表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/74

ツッコミ 63 〜迷い猫を探せ〜

 南東大陸の一番北にある町。名前は分かりやすく、ワンキタである。港があり、荷物を保管する倉庫街があり、そこを抜ければ住宅街。


 この町自体は観光地にはなっておらず、山に向かう人たちの寄港地、と言ったところか。それなりに人出が多い町ではあるが、住宅の数はその人出に比例してはいない。


 酒場のみならず、食事ができる場所は多くあり、昼近くに到着する船があれば、そのどれもが満席になるほどだった。


 滞在して数日。もはや、この町での目にしていないものはないのではないか、と言ったぐらい、ボク達は散策を堪能していた。


「レストラン巡りっていうのも、面白かったね」

「ですねー。シュラナさんとルートさん、海鮮を食べに行ったんでしたっけ」

「そう。昨日も海鮮だったのに、好きだよねぇ」


 そういう僕達は、ステーキを食べてきたばかりだった。明日には此処から南西にある湾の方へ向かう予定だったので、最後にガツンと行きたかったのだ。


 夜は早めに寝ることになっていたから、軽くラーメンを食べて終わり。なので、好きなものを食べられる最後のチャンスだった。


「そう言えば、ですけど。ティアマトは食事って摂らないんでしょうか」

「あぁ、あれは光さえ与えていればいいみたい。今ごろ、宿のベランダで日光浴をしているんじゃないかな」

「……不気味ですね」


 それは言わないお約束。


 でも、あれと別行動をしているおかげで、樹神様だと騒がれることがないのが嬉しいところだ。ネームバリューが欲しいときには装着すればいいのだし、それ以外は、この爽快感を味わいたい。ベッドに横になることだってできるし、風呂にだって入られる。罠にかかった結果なのだけど、これが怪我の功名と言うものだろうか。


「でも、そのおかげで純粋に人と仲良くなれる気がするよ。酒場のマスターとも仲良くなれたし」


 イーチの村の酒場の二人は、元気にしているだろうか。あれから、なかなか行く機会に恵まれなかったけれど、一度村長にも会いに行ったほうがいいだろうし、いずれ向かはなくてはならないだろう。


 まぁ、それも全て、調査隊が到着してから、だろう。


「おや、キアちゃんとカナネちゃんじゃないか」


 噂をすれば、だろうか。商店街を通り抜けていた時、八百屋で買い物していた人物が振り返り、声をかけてきた。髭の似合うこの人が、仲良くなった酒場のマスターだ。


「こんにちは、マスター。不在だったから、別の店で食べちゃったよ」

「はははっ、昼はもともと営業していないよ。それより、ちょうど良かったかな。今ごろギルドの方へ依頼がいったと思うんだけど、とても実入りのいい仕事ができたそうだよ」

「実入りのいい仕事だなんて、怪しすぎですね」

「流石カナネちゃん。慎重派だねぇ。でも、今回ばかりは大丈夫。貨物船からの依頼だから」

「へぇ、荷運びの依頼とか?」


 それなら簡単そうだ、と思って訊いてみたのだけど、どうやらその手の仕事とは違ったらしい。


「いや、そうじゃない。ネズミ捕り用の猫が、一匹いなくなったそうだ。出航まであまり時間がないから、急いで捜索したいらしい。だから、賞金もなかなか、ってわけだ」


 なるほど、それなら多くの人の手も借りたいだろうし、そのための多額の賞金、という意味もあるのだろう。


「カナネ、どうする?」

「まぁ、デメリットもないですし、やってもいいかもしれませんね。とりあえず、ギルドに行って、その依頼を見てみましょう。どんな猫か、特徴が知りたいですし」


 そうして、マスターに別れを告げて、ボク達は冒険者ギルドへと足を運んだ。依頼が多数貼り付けられている掲示板には、なかなかの人が集まっている。


 背の低いボクは、それをものともせず、縫うように飛び込んでいく。猫の依頼は、なかなか大きな紙で張られていた。


「三毛猫、か。ルートよりも毛短いかな」


 ルートは毛足が長く、性格ともかく結構ゴージャスな見た目をしている。人間で言えば美人さんなのだろうけど、なぜあんなにも口が悪くなってしまったのか。


「キア様、見えましたか」カナネが追い付いた。

「うん。好物は干物らしいし、一つ買っておいたほうがいいかも」

「必要経費、ですね。他に情報は……。なさそうですね。てことは、誰かに連れて行かれた可能性はなさそうです」

「そうなの?」

「はい。可能性があれば、それについても触れられるはずなので。恐らく、逃げ出す瞬間は目撃したんじゃないでしょうか」


 じゃあ、気楽に――、という言い方はちょっと不謹慎だろうけれど、ただの猫探しとして動けばいい訳だ。


「じゃあ、ルートが活躍するかな? 猫の溜まり場とか詳しいかも」

「ですね。とりあえず、合流しましょうか」


 この猫探しが思いもよらぬ展開を見せることに、ボク達はまだ気が付いていなかった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ