ツッコミ 60 〜一つ目の秘宝〜
光の粒子となって消えていく巨大なミミズ。その一部の粒子は、一つに集まって何らかの形を取ろうとしていた。
それがふわふわと漂って、ボクの手元へと舞い降りる。みんなも気になったようで、コロッケから落ちないように慎重になりながら、手元にある物を見ようと駆け寄ってきた。
「コンパス、かな?」
手元にあるそれを見て、ボクはそう思った。大きさは手のひらで握られるギリギリ。上下左右に方向を示すアルファベットが記されていたため、そう感じられたのだ。
ただ、針の下の盤面は、液晶のように文字が流れている。町中でよく見る、文字が流れる看板のようである。先ほどから繰り返されている文字を、声に出して読んでみた。
「……読めない。カナネ、パス」
「はーい。『第一の試練、攻略お疲れ様でした。これを頼りに、秘宝を集めましょう』。……ですって」
「そこはちゃんと教えてくれるんだね。これで、あの滝の裏の洞窟の先に行けるのかな?」
「戻って確かめるしかないな。一先ず、奥へ進んでみよう」
シュラナが歩き出したのに続いて、ボク達もコロッケを辿って奥へと進む。
「そのコンパスは、カナネに任せるね」
「分かりました。責任持ってお預かりします」
「それより、なんか変じゃないか?」
後ろにいたルートが、何やら心配そうに鳴いている。確かに、若干の違和感は、ボクも感じていたところだ。
「水面が、揺れている?」
先頭を歩いていたシュラナが足を止める。合わせてボク達も足を止める。
「ティアマトッ!」
判断に迷う一瞬が命運を分けるというけれど、この時の判断が正解だったかは分からない。けれど、ボクはティアマトに命じて蔓を操り、全員の身体を纏めて固定した。
直後、爆発したように水面が盛り上がり、逃げ場を求めて洞窟の奥へと流れ込んだ。呑み込まれたボク達は、それに委ねるしかない。不思議と呼吸は出来るし、声だって上げられる。
「またこれか!」
「シュラナさん、あまり暴れないでください」
「あ、ごめん」
「いや、暴れているのはルートだからね?」
蔓の中でモゾモゾと動き回るルートに注意しつつ、気が付いた時には、ポンッという擬音が似合いそうなくらい、何かに吐き出されるように日の明かりの下に出た。
そこは――、湖に面した村にある、海水を注ぎ込んだ木の傍だった。
「お日様だーっ!」
ウキウキとした様子で蔓の隙間が這い出るルートをそのままに、ボクは蔓を解いて立ち上がる。ティアマトも元気そうだ。
「少し休む?」
ボクの提案に、二人は首を振った。
「いや、休むのは馬車でも出来るからね。早く滝まで戻ったほうが、騎士の負担も減るんじゃないかな」
「ですね。それに、休めば馬の世話代がかさみます」
馬たちもきっと、早く動きたいと望んでいるのだろう。夜になれば動けなくなってしまうだろうし、まだ太陽が空にあるタイミングがベスト。そう判断して、早速ルートを探しがてら、場所の下へと戻っていった。
幸い、ルートは馬達と戯れていたので、そのまま抱きかかえて準備を整え、料金も払って出発をした。騎士は湖の安全性を確かめるために、しばらくは調査を進めるそうだ。
何度目かの道を、また一日かけて移動する。辿り着いた滝の周囲は閑散としていて、騎士がしっかりと役目を果たしていたことが窺える。
川辺りに上げられていた船を川に下ろし、騎士に見守られながら、開いた滝の裏に続いている洞窟へと進んでいく。
コンパスは、確かにこの先を示しているようであり、カナネの時計も正常な動きを見せている。
しばらく進むと、神々しい光と共に、何かが宙に浮いているのが見えた。
船を寄せ、代表してボクが手を伸ばす。光りに包まれ、浮いていたそれは――。
「これ、なんだと思う?」
「いや、まぁ、聞いていた通り、石板、なのか?」
ボクの問い掛けに、シュラナはどこか曖昧な回答をする。確かに、石板と言うにはフォルムが謎だった。
「磨けば、鏡にも使えるかもしれません」
確かに、カナネの言う通りにも見える。縁が盛り上がっていることが、そのイメージに拍車をかけるのだろうか。
「美味しそう」
「それな!」
最後に回ってきたルートの言葉に、ボクは同意を示した。円を八等分にしたようなフォルム。縁があり、薄い三角形を象るそれは――。
「なんかさ、ピザみたいじゃない?」
「あー、そう言えば、見えるような、見えないような」
「でも、言われてしまうとそうとしか見えなくなってしまいます」
「食いたくなってきたなー。俺、チーズたっぷりのやつが食いたい!」
きっと、すべて集めるとピザのようになるのでは? そんな感想とともに、一つ目の秘宝を入手した僕たちである。それを祝して食べる料理は、やはりピザしかないだろう。
「ところで、移動に疲れてしまって、達成感が味わえる余裕がないんだけど」
それが総意なので、ピザを味わうと同時に、達成感も味わえることを願っている。




