表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/74

ツッコミ 66 〜サプライズは計画的に〜

「きゃぁぁぁっ!?」


 そんな悲鳴を聞いた時、ボクは不謹慎にも、ドキドキと、ワクワクとした感情が胸を占めたのを理解した。


 客室に向かう廊下を歩いていた時のことだ。通路はなかなか広く、車一台くらいなら走れるのではないかと思うほど。赤い絨毯が敷き詰められ、ルートがご機嫌で歩いている。


 壁に取り付けられたランプの光は、淡く優しい。しかし適度な光量のため、しっとりと、モダンな光景が目に広がる。例えるなら、かまくらの中でランタンをつけた時のような感覚だろうか。


 とても居心地の良い廊下だと、ボクは感じた。


 そんな廊下を、ボク達は駆け抜ける。既に声が聞こえた部屋には、船員であろう人が数人駆け付けていた。中を覗き込んで、驚きの表情を浮かべている。


「どうしたんだっ!?」


 案内をしてくれていた船員が声を掛ける。階級が上の立場だったらしい。


「叫び声を聞いて見に来たのですが、その、男が一人倒れているんです」

「なにっ!?」


 早速、ボク達の仕事が始まったのだろうか。それぞれと目を合わせて頷き合うと、揃って開け放たれた扉から中を覗いた。


 ……確かに、男が一人倒れている。その胸にはナイフが突き刺さり、真っ赤な血が滲んでいる。床に敷き詰められた絨毯には、あまり血は流れ出していないように思えるが、倒れた男の直ぐ近く、左脇腹付近に、何らかの文字が見えた。


「なんか書いてあるけど、読めない」

「あれは、『あい』って書いてあるんですよ。ダイイングメッセージですかね?」

「ダイニング?」


 読んでくれたカナネに、シュラナが定番の聞き間違いをしてくれた。


「死の間際に、誰かに伝えたいメッセージだよ。例えば、犯人の名前を残しておく、とか」

「じゃあ、『あい』って奴が犯人なのか?」


 現場をうろつくルートが問い掛ける。


「因みに、発見者の方は、どうしてこの部屋に?」

「此処は、私と夫の部屋なんです。少し用事があって私だけ出ていて、戻ったらこんなことに……」

「貴女のお名前は?」

「リティです」


 どうやら、『あい』は関係ないらしい。


「あぁ、あなた。一体どうしてこんなことに」


 崩れ落ちそうな彼女の体を、船員が支えた。


「……そもそも、こいつ死んでんのか?」


 ……ルートの問い掛けに、誰もそれを確認していなかったことに気が付いた。つかつかと、カナネが近付いて行く。そして、首に指を這わせた。


「……めっちゃ生きている」


 いつしか、ボク達は倒れた男を取り囲むようにして立っていた。


「……ちょっとした、サプライズだったのです。『あいしている』と書こうとしていたら、思ったよりも早く、妻が戻ってきてしまって」

「新婚旅行で何してんのよあんたはっ!?」


 懐かしの、成田離婚を思い出す。キア、心の俳句。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ