目に仕事をしていたようだけど、あいつも何も怪しいものを見なかったらしいね」


 貨物が置かれた場所も探索してみたのだが、そこでネズミを咥えたルートと遭遇したのだ。見つけたのは本物のネズミだけであったらしく、猫を追いかけるような怪しい存在は、まだ目撃していなかったらしかった。


「そもそも、ワンキタの町で降りている可能性もありますからね。何も見つからなかった、という結果なら、それでいいと思います」

「それもそっか。でも、それでいいと放り出すのもなんか気が悪いし、探すこと自体は続けていきたいよね」

「なら、あのフロロ、だっけ? 彼を探しながら探索したらどうかな。まだ見つかっていないようだし」

「あぁ、あのイベントですね。お手洗いに行ったついでに、少し船長と話してきたのですけど、ワンキタの町に戻るまでに解決ができたら、なにか賞品があるそうなんです」

「サプライズ企画だったの?」

「いえ、乗船チケットを買っていた人たちには、告知されていたものです」


 詳しく話を聞いてみると、この船に乗り込んだ大金持ちが持ち込んだ宝石が盗まれた。犯人は怪盗カイートゥと名乗った人物であり、彼を捕まえ、宝石を取り戻したものには、大金持ちからお礼が贈られる。そんな設定らしい。


「何処かに潜んでもいるのかな?」

「もしくは、変装して紛れ込んでいるか」

「参戦するなら、後で現場を見てみませんか? なにかヒントがあるかもしれませんし」

「ボク達の部屋も、ある意味現場なんだけどね」


 後の予定が決まったので、ディナーはノンアルコールを楽しむことにした。


「あれ、このステーキなんだか硬くないです? 焼きすぎでしょうか」

「えー、こんな豪華な食事でそんなこと……。本当だ」


 一瞬、嫌な想像が頭を過ぎり、ボクとカナネはすぐさま厨房の方へ目を向ける。……ステーキを焼いていたシェフは、もう其処には居なかった。

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