ツッコミ 65 〜初めての巨大船〜
出航した巨大船の中で、ボク達は船長室に招かれていた。壁に張られた大きな地図は、海図だろうか。デスクには羅針盤のようなものが魔法陣の上に置かれていて、魔法をふんだんに使われた船だというのが窺えた。
「勇者様が参加しているチームだと聞きまして、少々お願いをしたいと思いましてな」
髭の似合う船長は、ボク達を応接用のソファーに座らせた。ティアマトも入れるくらい、広々とした部屋だった。
「猫ちゃんの失踪と、なにか関係があるのですか?」
「君が責任者かね? ……そう。その猫の失踪に、不可解なことがあるのだが、それを確かめる間もなく出航を迎えてしまったのだ」
その不可解な部分とは、猫が居なくなったときの目撃情報が関係している。
その瞬間を目撃した船員によると、何かに追われていた様子だったというのだ。しかし付近には何かがいるわけでもなく、けれど、猫の様子を見れば、何かを警戒し、恐れているようであったという。
「ネズミ捕り用の猫を借りる、というのは方便のようなもので、君たちには事の真相を探ってもらいたい」
「それですと、どの程度の危険があるかも解りかねますね。依頼料は出来高払いになると思います」
「であるな。猫を借りるという依頼での報酬は払う。それを前金として、頼まれてはくれないものか」
カナネはボク達に視線を向けるが、正直、それがボク達にとって損になるのかどうかは分からない。けれど、その前に一つ、聞いておきたいことがある。
「その前に、ですけど」
「なんでしょうか、樹神様」
「ボク達は、二週間――、はもう過ぎているんですけど、出来れば一週間以内にワンキタの町へ戻りたいんです。それは可能なのですか?」
「ええ。これから向かうのは、大陸西側の中央部の港です。この船ならば、一週間もあれば往復可能です」
それなら安心だ。ボクはカナネに向かって頷いた。シュラナとルートも、特に問題はないようだ。
「捕まえたネズミは、食っていいのか?」
「それは、ちゃんとした『ネズミ』に限る」
ルートの質問に、彼は笑いながら答えた。つまり怪しい人物がいても手荒な真似は控えてくれ、と言いたいのだろう。
「私たちの答えは、イエスと言うことになりました。部屋などは与えてもらえるのでしょうか」
「空いている客室を使ってもらって構わない。四人部屋で良いかな?」
「はい。固まっていたほうが作戦も練りやすいですし」
肩を落としたシュラナを励ますように、ポンポンと筋肉質の腿を叩く。何を勘違いしたのか、ルートがそこに乗った。
「食事も乗客用の食堂を利用してもらいたい。依頼料に含めておこう。船員を一人、案内に付けるので、捜索も合わせて回ってみるといい」
「ありがとうございます」
そうして、会談は終了した。部屋の外には既に船員が待機しており、早速ボク達は船の中を探検することとなった。
「ねぇねぇ、船員さん。ナイフが頭目掛けて飛んでくる部屋ってないの?」
「え!? い、いや、そんな危ない部屋はないですよ」
「えー。じゃあ、落とし穴がある部屋とか」
「そんなのがあったら、運航は出来ません」
どうやら、ボクが思っている船旅にはならないらしい。




